カクタス、「進化する日本の研究シーン」についてメディアセミナー開催、AI利用の変化に関する調査結果も発表

左から:カクタス・コミュニケーションズ 代表取締役社長の湯浅誠氏、慶応義塾大学医学部特任講師の早野元詞氏

カクタス・コミュニケーションズ(以下、カクタス)は、「進化する日本の研究シーン AI利用と海外潮流から見る国際競争力向上への3ステップ」と題したメディアセミナーを4月25日に開催した。セミナーでは、同社が実施した論文におけるAI利用の変化に関する調査結果について発表した他、老化に関する研究が米国トップジャーナル「Cell」に掲載された慶応義塾大学医学部特任講師の早野元詞氏を招き、カクタス 代表取締役社長の湯浅誠氏と、日本の国際競争力低下の原因について「研究力」や「論文」の観点から意見を交わした。

昨年8月、文部科学省科学技術・学術政策研究所が発表した「科学技術指標 2023」によると、日本は注目論文数で世界13位と前回よりも1つ順位を落とす結果となった。ChatGPTをはじめとする生成AIが社会で広く利用されるようになったのと同様に、論文執筆における環境は近年変化の最中にあり、カクタスが昨年7月に発表した「第1回 AIツール利用に関するアンケート調査」では、研究者の2人に1人は週に複数回、または毎日の高頻度でAIツールを利用して論文執筆等を行っていることがわかった。そして今回、アカデミアにおける最新のAIツール利用の実態把握と、キャリア形成や研究活動におけるAIツールの貢献度を明らかにするべく、今年3月に第2回調査を実施したという。

カクタス・コミュニケーションズ マーケティング部 シニアマネージャーの岩田健太郎氏

この調査結果のポイントについて、カクタス マーケティング部 シニアマネージャーの岩田健太郎氏が紹介した。「これまでにAIツールだけを利用して(人力の英文校正などのプロフェッショナルサービスを利用せずに)論文投稿をしたことがあるかを聞いたところ、『ある』と答えた人は8.8%とまだ少なかったが、投稿経験者の4人に3人は論文がアクセプトされた経験を持つことがわかった。また、一年前と比べて、論文執筆におけるAIツール利用度は75%の人が増えた(とても増えた、やや増えた)と回答していた」と、論文執筆においても急速にAIツールの利用が浸透しているという。「論文執筆時に利用しているAIツールは『DeepL』41.8%、『ChatGPT』20.4%、『Google翻訳』11.1%と、無料で使えるAIツールが上位約73%を占める結果となった。研究活動でAIツールを導入している目的としては、『論文の校正/校閲』が28.9%、『翻訳』が28.2%と、論文執筆の核となる部分をAIツールに委ねていることがわかった」と、AIツールの利用実態が明らかになった。

「AIツールを使いこなせると、研究キャリアで有利になると思うかと聞くと、92.9%の人がAIツールを効果的に使いこなせると研究キャリアの形成において有利になる(とても有利になる、やや有利になる)と回答した。AIツールを利用することで、『研究にかかる時間削減』『論文執筆のスピード向上』といった作業効率面でのメリットや、「論文執筆本数が増える」といった生産性面でのベネフィットを感じていた。一方、『投稿できるジャーナルのレベルが上がるか』を問う設問では、『そうは思わない』『わからない』が7割を超え、研究内容そのものの価値への影響はそれほど大きくないことがわかった」とのこと。「今回の調査結果から、この1年間で研究者においてもAIツールの活用が進み、AIツールを使いこなすことがキャリア形成に影響するフェーズに移行していることが示唆された。今後は、世界的にAIツールを利用した論文投稿数が増えることが予想され、捏造や剽窃を抑制する仕組みを検討することが必要になる」との見解を示した。

左から:カクタス・コミュニケーションズ 代表取締役社長の湯浅誠氏、慶応義塾大学医学部特任講師の早野元詞氏

続いて、「AIでどう変わる? 国内研究シーンに期待される変化と論文の役割」をテーマに、慶応義塾大学医学部特任講師の早野元詞氏とカクタス 代表取締役社長の湯浅誠氏によるトークセッションが行われた。日本の国際競争力の現状について、湯浅氏は、「IMD(国際経営開発研究所)の『世界競争力年鑑』2023年版によると、日本の競争力総合順位は35位と過去最低を更新し、2026年にはGDPでもインドに抜かれる見通しといわれている。実際に、日本の競争力の源である研究開発費への投資は、諸外国と比べて企業・大学ともに伸び悩んでいる。論文出版競争でも、世界の論文数が激増する中で、日本の研究論文の存在感は低下しつつある」と指摘する。これに対して早野氏は、「日本の大学は、明らかに研究者や若手の教員が研究にフォーカスする時間が少ない。研究の質を高めるには、自由に考える時間や新しいことへのチャレンジが重要になる。そのため、論文の出版数は増えていても、論文の質は上がっていないことが如実に現れている」との考えを述べた。

カクタス・コミュニケーションズ 代表取締役社長の湯浅誠氏

「こうした日本の国際競争力低下に強い課題感を抱き、政府では『10兆円規模の大学ファンドの創設』や『スタートアップ育成5ヵ年計画』など、研究・イノベーションをサポートする複数の取り組みを並行して実施している。その中で、スタートアップ企業の資金調達金額は順調に伸びてきている。特に、人工知能やゲノム編集などの『ディープテック』を担う、大学発ベンチャー数が過去5年間で急激に伸びている」と、湯浅氏は、ディープテックやバイオベンチャー分野の育成が国際競争力のカギを握っているという。「これまでのように研究者が書いた論文を研究者コミュニティが読むのではなく、今後は多様な研究プレイヤー、バイオテック系などのスタートアップ企業が書いた論文を、研究者だけでなくベンチャーキャピタルや政府、企業が読む流れが加速していく」と、世界的に論文の書き手・読み手が多様化しつつあると説明した。

慶応義塾大学医学部特任講師の早野元詞氏

早野氏は、「研究の成果と社会への実装の距離が近くなってきていると感じる。論文は、研究者にとって自己表現の場となるが、これからは読む相手が企業なのか、ベンチャーキャピタルなのか、研究者なのか、誰に読んでほしいのかを考えながら書いていくことが重要になる。特に多額の投資を得るためには、クオリティの高い論文を出すことが必要不可欠になる」と、論文の書き手側にも意識改革が必要になるという。「また、日本人研究者は英語がネイティブではなく、英語のストーリーテリング力が低いため、国際的な論文で損をしているという問題もある。これに対しては、予算はかかるが優秀なライターを雇う、もしくはAIを活用することが一つの解決策になる」と、英語のストーリーテリング力を高めることも重要なのだと話していた。

AIは日本の研究力改善の救世主になるかという点について、湯浅氏は、「AIの登場によって、資金やリソースの不足に悩む日本の研究者も、質の高い論文を少ないリソースで執筆・投稿可能となるため、日本が競争力を取り戻すきっかけになる可能性に期待されている。しかし、特定のワードが大学の論文で頻繁に出現するなど、生成AIツールの文章をそのまま論文に使用するケースも出てきている。研究分野においては、AIと人の役割をしっかり切り分ける必要がある」と指摘する。早野氏は、「将来的には、AIを使いこなせる研究者ほど、優れたアウトプットを出せるようになると考えている。研究者がAIリテラシーを持って、いろいろなAIを組み合わせながら研究を進め、そこに研究室としてのオリジナリティやアイデア、独創性を取り入れながらAIをうまくパイロットしていく時代になっていく」と、研究者がAIリテラシーを高め、あくまでも研究者主導でAIを使いこなしていくことがポイントであると訴えた。

[調査概要]
調査名:第2回 研究者のAIツール利用に関するアンケート
集計期間:3月25日(月)~4月8日(月)
対象:エディテージ(カクタス・コミュニケーションズ)メルマガ会員、外部組織に所属する研究者452名
方法:アンケートフォーム自主回答形式

カクタス・コミュニケーションズ=https://cactusglobal.com/jp/


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