- Study&Work2025/12/11 22:51
TRIAD、建築デザインコンペ「Visional City Design Competition」の最終審査会を開催、最優秀賞は「愛と世界とラブホテル」に

不動産投資事業などを展開するTRIADが主催する、第1回建築デザインコンペティション「Visional City Design Competition(ビジョナル シティ デザイン コンペティション)」で、最優秀賞作品が決定した。12月3日に開催された最終審査会では、ファイナリスト12組によるプレゼンテーションおよび審査員7名との質疑応答を経て、各賞が選出された。最優秀賞には、谷卓思氏・塚村遼也氏による作品「愛と世界とラブホテル」が選ばれた。

最終審査会の開催にあたり挨拶したTRIAD 経営企画部の蔦谷千枝氏は、「『Visional City Design Competition』は、“都市の影に光を”という理念のもと企画されたデザインコンペティション。都市が進化を続けている一方で、そこには老築化した建物や取り残された空間、活用されていない土地など、見えにくい影の領域が存在する。今回のコンペティションでは、『ディストピアの出口』をテーマに、都市の影を再解釈し、そこから新しい価値や風景を創出するアイデアを募集してきた」と、コンペティションの趣旨を紹介。「当社では、アライアンスパートナーである不動産投資クラウドファンディング『COZUCHI』、貸付型クラウドファンディング『COMMOSUS』と共に、社会に必要とされる様々な不動産プロジェクトに取り組んでいる。そして、不動産投資の領域において、投資家と不動産プロジェクトを直接つなぐ新しい仕組み作りに挑戦し続けてきた。今回のコンペティションを通じて、この挑戦をさらに深め、これからの都市が抱える課題や未来の街の在り方について真剣に対話し、都市が秘める新たな可能性を拓いていく」と、同社がコンペティションを実施する意義について説明した。

「Visional City Design Competition」には、初開催にもかかわらず、国内外を問わず、学生、建築設計事務所や企業、教育機関、個人のクリエイターなど多様なバックグラウンドを持つ応募者から約1000件を超えるエントリーが寄せられ、今回のテーマである「ディストピアの出口」に対し、高い注目が集まった。対象エリアとしている都心6区(千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区・目黒区)の中で、最も多かったのは渋谷区(約21%)、次いで、新宿区、千代田区、港区(約15%)と続いた。特に渋谷区では、若者を中心に都市課題を感じている層の関心が高く、応募作品にもその課題意識が反映される傾向が見られたという。

最終審査会では、ファイナリストの12組がそれぞれの作品のプレゼンテーションを行った。一次審査会を経てファイナリストに選出されたのは、「ふるぷら-日本の共有クローゼット化-」、「箱、咲く。-日本橋箱崎町 首都高高架下 T-CAT舞台化計画-」、「Pray Play Ray ~生を知る~」、「街区を縫う-ガレージを縫い代とした新しい都市の見方-」、「国会議事動物公園」、「Project:EARTH LINEs」、「Re-Stack 郵便施設の再構築」、「小さく住まい、大きく動く」、「死とは何か」、「流転する砂」、「愛と世界とラブホテル」、「Plantia Tokyo ~ごみと人類との共生の場~」の12作品。各組5分という限られた時間の中で、都市にどんな影があるのか、その影をどうやって光に変え、ディストピアを抜け出すのか、作品に込めた想いを全力でアピールした。

各組のプレゼンテーションが終了すると、審査員による質疑応答が行われた。審査員を務めたのは、藤本壮介建築設計事務所 主宰の藤本壮介氏、SUPPOSE DESIGN OFFICE 代表取締役の谷尻誠氏、多摩美術大学リベラルアーツセンター大学院 教授/アトリエ・アンソロポロジー 代表の中村寛氏、ブランドジャーナリズム 代表取締役CEOの林亜季氏、パノラマティクス 主宰の齋藤精一氏、LAETOLI 代表取締役CEOの武藤弥氏、TRIAD 執行役員 富田奈利次氏の7名。各組のメンバーと直接対話をする中で、それぞれの作品への理解度をさらに深め、全体ディスカッションを経て最終審議に入った。

審査の結果、最優秀賞には、谷卓思氏・塚村遼也氏の作品「愛と世界とラブホテル」が選ばれた。表彰式で、谷氏は、「作品の制作にあたっては、最初にラブホテルの廃墟を見たときから驚きと苦悩の連続だった。風営法で二度とラブホテルが建てられないことや、実は円環状に広がっていることなど、調査を一つひとつ積み重ねて、論理的に解いていった結果、夢のある風景を描くことができた。今回、その思考を評価してもらったことをとてもうれしく思っている」と、受賞の喜びを語った。

このほか、優秀賞は、「Project:EARTH LINEs」(制作者:西村蒼氏・中西亮介氏・伊達善行氏・平林航一氏・砂川良太氏)と、「死とは何か」(制作者:上高原将礼氏)の2作品が受賞。COZUCHI賞には「箱、咲く。-日本橋箱崎町 首都高高架下 T-CAT舞台化計画-」(制作者:松永彩歌氏)、COMMOSUS賞には「流転する砂」(制作者:道家浩平氏・石黒翔也氏・鹿毛瑛文氏)、TRIAD賞には「街区を縫う-ガレージを縫い代とした新しい都市の見方-」(制作者:中川諄也氏・本間陸斗氏・佐藤唯花氏)がそれぞれ選ばれた。

審査員を務めた藤本氏は、「最優秀賞の作品『愛と世界とラブホテル』は、すごく緻密に論理的に考えている部分と、感性や夢が広がる部分が本当に美しく融合していて、自分にとっては圧倒的な最優秀賞だった。今回の『ディストピアの出口』をテーマにした作品は、現実的なプロジェクトから一歩踏み出して、もっと大きな世界を描いているが、それがこの先の設計活動の原動力となり、勇気を与えてくれるものになると感じた。私自身も、ファイナリストの作品に大きなインスピレーションをもらうことができた」と、審査を終えた感想を述べた。

谷尻氏は、「今回のコンペティションで様々なアイデアが出されたが、考えることは誰でもできる。大切なのは、それを実現することで、考えたことが形になったときに価値が生まれると思っている。ここで賞を取ったチームも、そうでないチームも、自分たちの考えたことを絶対実現するんだという意思を持って、これからの設計活動に向き合ってほしい。これで終わりではなく、今回の作品を長く大切にして、さらにブラッシュアップして、必ず形にしてほしい」と、ファイナリストのメンバーにメッセージを送ってくれた。

中村氏は、「私は建築に関する知識は全然ないので、人類学的な観点から作品を見ていたのだが、その中で土に戻ることや大地に関するものなど『土着性』という言葉を想起させる提案が多かったように感じた。また、もう一つ『文化を取り戻す』という想いが、ファイナリストの作品の中にいくつも見られた。特に最優秀賞の『愛と世界とラブホテル』は、今までの愛の形をリフレームして、もっと多様な形にすることで、失われた文化を取り戻せるという提案に受け取ることができた」と、「土着」と「文化」という2つのキーワードが印象に残ったと話していた。

林氏は、「一次審査に比べて、今回の最終審査では作品の内容がすごくレベルアップしていて、この短期間でみんな努力して、成長してきたと思う。コンペティションを通じて感じたのは、都市の課題は探して見つけるものではなく、内発的に生まれるものだということ。ファイナリストのメンバーは、コンペティションとは関係なく、普段から都市の課題について考えていたからこそ、これだけの作品が生まれたのではないかと思う。そして、この最終審査の場で作品を発表できたことを大きな財産にして、ぜひ作品を形にしていってほしい」と、コンペティションをきっかけに次のステップに進んでほしいとエールを送った。

武藤氏は、「最終審査の議論の中では、審査員で票が分かれ、どの賞も僅差で受賞作品が決定した。それほどレベルが高く、私自身とても刺激を受けた。今回のコンペティションを通じて、考えることの重要さを改めて感じた。私が立ち上げた『COZUCHI』も、建築業や不動産が大不況になったときに、金融を変えようと考えたことがきっかけだった。ファイナリストのメンバーたちも、これから先、自分たちの作品を粘り強く考え続けていってほしい。そして、いろいろな壁を乗り越えながら、積極的に行動することが次の未来につながると思っている」と、考え続けて行動することが大切であるとアドバイスしてくれた。

富田氏は、「主催者であるTRIADの立場として、第1回目のコンペティションにもかかわらず、『ディストピアの出口』というテーマに大きな反響があり、1000件を超える多くの作品がエントリーされたことを感謝している。そして、ファイナリストの作品は、ニュースになっている課題だけでなく、まだ知られていない課題や、これから起こりそうな身近な課題など自発的な提案内容も多く、当社にとっても非常に勉強になった。今後も、不動産や建築に関わる多くの人たちと共に、社会課題の解決に向けて進んでいける機会を作っていきたい」と、今後の活動にも意欲を見せていた。

最後に齋藤氏は、「私は今回の『Visional City Design Competition』のプロジェクトに深く関わらせてもらったが、自分が学生時代や社会人の時にあったらいいなと思うコンペティションを実現できたと考えている。自分たちで課題を考え、その解決策をフィールドワークやリサーチを通じてビジュアル化して作品にするというコンペティションを形にできたと思う。第1回目の開催だったが、審査員も運営スタッフも一体になっていて、次への手ごたえを感じる大会になった。今回受賞したチームは、SNSなどでどんどん発信していってほしい。そして、このコンペティションで終わらせず、社会実装を目指して活動を続けていくことを願っている」と締めくくった。
なお、今後は、第2回「Visional City Design Competition」の開催を予定している。第1回では都心6区に焦点を当てた結果、多様な視点が寄せられ、それが全国にも共通する課題であることが明らかになった。第2回では対象地域を広げ、各地域に潜む“影”と向き合い、その価値を再解釈し、新たな光を与える提案を募集する予定。
TRIAD=https://triad.company/
Visional City Design Competition=https://www.vcdc.jp/
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