日本食に欠かせない「発酵」のメカニズムとは? 後編~発酵食品をつくるための4つの条件

前回は、発酵食品はさまざまな食材を細菌やカビ、酵母など微生物の力で発酵させることによってつくり出していることを紹介しました。ただし、発酵を成功させるには、微生物の活動に大きくかかわる水分や温度、塩分、pH(ペーハー)をコントロールする必要があります。今回は、発酵食品を作るために欠かせない、これら4つの条件が微生物に与える影響について説明します。

まず、微生物が活動するためには、水分の存在が必要不可欠です。では、微生物はどの程度の水分状態で活動することができるのでしょうか。微生物が活動できるのは、食品に含まれるすべての水分ではないとのこと。食品中の水は、その存在状態により「自由水」と「結合水」に分けられ、微生物が利用できる水は分子が動き回れる「自由水」となります。塩漬けや砂糖漬けの食品が腐敗しにくいのは、食塩や砂糖が自由水と結びつくために、自由水の割合が低くなるからです。

最近では、減塩や甘さ控えめによって保存期間が短くなる傾向にあります。この食品中の自由水の割合を示す指標として用いられているのが「水分活性」とのこと。水分活性とは、食品中の自由水の割合を0~1で表す数値です。極端に言えば、自由水が食品の中に全く含まれていなければ水分活性は「0」、100%自由水なら「1」となります。微生物の種類によって活動できる水分活性の値も異なり、最も高い水分活性が必要なのは細菌で「0.90」以上でないと活動できません。酵母は「0.88」以上、カビは「0.80」以上で活動することができます。

2つ目の条件である温度は、微生物の活動をコントロールするうえで重要な要因です。基本的に高温で殺菌作用が、低温で静菌作用があります。種類によって異なりますが、微生物はある一定の温度範囲でしか成育し、増殖することができません。細菌の増殖に最も適した温度は、一般的に30~40℃を至適温度とする菌が多く、10℃以下、60℃以上ではほとんど増殖しないといわれています。発酵に多く使われる乳酸菌は37~45℃、納豆菌は40℃前後で活発になります。また、酵母は最適温度が35~38℃で、10℃以下では活動が低下し、55℃以上では死滅します。発酵に多く使われるカビ(麹菌)の最適温度は、25~30℃で、50℃前後で死滅します。

3つ目の条件として、発酵食品の製造において塩分を加えるのは、腐敗菌の活動を抑えることが目的です。ほとんどの腐敗菌は、塩分濃度が15%を超えると生活できなくなります。しかし、耐塩菌は生存が可能です。代表的な耐塩菌には乳酸菌があります。乳酸菌は、塩分濃度の高い環境でも発酵が可能なため、腐敗菌を抑えつつ、発酵を進めることができます。乳酸菌による発酵が使われている味噌や醤油、漬物などの塩気のある発酵食品は、高い塩分濃度で保存性を高めているのです。

4つ目の条件のpHは、物質の酸性、アルカリ性の度合いを示す数値です。pH7.0が中性となり、これより数値が小さければ酸性、大きければアルカリ性となります。pHは、微生物の活動の要因の一つであり、温度や水分活性などの条件が一定であっても、食品のpHをコントロールすることで、ある程度の微生物の活動をコントロールすることが可能です。例えば、腐敗菌は、中性付近のpH7.0で最も生育しますが、乳酸菌やカビ、酵母ではさらに低く、pH2.0~3.0付近で増殖するため、腐敗菌を死滅させ、食品の保存性をよくしているそうです。(監修:健康管理士一般指導員)


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