- Health&Medical2025/12/10 21:00
矢野経済研究所、健診・人間ドック市場に関する調査、2025年度の市場規模は前年度比1.3%増の9810億円と予測

矢野経済研究所は、国内の健診・人間ドック市場を調査し、市場概況、将来展望を明らかにした。その結果、2025年度の国内健診・人間ドック市場規模は前年度比1.3%増の9810億円と予測した。生活習慣病予防の重点化で需要は堅調に推移、健診DXによる業務効率化・受診導線強化に注目が集まる。
法定健診には、地方自治体が実施する住民健診や、企業・団体等が従業員向けに実施する定期健診、母子健康法・学校保健法などに基づく健康診断、40歳以上74歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(以下、特定健診)、がん検診、後期高齢者向けの高齢者健診などが含まれる。その他、利用者が任意で受診する人間ドック等の任意健診も実施されており、同調査における健診・人間ドック市場はそのいずれも対象として算出した。
国による政策面では、これまで生活習慣病予防を柱とした予防医療が一貫して推進され、医療費適正化と健康寿命延伸の両立を目指す中で、受診促進と行動変容の実装が重視されてきた。特定健診制度は受診率を主要KPI(Key Performance Indicator)として運用され、2017年度以降、保険者別の実施率公表やインセンティブ(加算)・ディスインセンティブ(減算)措置によってガバナンスが強化されている。政策は「可視化→比較可能性→行動誘因」というメカニズムに基づいている。
また、2024年度からは第4期特定健診・特定保健指導が開始され、保険者別に新たな実施率目標値(例:協会けんぽ70%、単一健保90%)が設定されたが、一方で実際の受診率は大きく乖離している。地域・保険者間格差の是正や、DXによる受診導線(受診者の健診施設内での経路)設計、ナッジ理論(自発的な受診を後押しする取組み)活用、職域連携強化など受診行動につなげる持続的なデザインが引き続き課題である。
健診施設では、受診者受け入れ拡大のため、他施設との差別化ポイントの1つとして受診者のニーズに対応した人間ドックのオプション検査を導入することで、受診者の獲得を図っている。同調査に関連し、2025年7~9月に健診実施施設に対して郵送アンケート調査を実施し、115件の回答を得た。

人間ドック標準検査以外のオプション検査として実施件数の多い検査項目(複数回答)について尋ねたところ、「PSA(前立腺特異抗原)検査」の回答が最も多く、次いで腫瘍マーカーである「CEA」、「CA19-9」と続いている。その他、上部消化管内視鏡検査、他の腫瘍マーカーや婦人科領域、脳神経領域の検査も比較的多い傾向がみられた。
新しいオプション検査項目としては、がんや脳梗塞・心筋梗塞、認知症などの発症リスクを評価するリスク評価系検査サービスが広がっている。近年では、AIを用いた解析サービスが注目され、心電図データや過去の健診結果を解析することで、将来の健康状態をシミュレーションする検査も登場している。
また、今後注力していきたい分野を尋ねると、「人間ドック」という回答が多く挙げられ、引き続き人間ドックが注目される分野・市場であることが示唆される結果となった。
2024年度の国内健診・人間ドック市場(受診金額ベース)は9680億円、前年度比101.6%と推計した。コロナ禍で一時的に受診者が減少したものの、2022年度以降は予約・受診者数が正常化し、市場は回復基調にある。個人の健康投資意識の回復や、健診施設の運営体制の再構築が進み、市場は安定成長局面に入ったと考える。
今後は、健康寿命延伸や生活習慣病予防を目的とした政策の推進や、企業・健保・自治体の連携強化によって、受診率は緩やかに上昇していく見通しである。健診対象人口の減少は避けられないものの、受診率の向上と付加価値型サービスの拡充によって、国内健診・人間ドック市場は緩やかな拡大を維持すると予測する。
[調査要綱]
調査期間:2025年7月~9月
調査対象:全国の健康診断を実施している施設、関連ビジネス企業、保険者、地方自治体等
調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、健診実施施設向け郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
[小売価格]16万5000円(税込)
矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp
















