「ストレス」という言葉はいつから使われてる? ハンス・セリエ博士の論文発表がきっかけに

現代人は、「仕事や勉強でストレスがたまる」「ストレスを発散したい」など、さまざまな場面で「ストレス」という言葉を使っています。もともと「ストレス」は、物理学で使われている言葉で、「外からかかる力による物質の歪み」のことを意味していました。では、医学界において使われるストレスには、どんな意味があり、いつから使われているのでしょうか。

ストレスという言葉が人に対して使われるようになったきっかけは、1936年にカナダの生理学者であるハンス・セリエ博士が「ストレス学説」という論文で初めて医学用語として発表したことによるものです。当時の医学界では、「すべての病気は体内に侵入した病原体によって起こる」と考えられていました。これは、病原体の発見や治療方法の開発によって、感染症での死亡者が激減するという目覚ましい医学の進歩から生まれた考えです。そのため、めまいや倦怠感、頭痛など原因のはっきりしない症状は病気とみなされず、病院でもまともに相手にされない状況だったそうです。

こうした中で発表されたハンス・セリエ博士の「ストレス学説」は、病気の原因は病原体にあると信じられていた当時の医学界に大きな衝撃と変革をもたらしました。ハンス・セリエ博士は、ストレスを「外部環境からの刺激によって引き起こされる生体内の変化した状態」とし、ストレッサーを「ストレス状態を引き起こす外部からの刺激」と定義しました。そして、どのような種類のストレッサーが加わっても、同じような反応(非特異的反応)が体に生じるという「ストレス学説」を提唱しました。この反応は、生体にとってストレスに適応しようとするための反応であることから「全身適応症候群」と呼ばれています。

この反応は、ハンス・セリエ博士が医学生時代の研究室で、卵巣や胎盤などから新しいホルモンを見つける実験の際に発見されました。ラットに卵巣や胎盤から抽出したエキスを注射すると、副腎皮質の肥大やリンパ組織の萎縮、胃腸内壁の出血、潰瘍などの症状が引き起こされました。また、他の臓器のエキスを注射しても同様の反応が起こるだけでなく、臓器の保存に使用するホルマリン液をラットに注射しても同じ反応が現れたそうです。

そこで、これらの反応は卵巣などのホルモンによる作用によるものではなく、「体にとって有害な刺激」が加わると共通して起こる反応なのではないかと考え、寒さや暑さ、外傷、出血、精神的恐怖など、さまざまな体にとって不快な刺激(ストレッサー)をラットに加えると、同様の反応を起こすことを発見しました。このストレス学説がきっかけとなり、現在の医学界では、はっきりとしない症状であっても検査をし、症状の原因を調べ、治療を行うようになったのです。(監修:健康管理士一般指導員)


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