猛暑によって引き起こされる「夏フレイル」に要注意、予防には適度な運動や魚肉ソーセージなどたんぱく質豊富な食品の摂取を

筋力や活力が低下して、身体と心が弱っている状態を指す「フレイル」は、介護が必要となる一歩手前の状態であり、高齢者に注意が必要といわれている。通常は加齡によって陥ることが多いが、近年は各地で猛暑が続く夏、“暑さ”によって外出の機会が減ることで、若者でもフレイルになるリスクが高まっているという。「体がだるい」、「疲れやすい」、「ペットボトルのふたがうまく開けられない」など、ただの夏バテかと思いきや、それはいわゆる「夏フレイル」かもしれないとのこと。フレイルなんて自分には無関係と思っている人も、「夏フレイル」に関しては身近で危険な状態であることを知っておくことが大切になる。そこで今回、加齢ではなく暑さによって引き起こされる「夏フレイル」の怖さと予防対策について紹介する。

近年の「夏フレイル」増加の原因は、主に2つ考えられている。1つ目が「環境要因」。ここ数年の気候変動の影響によって、夏の高温化・長期化が進行している。若く、体力がある人でも、異常な暑さが長く続くことで、体には負担がかかり続けてしまう。そして、「暑い」「外に出ない」「食欲が出ない」「低栄養」「筋力が低下する」「やる気が出ない・活動したくない」「弱る」という悪循環に陥ってしまう。加えて、外出しないことによるコミュニケーションの低下も夏フレイルの要因になるとされている。

2つ目は「社会的要因」。新型コロナウイルス感染症の拡大以降、外出機会の減少や活動量の低下といった生活様式の変化がみられた。この影響で、体力が低下した人が増えていることが懸念されている。特に若い世代で、筋力が非常に落ちている人が多く、小さいこどもでも筋力が落ちて疲れやすかったり、歩きたがらなかったりということも散見される。これらが引き金となり、暑い今年の夏は特に夏フレイルへの注意が呼びかけられている。

体のだるさや食欲不振、胃腸の不調といった夏バテ症状は誰もが一度は経験があると思われるが、実は、体力が奪われ家に引きこもり、食事量が減るといった典型的な夏バテ状態が続いてしまうと、フレイルが引き起こされやすくなるといわれている。そのため、疲労感や食欲不振を感じた場合は、「ただの夏バテ」と軽視せず、「夏フレイルのサイン」として早めに対処することが大切になる。

フレイルは主に、「身体的フレイル」(筋力低下、歩行速度の低下、体重減少)、「社会的フレイル」(ひきこもり、コミュニケーション不足)、「心理的フレイル」(意欲の低下、判断力や認知機能の低下、不安感)の3つの要素に分けられる。これらの3つのフレイルは互いに影響し合う関係にあり、1つのフレイルの悪化が、他のフレイルの悪化を引き起こしやすくなる。例えば、筋力が低下すると外出が難しくなり、人との関わりが減少し孤立すると社会的フレイルとなる。さらに、孤立による意欲の低下や不安感が心理的フレイルへつながる、という負のスパイラルが起こる可能性が考えられる。

しかし、フレイルは「可逆性(元に戻る可能性)」であることが大きな特徴。適切なケアや治療を行うことで、フレイルの状態から元の健康な状態に回復することも十分可能とされている。フレイルにならないように予防することが大切であり、フレイルの兆候か見られる場合には早めに対策を取って要介護状態への悪化を防ぎ、健康な状態へ戻すことが重要となる。

「夏フレイル」の症状はフレイルの中でも主に「身体的フレイル」にあたる。フレイルに早く気づき、早めに適切な対策を行うことで、その他の社会的フレイルや精神・心理的フレイルへの悪化を防ぐことができる。また、自分がフレイルなのか否か、判断するには「歩き方」を見るのも大切だという。「体の左右のふらつきが大きい」「歩行速度が遅い」「手の振りが少ない」「足が上がらずすり足」「歩幅が狭い」といった歩き方をしている場合は要注意とのこと。

「夏フレイル」を防ぐためには、夏場でも朝晩など比較的涼しい時間帯に、熱中症に注意しつつ、屋外でウォーキングや適度な筋力トレーニングを行うのがおすすめとのこと。一方で、気温の高い日は外出を避け、室内で「レジスタンス運動」という筋肉に負荷をかける反復運動を取り入れることで、フレイル予防につながるという。特に下肢を中心とした運動は下半身の筋力維持に効果的で、全身の安定性向上にもつながる。無理をせす、体調に合わせて継続することが大切とされている。

また、食事の面では、必要なエネルギー量の摂取に加え、栄養バランスのとれた食事内容を心がけるのがポイント。食べやすいからといって、そうめんや冷やしうどんなど単品の炭水化物中心の食事を続けていると、栄養が偏り、結果的に栄養不足に陥ってしまう。三大栄養素であるたんばく質、炭水化物、脂質と、ビタミンやミネラルをバランスよく取り入れられる食事が理想的とのこと。

特に、たんばく質が不足すると、筋力の低下、基礎代謝の低下につながることから、体力が落ち、活動量の減少を招き、身体的フレイルを引き起こしやすくなるので、意識して取り入れることが大切となる。たんばく質が多く含まれる食品としては、夏が旬の技豆、朝食の定番である納豆、調理方法が豊富な卵、魚が原料の魚肉ソーセージなどが挙げられる。この中でも、魚肉ソーセージは調理不要で食べられることに加え、カルシウムやDHAなども含まれているので、手軽さからも栄養面からもおすすめの食品となっている。ただし、脂質や塩分も比較的多く含まれるため、高血圧の人、糖尿病や肥満の人は、食べ過ぎに注意する必要がある。

足と歩行のクリニックrege 六本木院 院長の戸原遼氏

足と歩行のクリニックrege 六本木院 院長の戸原遼氏は、夏フレイルの予防対策で、食事や運動以外に気をつけるポイントとして、「室内で過ごす時間が長くなると、人との交流が減りやすくなる。特に一人暮らしの高齢者は、孤独感を感じやすくなるため注意が必要。離れて暮らす高齢の親がいる場合は、積極的に電話やオンラインで連絡を取るように心がけてほしい。たとえ直接の対面でなくても、定期的なコミュニケーションはフレイル予防へ効果的とされている。若者の人にも同様の効果があると考えられる」とアドバイスしてくれた。


ヘッドライン

連載中コラム

健康管理!教えて!!
【連載】健康管理!教えて!!
マイライフストーリー ~新商品で日常を語る物語~
【連載】マイライフストーリー
健康管理!教えて!!
【連載】健康管理!教えて!!

マイライフストーリー ~新商品で日常を語る物語~
【連載】マイライフストーリー

 

カテゴリ