J&J メディカルカンパニー、香川県における脳神経外科・循環器内科の診療科間連携「脳心連携」の先進事例を紹介

左から:香川県立中央病院院長の髙口浩一先生、香川県立中央病院脳神経外科診療科長の市川智継先生、香川県立中央病院循環器内科部長の大河啓介先生

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、メディアセミナー「脳神経外科・循環器内科の診療科間連携『脳心連携』の挑戦 ~香川県における先進事例を紹介~」を、3月3日に開催した。

「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(以下、「脳卒中・循環器病対策基本法」)が2019年に施行され、「予防」「急性期治療」「再発予防(急性期治療後)」などの各フェーズにおけるさまざまな取り組みが全国各地で行われている。脳卒中の再発予防においては、香川県立中央病院が課題の一つである再発リスク低減のための原疾患マネジメントという観点で、スムーズにその治療が提供できるよう、脳卒中チームで治療した患者さんを同病院の循環器内科と共に診療するという、「脳心連携」に継続的に取り組んでいる。脳卒中と心臓病患者さんの全人的なケアに対する集学的アプローチを行う医療施設は国内ではまだ少なく、先進的な取り組みとなっている。また、香川県は2022年にドクターヘリを導入し、高齢社会の医療体制再構築に邁進している。セミナーでは、日本脳卒中協会 理事長 峰松一夫先生が、脳卒中・循環器病対策基本法施行以降の診療科間連携の現状や課題、その重要性に関して講演を行った。さらに、日本における脳卒中・循環器のシームレス医療の好事例になることが期待されている事例などについて、香川県立中央病院 院長 髙口浩一先生、同病院 脳神経外科 診療科長 市川智継先生、同病院 循環器内科 部長 大河啓介先生が紹介した。

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー バイオセンス ウェブスター事業部 大多和裕志バイスプレジデント

「当社では脳血管障害に関する『CERENOVUS』、不整脈治療に関する『Biosense webster』で製品を提供。医療従事者向けトレーニング施設『ジョンソン・エンド・ジョンソン インスティテュート』で製品の安全適正使用を促す環境を提供している。川崎で2014年設立、延べ15万人の医師が利用した。脳血管疾患・心疾患の循環器病は三大疾病のうちがんに次ぐ第2位で、要介護になる原因も20.6%となる日本の医療の重大課題となっている。そこで『脳心連携ハイブリッドケア プロジェクト』を展開。脳卒中、不整脈の治療で連携した医療体制を強化する医療者を支援している。医療従事者に信頼されるパートナーとして、革新的な製品・ソリューションを提供し、日本の医療の未来を形作り、質の向上に貢献していく」と、ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー バイオセンス ウェブスター事業部 大多和裕志バイスプレジデントが挨拶した。

オンラインで登壇した日本脳卒中協会理事長の峰松一夫先生

次に、脳卒中再発予防における脳心連携の重要性について、日本脳卒中協会理事長の峰松一夫先生がオンラインで紹介した。「日本脳卒中協会は、脳卒中の正しい知識の普及の啓発活動と患者の自立と社会復帰の促進を目的に1997年に設立。2012年公益社団法人に認定された。日本脳卒中協会では、一般市民向けの啓発活動、かかりつけ医の教育活動、調査研究、脳卒中・循環器病対策基本法法制化強化運動を行っている」と、日本脳卒中協会の概要について説明する。「循環器病対策基本法法制化強化運動の成果によって、2018年脳卒中・循環器病対策基本法が成立された」とのこと。「平均寿命と健康寿命の差は年々縮まる傾向にある。しかし、それを妨げる大きな原因が循環器病である。4大疾患である、心不全、急性心筋梗塞、大動脈瘤解離、不整脈。さらに80%は社会復帰困難、認知症の原因となる。医療費は約6兆円にものぼっている」と説く。「脳卒中と心血管病の予防法・治療法には共通点が多く、超高齢化社会の進行とともに今後も増加する。そこで、2020年循環器病対策基本計画をつくり、2040年までに3年以上の健康寿命の延伸、死亡率の減少をめざす」と語る。「生活習慣、境界領域期、危険因子(生活習慣病)など重大な疾病になる前の段階での予防に取り組む。また、疾病や要介護状態など罹患した場合は、再発の防止、要介護状態に陥らないための対策に取り組む」と解説。「脳卒中・循環器疾患の原因のほとんどは動脈硬化にある。脳卒中を起こさないためには動脈硬化を起こさない生活習慣が大切となる。不整脈が原因の脳梗塞は心房細動が原因。日本脳卒中協会では3月9日から心房細動週間として、不整脈の早期発見を呼びかけている」と、啓発に努めているという。「脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画では、各医療施設、かかりつけ医、ケアマネジャー、介護施設、自宅など脳卒中における循環型の医療・介護体制の整備をめざす」と述べていた。

香川県立中央病院院長の髙口浩一先生

香川県の脳卒中・循環器医療の全体像、および香川県立中央病院の「脳心連携」の意義と方針について、香川県立中央病院院長の髙口浩一先生が講演を行った。「香川県の施設基本理念には、循環器病の発症・重症化を予防し、県民が健やかで自分らしく過ごせる香川づくりの実現がある。香川県の脳卒中・循環器医療の全体像として、死亡率は全国平均並。しかし、糖尿病死亡率は全国2位で、生活習慣病率が高い。高齢化が先行して、医療過疎地も多い」と話す。「香川県の脳卒中医療体制の現状は、日本脳卒中協会認定の24時間365日脳卒中患者を受け入れ可能な施設一次脳卒中センター(PSC)が12施設。脳神経外科医、脳卒中専門医、コメディカルスタッフも充実、急性期医療体制が整っている。ストロークバイパスで適切な病院に搬送して、救急車の段階で急性期医療の病院へ搬送。2022年からドクターヘリを導入し、医療過疎地からの搬送時間の短縮にも努めている」と説明する。「脳卒中医療体制の問題点は病院救護前のスピードアップで、発症時のFAST(顔、腕、言葉、時間)を啓発する。もう一つの問題は脳卒中の再発。脳梗塞は1年で10%、5年で35%、10年で50%の再発率となっている。脳梗塞が再発すると、新たな後遺症が加わり、さらに重症化するリスクがある」と再発予防が重要だと語る。「生活習慣病の予防、血液凝固と閉塞を防ぐ内服治療、心房細動に対するアブレーション、左心耳閉鎖術などの高度医療が必要となる」と述べていた。

「香川県立中央病院は2019年に一次脳卒中センター認定した。2022年には一次脳卒中センターコア施設を認定した」と、再発予防の前倒しによる医療品質の向上を目指しているという。「目の前の脳卒中の治療をしたら終わりではない。急性期医療機関だからできることを最大限に行う。脳心連携チーム医療として、ブレインハートチームがある。脳卒中再発予防のために脳神経外科と循環器内科が密に連携して取り組む必要がある」とのこと。「心原性脳塞栓症は、心房細動が脳梗塞の直接原因となっている。循環器内科のカテーテル治療で再発予防できる。すばやく、もれなく、継ぎ目なく、全人的に治療を行うのが脳心連携チームのミッションといえる」と話していた。

香川県立中央病院脳神経外科診療科長の市川智継先生

脳卒中チームによる脳卒中急性期医療の進化について、香川県立中央病院脳神経外科診療科長の市川智継先生が紹介した。「脳梗塞の原因として、ラクナ梗塞は、比較的小さな動脈が動脈硬化により閉塞したもの。アデローム血栓症脳梗塞は、主幹動脈の動脈硬化で、内腔が狭まり、閉塞する。心原性脳塞栓症は、左心房内に発生した血栓が剥離して血流にのり、主幹動脈が閉塞する」と説明する。「時間がたつほど脳細胞が死滅するので、緊急の治療が必要」と、脳梗塞の急性期治療について解説する。「血栓溶解療法(rt-PA)がすべての脳梗塞の適応対象になる」とのこと。「血栓溶解療法の弱点としては、制限時間が短く、太い動脈には効果が低い。重症ほど救えないというジレンマがある」と語る。「血栓回収という新潮流もあり、血栓溶解療法の弱点をふまえ、血栓そのものを取り除く。吸引型とステント型があり、アテローム血栓症脳梗塞、心原性脳塞栓症に有効とされている」と力説する。「血栓回収療法によって、脳梗塞再発予防治療は格段に進歩を遂げたが、問題なのはどこでもできる治療ではない」と述べる。「脳梗塞を発症して脳神経外科に入院。脳梗塞の病型によって治療を行う。心原性脳塞栓症、あるいはその可能性がある場合は循環器内科へ紹介。心疾患の精査と加療をする」と、心原性脳塞栓症の再発予防の脳心連携システムについて説明する。「56歳男性が心原性脳塞栓症、術後ただちに循環器科へ紹介。心房細動の精査。抗凝固薬の内服療法を開始した。3ヵ月後、アブレーション施行を行った」と、脳心連携の成功事例も紹介した。

香川県立中央病院循環器内科部長の大河啓介先生

脳卒中ケアにおける循環器内科の役割と脳心連携の取り組み成果について、香川県立中央病院循環器内科部長の大河啓介先生が説明した。「脳卒中予防の循環器内科・不整脈領域の役割として、心房細動の管理には、薬物治療やカテーテルアブレーション、経皮的左心耳閉鎖術を行う。塞栓源不明脳梗塞の原因検索には、植え込み型心電計を用いる」とのこと。「心房細動は心房という心臓の中の上部の部屋が小刻みに震えて、下の心室に不規則な電気が流れる。ときに強くときに弱く発動してリズムが乱れた状態になる。心房細動の予後は、死亡1.5倍、脳梗塞2.3倍、心不全5倍、腎不全1.6倍、認知症1.4倍と合併症のリスクが高い。特に高齢者男性に多く、60代から急速に増えている。女性も高齢化のために70代から増えている。2030年には心房細動患者は100万人と想定され、発症する前の『隠れ心房細動』を含めるとその2倍以上になる」と話す。「カテーテルアブレーションとは心房細動の部分を熱で変化させる。つまり焼灼(しょうやく)して治す方法。香川県立中央病院では2022年に474件、全国でカテーテルアブレーションを行った667の施設でトップ50の中の25位だった」という。「脳梗塞には塞栓源不明のものもあり、それは植え込み型心電計で心電図を計る。脳心連携の症例は2021年7例から2022年には41例と飛躍した」と語っていた。

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー=https://www.jnj.co.jp/jjmkk


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