生物の進化にもたらす遺伝子の影響とは? ヒトとチンパンジーのDNAの決定的な違い

人間を含む地球上の生物は、長い時間をかけて様々に進化してきました。この進化に深く関わっていると考えられているのが遺伝子の突然変異です。DNAは、時に複製時に通常とは異なる塩基が結合してしまうことがあります。これを遺伝子の突然変異といいます。塩基配列の異常には、一つの塩基が置き換わってしまう「置換」、塩基が欠損してしまう「欠失」、新しい塩基が入る「挿入」があります。

「置換」は、塩基の一部が別の塩基に置き換わることで、アミノ酸配列が変化したり、しなかったり、終止コドンで翻訳が終了したりするなど様々な変化が起きます。「欠失」は、塩基の一部が損失することで指定する3つのコドンにずれが生じます。「挿入」は、塩基の一部に新たに別の塩基が入ることで、欠失同様に指定する3つのコドンにずれが生じます。

欠失や挿入によってコドンの読み枠がずれると、それ以降のアミノ酸配列が大きく影響を受け、合成されるタンパク質が変化します。このようにコドンの読み枠がずれることを「フレームシフト」といいます。

また、遺伝子に変異が生じると、個体が生存する環境に対して有利または不利な影響をもたらす場合があります。この時、生存と繁殖など環境に適した形質を持つ個体が選択されて遺伝していく「自然選択」が働きます。例えば、たった一つの塩基配列の違いによって赤血球(平たい楕円形)が三日月(鎌)のような形になる鎌状赤血球貧血症は、自然選択の代表的な疾患です。通常、鎌状赤血球を持つ人は、重度の貧血を起こすため生存に不利とされ自然選択により減少、消滅します。しかし、マラリアが多発するアフリカの一部地域では、鎌状赤血球を持つことで、マラリアによる健康被害を回避することができるため、消滅することなく次世代に受け継がれています。このように、生存に有利なものと不利なものを様々な要因と照らし合わせて生物は進化を遂げているのです。

ここで、ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いを見てみましょう。現在の研究ではヒトとチンパンジーは同じ二足歩行ですが、知能や筋力など決定的な違いが多く存在します。この違いは「StSat」と呼ばれるDNAの有無によるものだと考えられています。

StSatはチンパンジーの染色体の端に存在しており、DNAの組み換えを起こりにくくする働きがあります。進化の過程を遡っていくと、ゴリラやその先の共通祖先にもStSatが存在することがわかりました。このことからヒトは進化の過程でStSatを失ったことでDNAの組み換えが起こりやすくなり、ヒトにしかできない特徴を獲得してきたと考えられています。文明を開拓していく中で、ヒトは脳の発達などが必要になった一方で、チンパンジーのような運動能力は不要となり、退化したといわれています。(監修:健康管理士一般指導員)


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