矢野経済研究所、コメビジネスに関する調査、2030年度のコメの一貫ビジネスの市場規模は1705億円になると予測

矢野経済研究所は、コメの一貫ビジネス(米の品種開発から生産、加工、流通、販売までを一貫して自社・自社グループで管理する垂直統合型ビジネス)や、コメ関連商品・サービス(飲料・調味料、健康機能米・原料素材、加工米飯、非食用分野など)を調査し、製品セグメント別の動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。その結果、和食ブームを追い風に海外では日本米(短粒種)需要が拡大し、2030年度のコメの一貫ビジネスの市場規模は1705億円になると予測した。国内ではこめ粉の製粉技術・使用用途が拡大、コメ関連商品・サービスの需要も拡大の見通し。

現在、国内における米のマーケットは、需給両面で大きな転換期を迎えている。作付面積の縮小や地球温暖化による高温障害の頻発など、米の供給不安が現実のものとなりつつあり、生産現場では栽培にかかる技術革新や気象変動への対応が急務となっている。

米の生産面では、高温障害や病害虫の発生パターンに対応した稲の品種改良が進められているほか、環境対策として従来以上に二酸化炭素を吸収できる「DAC(Direct Air Capture)水稲」、省力化対策として種籾を水田や乾田に直接まくことで育苗や田植えの工程を省略できる「直播栽培」などさまざまな取組みが注目されている。

一方、需要面では、海外における日本産米消費の拡大に加え、健康機能米やアルファ化米、こめ油、こめ粉といった食品用途に留まらず、米由来成分を活用したスキンケア製品や、食用に適さない古米・破砕米を原料とするライスレジン(バイオマスプラスチック)、米ぬか油を使ったライスインク(印刷インキ)など、非食用途の新素材開発も進展している。

とりわけ、和食は無形文化遺産にも登録されており、その美味しさや彩りの豊かさが世界的に評価されている。日本食ブームは、日本産米の海外需要を押し上げる要因となっており、農林水産省の調査によれば、2023年時点で海外の日本食レストランは約187,000店に達し、年々増加している。

また、財務省「貿易統計」によると、2024年のコメの輸出先では数量・金額ともに香港、アメリカ、シンガポールが上位を占めている。特にアジア諸国では所得水準の向上が続いており、日本産米の需要が一層高まっている。

こうした動きを背景に、2024年度のコメの一貫ビジネスの市場規模(事業者売上高ベース)を前年度比120.4%の643億円と推計した。

これまでこめ粉は幾度かブームと収束を繰り返してきたが、近年では用途の多様化を背景に、さまざまな分野において需要が着実に拡大している。

この需要拡大を支えているのが、製粉技術の進歩である。具体的には、高速気流中で粒子同士を衝突させて粉砕する「気流粉砕方式」や、一定の力で押しつぶす「ロール粉砕方式」など、さまざまな製粉技術が導入されており、粒度の調整や品質の安定化(でんぷん損傷の抑制など)が進んでいる。

こうした製粉技術の高度化により、こめ粉のパンや洋菓子といった新たな用途への展開が広がっている。さらに現在のこめ粉市場では、一般的なこめ粉に加え、小麦グルテンを配合したパン用ミックスこめ粉やもち米由来のこめ粉など用途に応じた多様な商品が展開されている。

さまざまなコメ関連商品・サービスへの多用途展開によって、米は今後も日本の農業と食文化の中核を担う素材として期待される。コメの一貫ビジネス市場は、今後、アジア諸国に加え、日本食人気が高まるアメリカやカナダ、オーストラリア、ドイツ、イギリスなどの欧米諸国においても、日本米(短粒種)の需要が拡大していく見込みである。2030年度のコメの一貫ビジネスの市場規模は1705億円(2024年度比265.2%)にまで成長すると予測する。

[調査要綱]
調査期間:2024年12月~2025年5月
調査対象:米穀卸売業、加⼯米飯メーカー、こめ油メーカー、こめ粉・米ゲルメーカー、機能米メーカー、飲料メーカー、機能性食品メーカー、 官公庁・関連業界団体ほか
調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話調査・アンケート調査、ならびに文献調査併用
[小売価格]22万円(税込)

矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp


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