大阪・阪急うめだの鶏専門店「鳥芳」が選ばれる理由とは？ クリスマスから年末の鶏肉シーズンには売上が約7倍に

クリスマスから年末に向けて、鶏肉が大きな需要期を迎えつつある。その中で、大阪の阪急うめだ本店地下2階に店舗を構える鶏専門店「鳥芳」では、鶏を熟知しているアドバイザーが常駐し、顧客と会話しながら鶏肉に関する細かい要望に対応している。本格的な鶏肉シーズンとなる年末には、通常月の約7倍も売り上げ、店舗前に行列ができることもあるという。そこで今回、鶏専門店「鳥芳」が多くのリピーターに選ばれる理由を探った。

鶏専門店「鳥芳」は、創業明治18年でその歴史は130余年。同店で販売している鶏肉は、一部の商品は、鶏肉を丸どりから捌いて販売する。国産鶏・銘柄鶏・地鶏・半調理品など100種類以上のアイテム数を揃え、ここに来れば鶏肉で用意できないものはなく、欲しい部位がおおむね揃う。

「鳥芳」の一番の自慢は、鮮度とのこと。早朝にしめた鶏肉をその日の朝7時30分から捌き、店舗がオープンする10時までに間に合わせる。鶏肉は、魚と違い処理したては筋肉が固くなってしまうが、朝処理して店で熟成してから捌くことで、夕方に調理する頃には肉が柔らかく肉厚で鶏特有のドリップ（水分）も少なく、一番おいしい状態で食卓に出すことができるという。

「店頭にないものでも店の人に声をかけてくれたら提供することができる」と語るのは、中塚寛店長。「鳥芳」では、一部の商品は、丸どりから捌き、内臓も含めてあらゆる鶏肉の部位を取り扱っているため、オーダーカットなど顧客の要望にその場で応えることができる。馴染みの顧客が多いので、「ぶつ切り、もも肉はどの調理法がいいの？」「骨から出汁ができるから水炊きが一番」など会話が弾むとのこと。

また、「鳥芳」は、鶏のことを熟知しているアドバイザーが常駐していることも強みとなっている。顧客の会話を大切にし、「もも肉1枚が大きいので、半分切って1枚はそのまま。もう1枚は真空パック詰めにして欲しい」など様々な要望に応えることでリピーターも増え続け、鶏肉の需要期となる年末には通常月の約7倍も売り上げるという。

「鳥芳」で販売する地鶏の人気No.1は、ダントツで徳島県の熟成阿波尾鶏だとか。他の地鶏と比べて購入しやすい価格であるとともに、適度な歯ごたえがあり、鶏肉のおいしさを味わえることが人気の理由とのこと。実は、30年以上前から取引がある徳島県の地鶏・阿波尾鶏を取り扱う貞光食糧工業は、当初熟成ではなかったという。阿波尾鶏の熟成の効果を知っていた「鳥芳」の井元弘会長が、貞光食糧工業の辻社長に熟成した鶏肉を販売したらどうかとアドバイスしたところ、鶏本来のおいしさを引き出しやわらかくすることができる熟成に惹かれ、設備投資し熟成阿波尾鶏が実現した。

熟成阿波尾鶏のおいしさは、特別に開発した熟成の方法にある。鶏肉は殺菌や冷却のためのチラー（冷却装置）に入れるが、一般的には水冷で行う。しかし、水に浸すとうまみ成分が逃げてしまうため、一般的に水冷時間は50分だが、熟成阿波尾鶏は20分と短くし、うまみを逃がさない。30分はエアチラーといって空気冷却を行う。空気冷却法は場所や時間、手間がかかるため現在では行うところが少なくなっているが、おいしさにこだわる熟成阿波尾鶏では、あえて手間を惜しまず空気冷却法を行っている。

冷却した後は、そのまま専用の熟成庫に入れて、約15時間寝かせて貯蔵する。この熟成庫は、特別な方法で温度管理を徹底している。一連の熟成方法は特許を取得した他にはない方法で行っているとのこと。

熟成阿波尾鶏と他ブランドの地鶏の保水性を評価した試験では、冷蔵庫から出して50分後のドリップの量を調べた。その結果、他のブランドは黄色やピンクのドリップが出たが、熟成阿波尾鶏は全く出ていなかったという。つまり、熟成阿波尾鶏は、保水性を維持し、水分が多く含まれるということが実証された。

「鳥芳」の中塚店長に鶏肉のおすすめの食べ方を聞いたところ、「もも肉は鍋にしたり、塩焼きにするだけでおいしい。シンプルが一番」と話す。「最近は、昔と比べ外食でも手羽なかやせせりなど鶏肉の様々な部位が提供されるようなった。そのため、自宅でも試してみたいと訪れる人も多い。ぜひ、『鳥芳』に来るときは、どんな料理をしたいか尋ねてみてほしい。鶏肉のおいしさを引き立たせるのは、料理に合わせた切り方。たとえば、角切りは鍋に、そぎ切りは、すき焼きに最適となる。鶏肉の繊維を断ち切るように切ることで筋が残りにくくなる」とコメント。また、熟成阿波尾鶏の地元徳島の名物といえば、すだち。「熟成阿波尾鶏にすだちを絞って試食販売をすると薫りが広がりさっぱりする」と、顧客に大好評だったことから、いまでも期間限定で熟成阿波尾鶏を買ってくれた人にすだちを提供しているという。

鶏専門店「鳥芳」＝http://www.toriyoshi-m18.co.jp/
貞光食糧工業＝https://www.sadamitsu-shokuryo.jp/