- 健康管理!教えて!!2025/12/02 22:28
細菌を破壊する「リゾチーム」はどうやって発見された? 細菌学者フレミングのくしゃみがきっかけに

皮膚は、体の表面を覆い、異物の侵入から体を守っています。皮膚の最も外側にある防御壁としては角質層がありますが、これに加えて、皮脂や汗を分泌することでも防御を行っています。皮脂の成分には、トリグリセリド、遊離脂肪酸、肌の潤いや弾力を保つワックスエステル、保湿成分のスクワレンなどが含まれ、汗の成分には、水分やナトリウム、カリウム、重炭酸ナトリウム、尿素などが含まれています。これらの成分が角質層で混じり合い乳化することで、皮脂膜を形成します。
皮脂膜は、化粧品でいう乳液や保湿クリームと同じ役割をしており、乾燥などから皮膚を守ってくれています。また、皮脂や汗が合わさって皮膚表面を弱酸性に保つことで、病原体の増殖を抑えています。この他にも、皮膚ではディフェンシン(抗菌ペプチド)という細菌などの細胞膜を破壊する抗菌物質が作られており、皮膚に付着した病原体を不活性化します。そして、汗や涙などには「リゾチーム」といった病原菌溶解酵素が含まれており、細菌の細胞壁を破壊する働きを持っています。
実は、このリゾチームは、ある細菌学者のうっかりした行動によって偶然に発見されたといわれています。細菌学者であるアレクサンダー・フレミングは、医療用の抗生物質の研究を行っていました。ある日、風邪を引いていたフレミングは、実験中にくしゃみをしてしまい、鼻水や唾液が細菌を培養しているシャーレ(ガラス皿)に飛んでしまいました。しばらくして、シャーレの細菌を確認したフレミングは、なぜか鼻水や唾液が飛んだ部分だけ細菌が死滅していることに気がついたそうです。このことをきっかけに、鼻水や唾液の中には殺菌作用がある酵素が含まれていることがわかり、リゾチームが発見されたのです。
その後、リゾチームは医薬品や加工食品の細菌の繁殖を抑える食品添加物などとして、幅広く利用されるようになりました。フレミングは、世界初の医療用抗生物質である「ペニシリン」も発見し、今まで命を落とすとされていた病気も薬で治療できるようになりました。これらの功績が認められ、1945年にはノーベル医学生理学賞を受賞しています。(監修:健康管理士一般指導員)
















