- Health&Medical2025/12/16 18:45
年末年始に感じる“胃疲れ”に要注意、胃が悲鳴をあげる前の“セルフチェック&ケア術”と「胃疲れ解消レシピ」を紹介

年末年始は、ごちそう・お酒・不規則な生活、忙しさによるストレスなどで、「なんとなく胃が重い」「食べたいのに入らない」・・・そんな“胃の疲れ”を感じる人が急増する。しかし、その不調は、実は単なる食べすぎではない可能性もあるという。そこで今回、「胃疲れ」によるリスクとその対策や、お疲れ胃を守るための“セルフチェック&ケア術”を、消化器内科医で川西市立総合医療センター総長の三輪洋人先生に聞いた。また、管理栄養士・フードコーディネーターの渥美まゆ美氏が考案した、年末年始に向けた「胃疲れ解消レシピ」を紹介する。

忘年会にクリスマス、そしてお正月。年末年始は、おいしいものを食べたり飲んだりする機会が増える季節。しかしこの時期、“なんとなく胃が重い”“食欲が出ない”と感じる人も多いのではないだろうか。それは、いわゆる“胃疲れ”かもしれないとのこと。ヒューマン・データ・ラボラトリが実施した「胃の不調に関する調査」でも、年末年始は、胃の不調を感じやすい季節であることがわかっている。

「“胃疲れ”とは、胃の働きが一時的に低下し、食べたものをうまく消化できなくなった状態を指す。主な症状は、胃もたれ、膨満感、食欲不振、吐き気など。暴飲暴食やストレス、睡眠不足などが重なることで、自律神経が乱れ、胃の動きが悪くなったり、胃酸の分泌が過剰になったり、胃の不調症状が起きてしまう。また、寒のせいで体が縮こまり、姿勢が悪くなることによって、胃の負担がかかるケースもある。放っておくと、慢性的な胃の不調につながり、気力も低下し、不安感や抑鬱気分、集中力の低下を引き起こすこともある」と、三輪先生は指摘する。
胃疲れを引き起こす主な要因として、三輪先生は、(1)暴飲暴食による胃の負担、(2)不規則な生活リズム、(3)ストレスや冷えによる自律神経の乱れ、(4)姿勢の悪さ--の4つを挙げ、「胃疲れが気になる人は、次の項目をチェックしてほしい。『朝から胃が重く、空腹にならない』、『胸やけ、げっぷがよくでる』、『食後にお腹のはりがある(膨満感)』、『すぐにお腹がいっぱいになる(満腹感)』、『胃がキリキリと痛む』、『吐き気がする』。このうち、1つ以上チェックがついたら、『胃疲れ』のリスクが高いと考えられる」と、胃疲れのセルフチェック方法を教えてくれた。

最近の調査でも、10人に1人は、慢性的な胃の不調を抱えており、仕事を休んだり、早退したりなど、「仕事に行けない」ほど深刻な状態にあることもわかっている(2025年7月「胃の不調実態調査」ヒューマン・データ・ラボラトリ調べ)。
「胃の不調を感じた時には、薬で応急処置をしたり、我慢したりすることも多いが、このような慢性的な胃の不調は、原因を知って対処しないと、繰り返し悩まされることになるため、日々の胃のケアが重要になる。一方で、胃の不調には、胃がんや胃潰瘍など死に関わる重篤な病気が潜んでいる可能性もあるため、胃の不調が続くようであれば、自己判断せず、医療機関を受診してほしい」と、胃の不調を放置したままにしないよう呼びかけた。
「胃の不調の原因となる自律神経の乱れは、残念ながら薬などではコントロールできない。十分な睡眠時間を取り、運動をして、食事に気を配ることが必要になる。中でも胃の不調を感じる人におすすめなのが『胃活プログラム』。年末年始に向けて、ぜひ実践してほしい」と、胃の不調のセルフケア術を伝授してくれた。
では、三輪先生が推奨する「胃活プログラム」の4つのポイントを紹介しよう。1つ目は「超手抜き朝ごはん」。睡眠中は食事しているのと同じ状態。胃は食べ物を待ちかまえている。そして、朝食をとることによって胃腸が動きはじめる。一日のリズムが「胃腸の調子」をよくするという。実際に、ある研究で、朝食を食べる人のグループと食べない人のグループで胃の調子を調べたところ、朝食を食べない人のグループのほうに胃の調子が悪い人が圧倒的に多かったという報告もある。胃を目覚めさせて生活のリズムを整えるため、起きたらなるべく早く、少なくとも2時間以内に朝食をとることが大切とのこと。
栄養バランスの整った食事を毎朝モリモリ食べられなくても、「超手抜き朝ごはん」では、バナナやヨーグルトといった簡単なもので充分。食べやすいのに栄養価はバツグンで、胃にも優しい。「朝はあんまり食がない」「前に食べすぎたので胃を休めたい」という人も、バナナやヨーグルトをひと口食べるところからチャレンジしてもよいとのこと。バナナ以外のフルーツやスープも朝におすすめだとか。また、朝食は、できるだけ決まった時間にとることが大切。時間を決めることで、「生活のリズム」のスイッチが入り、自律神経の働きを整えるのにも役立つという。
2つ目は、乳酸菌やこうじ菌、酵母菌、納豆菌など体によい菌をとる「菌活」。これらの菌を含むヨーグルトや漬け物、納豆などを食べることで、腸の調子を整えて便通をよくしたり、免疫力を高めるといった効果が期待されている。一方、胃の中には胃酸が分泌されており、胃酸に含まれる塩酸には食べ物と一緒に入ってきたばい菌を死滅させるほど強い殺菌作用がある。そのため善玉菌たちの多くも、胃酸にやられて死んでしまうが、強烈な胃酸に負けずに活躍する乳酸菌も存在するという。中にはピロリ菌の活性を抑えたり、胃痛や胃もたれなどを和らげたりする作用を持ったLG21乳酸菌入りヨーグルトなどもある。このように、胃酸に負けない善玉菌を含む食品を利用して、胃のための「菌活」を始めてみるのもよいとのこと。
3つ目のポイントは「胃の温活」。これは特に夏の季節、冷房の室内で長時間過ごす人は、夏でも薄手の腹巻などでお腹が冷えない工夫が大切。寝るときも、お腹には上掛けをのせること。また、食事でも、火の通った温かい物を選ぶ方が、胃がよく働いて調子がよくなるとされている。
最後のポイントは、簡単に姿勢を正せる「威風堂々」。椅子に座っているときは腸が押し上げられ、胃が圧迫されている状態。デスクワークの多い人やドライバーの人のように、長時間椅子に座っている人は、それだけで胃の不調を抱えやすくなる。また、農作業や物作りに従事する人などは仕事中に前かがみの姿勢が多い。猫背の人も要注意。前かがみや猫背の姿勢も、おなかを圧迫して胃の内圧が高まるため、胃酸が逆流しやすくなるとされている。この他に、自宅でリラックスしているときや、スマホを眺めているときは誰でも、肩が内側に丸まって猫背になりがちに。普段から姿勢がよくないと自覚している人はもちろんだが、前かがみや猫背の姿勢が多いという実感のある人は、「正しい姿勢」を意識してほしいという。
「正しい立ち姿勢」としては、背筋を伸ばして肩の力を抜く。重心は、体の真ん中に。胸を張りすぎたり、お尻を突き出したりしないように気をつけること。「正しい座り姿勢」としては、椅子の前で、正しい立ち姿勢をとる。そのまま、椅子にすとんと腰を下ろす。浅く腰かけ、背もたれや肘かけに頼らず、背中をまっすぐ伸ばすことを意識するのがコツとのこと。
また、寝る時は、胃の調子によって寝姿勢を変えるのがポイント。三輪先生は、「例えば、胃酸の逆流を感じる場合は、左側を下にして寝ると、食道より胃の位置が低くなるため、逆流が起こりづらくなる。逆流を感じないが胃もたれがある場合は、胃の出口が下になるよう、右側を下にして寝ると消化を促進させる。胃酸の逆流と消化不良、両方がある場合は、上向きで寝るとよい。枕の高さは約15cm、高さにして10~20cmが理想とされる。うつ伏せで寝るのは避けてほしい」とアドバイスしてくれた。

さらに今回、管理栄養士・フードコーディネーターの渥美まゆ美氏に、年末年始に向けた「胃疲れ解消レシピ」を考案してもらった。「あったか湯豆腐ヨーグルトみそだれ」は、胃に負担が少なく良質な植物性のたんぱく質がとれる豆腐と、胃腸の動きを活発にしてくれる働きがあるヨーグルトを使った湯豆腐。また、発酵食品である味噌を組み合わせて、胃に負担が少なく体の回復を助ける1品に仕上げている。

「とん平焼きヨーグルトソース」は、胃への負担が少なく栄養価の高い卵と胃腸の回復を助けるキャベツを活用した、胃に優しいとん平焼き。胃の負担を大きくする脂であるマヨネーズは、ヘルシーで胃腸の動きを活発にしてくれる働きがあるヨーグルトに変えることで、胃腸の回復の助けになるよう工夫している。

「ホットバナナヨーグルトドリンクシナモン風味」は、消化が良く腸内環境を整えてくれるオリゴ糖を含むバナナとはちみつを、胃腸の動きを活発にしてくれる働きがある乳酸菌を含むヨーグルトと合わせて、胃腸に優しくホットで飲めるドリンクにした。血流促進の助けと香りづけのためのシナモンもポイントとなっている。
川西市立総合医療センター=https://www.kawanishi-hospital.jp/
















