くも膜下出血の新たな治療薬「ピヴラッツ」に期待されること

昨年1月20日、くも膜下出血の治療薬として、エンドセリン受容体拮抗薬「ピヴラッツ」という点滴薬が約25年ぶりに世界に先駆けて日本で承認・発売されました。くも膜下出血は、脳内のくも膜下腔と呼ばれる部位で起こる出血で、脳血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂し、出血することで起こるとされています。出血すると、突然の激しい頭痛や嘔吐といった症状に襲われ、そのまま意識を失うケースもあるそうです。死亡率は約3割と高く、一命をとりとめたとしても半数近くの患者で後遺症が残るといわれています。では、新薬のピヴラッツには、どのような効果が期待されているのでしょうか。

くも膜下出血では、発症直後の治療の後は、早期再出血するリスクが非常に高く、予防するために出血後すぐに動脈瘤へ血液が流れないようにする手術や動脈瘤内にコイルを詰める塞栓手術など外科的治療が行われるのが一般的です。なぜなら、出血後に適切な外科的治療を行った場合でも、くも膜下出血で血腫に触れた脳動脈が数日から2週間ほどの間に、過度な収縮をしてしまう「脳血管れん縮」を起こすことがあるためです。

脳血管れん縮が起こると、脳血流量が低下し虚血状態になるとのこと。その後、酸素や栄養素が十分に供給されず広範囲に脳にダメージが生じた場合に、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。つまり、脳血管れん縮を予防することが、くも膜下出血の予後に大きくかかわってくるのです。そして、この脳血管れん縮を抑制するのがピヴラッツの働きになります。

ピヴラッツの一般名は、「クラゾセンタンナトリウム」で、血管を収縮させる作用を持つエンドセリンの働きを阻害する世界で初めての拮抗薬とされています。ピヴラッツは、くも膜下出血後48時間までを目安に点滴を開始することで、エンドセリン受容体に結合し、血管れん縮を抑制することが可能となり、最大15日間まで点滴ができるそうです。副作用としては、肺水腫など体液がたまりやすくなる症状があるため、適切な術後管理が必要とのこと。

治療にかかる費用は、最大15日間の投薬で約240万円と高額ですが、高次脳機能障害を防ぐことは、将来的には大きなメリットになると考えられています。例えば、高次脳機能障害による半身まひを防ぐことで、リハビリなどを必要とする入院期間の短縮につながる可能性があります。そのため、結果的に医療費抑制につながることが期待されています。(監修:健康管理士一般指導員)


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