「沈黙の臓器」肝臓が担う薬物代謝のメカニズム

私たちは、病気やケガの治療のために薬を服用しますが、体内で作用したあとは、有害物質と同様に体外へ排出しなければなりません。水溶性の物質であれば、すぐに尿として排出することができますが、薬は脂溶性のものが多いため、肝臓で解毒をすると同時に体外に排出しやすいよう水溶性が高い物質に変化させる必要があります。この代謝のことを「薬物代謝」と呼んでいます。今回は、薬物代謝のメカニズムについてみてみましょう。

まず、薬物代謝の経路は2段階になっています。1段階目では「酸化反応」「還元反応」「加水分解」などが起こり、物質を変えて水溶性を高めます。そして、2段階目ではさらに水に溶けやすくする「抱合」という過程があり、最終的に無害で水溶性が高い物質となり腎臓へ運ばれ尿として排出されています。

この代謝で活躍する代表的な物質が、肝細胞の中に存在する薬物代謝酵素「チトクローム P450」とのこと。チトクローム P450は、主に第1段階目を担っており、有害物質や薬を酸化させることで、水になじみにくい物質を水になじみやすい形に変えています。アクリルアミドなどの有害物質や薬などの多くはこの酵素が関与しているそうです。

また、薬と飲食物の飲み合わせが悪い場合がありますが、これもチトクローム P450が関係しているとされています。例えば、グレープフルーツはチトクローム P450の活性を阻害します。そのため、高血圧の薬であるカルシウム拮抗薬を飲んでいる時にグレープフルーツジュースを飲んでしまうと、解毒作用が低下し薬が効きすぎてしまい血圧が下がりすぎるなどの症状が出るといわれています。

また、アルコールの代謝に関係するミクロゾームエタノール酸化酵素(MEOS)も薬物代謝酵素の一つです。そのため、アルコールと薬を一緒に飲んだ場合、本来薬の代謝で使われるはずの薬物代謝酵素がアルコールでも使用されるため、薬の代謝が遅くなります。その結果、薬の効果が強く出すぎてしまう危険性があるとのこと。薬の多くがアルコールとの併用を禁止しているのはこのためです。特に、糖尿病の薬や血液が固まるのを防ぐワーファリン、睡眠薬、抗うつ薬などは、アルコールと併用すると意識を失ったり血圧が下がりすぎたりしてしまうなどの重篤な症状につながる危険性が高いといわれています。

肝臓は、今回紹介した薬物代謝や解毒作用だけでなく、栄養素の貯蔵や胆汁の生成など、幅広い働きを担っている重要な臓器です。「沈黙の臓器」と呼ばれているように、異常が起こっても症状として現れることが少ないとされています。だからこそ、アルコールを飲みすぎない、肝臓に脂肪を蓄積させないなど日頃から肝臓を労る生活を心がけていきましょう。(監修:健康管理士一般指導員)


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