ハワイの伝統舞踊「フラ」と健康の関係とは? 後編~ダンスが脳の活性化につながるメカニズム

前回のコラム中編では、フラを踊ると脳波や神経伝達物質に良い影響を与え、リラックス効果が得られることを紹介しました。今回は、フラなどのダンスをすることが脳の活性化につながるメカニズムを探っていきます。

人間の脳の中で、主に短期記憶を司り、新たな記憶をつくる役割を担っているのが「海馬」です。海馬での記憶保持は数分や数時間と一時的で、すぐに忘れてしまうのが特徴です。海馬は、ダンスの振り付けなどを覚える上で重要な部分ですが、加齢にともなって委縮していくため、徐々に覚えが悪くなっていくとのこと。

ダンスと筋力トレーニングを一定期間継続し、脳のMRIを行った研究によると、両者ともに海馬の体積増加がみられましたが、ダンスを行った集団にだけ、海馬周辺の組織である「海馬台」と「歯状回」にも体積の増加が起こっていることがわかったそうです。海馬台は主にワーキングメモリー(作業記憶)に関わる組織、歯状回は記憶を思い出す働きをする組織です。ダンスではステップ、手の動き、フォーメーションなどが曲に合わせて変わるため、常に新しいものを学んでいく必要があります。同じ動きを反復する運動に比べ、ダンスは脳への刺激が多く、海馬や海馬周辺の組織に大きな影響を与えると考えられています。

また、この研究では、ダンスを行った集団にのみ、複雑な情報処理を司る「脳弓」の密度が高くなっていることもわかったそうです。新しいステップを学び、習得することを求めるという認知的要求が、脳弓の組織に影響を与えたと考えられます。脳弓は、海馬と同様に記憶に関する重要な役割を担っており、認知症との関連もあるといわれています。

さらに、近年の研究から、ステップを踏み続けることで、脳の前頭葉にある運動性言語中枢「ブローカ野」が活性することも判明しています。ブローカ野とは、言語や音声の処理・理解、または手話を使った表現にかかわる領域です。曲の歌詞を理解し、体で表現するフラにおいても欠かせない領域になります。フラなどのダンスを通じて、ブローカ野が活性化されることで、頭の回転が速くなるだけでなく、自己防衛力やコミュニケーション力も高まるといわれています。また、ダンスをすると脳の前頭葉の一部が活発になり、体がどんな姿勢をとっているのかなど、空間把握能力も高まることがわかっています。

こうした研究結果から、脳の老化への有望な対策の1つとして、世界的にダンスが注目されている他、日本でも国立長寿医療センターにおいて、ダンスが認知症にどのように影響するかについて研究が進められています。また、各地域において、高齢者向けのサークルやデイケアなどで、フラなどのダンスの導入が進んでいるそうです。(監修:健康管理士一般指導員)

※8月に発生したハワイ マウイ島での大規模火災でお亡くなりになられた方に対しまして、心よりお悔やみ申しあげますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申しあげます。


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