中谷財団、2023年度中谷賞大賞受賞者セミナーを開催、理化学研究所の岡田康志氏が研究者を目指す科学好きの高校生にエール

左から:浅野学園浅野中学高等学校の工藤良史さん、理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞極性統御研究チーム チームリーダーの岡田康志氏、兵庫県立小野高等学校の植田彩花さん、東京都立科学技術高等学校の安藤朱音さん

医工計測技術分野における技術開発や技術交流等の促進と人材の育成を目的に幅広い助成事業を展開している公益財団法人 中谷医工計測技術振興財団(以下、中谷財団)は、2023年度中谷賞大賞受賞者オンラインセミナー「一分子でわかるからだの不思議」~理系人材の育成環境とBME分野研究で広がる未来~を3月28日に実施した。セミナーでは、第16回中谷賞大賞を受賞した、理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞極性統御研究チーム チームリーダーの岡田康志氏が先生を務め、科学の好きな高校生3名が岡田氏の研究内容について学びながら、研究に関する悩み事やこれからの進路・キャリアなどを相談した他、BME(Bio Medical Engineering:生体医工学)分野研究によって広がる未来について意見を交わした。

中谷財団では、医工計測技術分野における技術開発の飛躍的な発展を期し、中谷賞(大賞・奨励賞)を設けて、優れた業績をあげている研究者または独創的な研究をしている研究者を表彰している。また、2014年度以降は、若手の人材育成のため、小中高校生を対象とした科学教育振興を始め、大学生の留学のサポートや大学院生向け奨学金などの助成事業などを実施している。2023年度の賞金、助成金、支援金、奨学金などの総額は、7億8790万4000円となり、医工計測技術の発展を担う幅広い層へのサポートを実現している。

トークセッションの様子

そして今回、第16回中谷賞大賞を受賞した、理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞極性統御研究チーム チームリーダーの岡田康志氏を先生に迎え、科学の好きな高校生代表として、浅野学園浅野中学高等学校の工藤良史さん、兵庫県立小野高等学校の植田彩花さん、東京都立科学技術高等学校の安藤朱音さんが参加したトークセッション形式のセミナーを開催した。

岡田氏は、独自の手法で世界最高速の超解像蛍光顕微鏡を実現し、これまで見ることができなかったウイルスや細胞内小器官など、微細構造の動態を生細胞中で観察することを可能にした。この手法は国内外主要メーカーから販売され、世界中で広く使用されているという。さらに、新規超耐光性蛍光色素や蛍光タンパク質の開発など、超解像蛍光顕微鏡の医学生物学応用を進め、細胞状態の一細胞解析への応用という新分野も開拓している。

理化学研究所 生命機能科学研究センター 細胞極性統御研究チーム チームリーダーの岡田康志氏

高校生とのトークセッションで岡田氏は、光学顕微鏡、電子顕微鏡、そして超解像蛍光顕微鏡で見た細胞の画像を比較し、細胞のどの部分を見ているのかをクイズ形式で説明しながら、超解像蛍光顕微鏡の特徴を紹介。「この超解像蛍光顕微鏡を用いて細胞の中で分子がどう動いているのかを観察する新しい研究分野を立ち上げた。さらに、そこに最新の物理学を取り入れることで、生きている細胞の中にある細胞質の不思議な世界を解き明かそうとしている」と、最先端の研究内容を高校生の視点で解説してくれた。科学好きの高校生たちも、この研究内容に興味津々の様子で、岡田氏に様々な質問を投げかけていた。また、現在取り組んでいる研究での悩み事や、これからの進路・キャリアなどについても相談し、岡田氏からのアドバイスに熱心に耳を傾けていた。

生命科学研究の解明によって将来実現することについて、岡田氏は、「この20年で、1つの分子を解析することで生体内分子を網羅的に解析可能になるオミクス技術が急速に発展してきた。一方で、今の人類の脳では、その膨大すぎるデータを理解しきれずにいた。しかし、ここ1年でAIが猛烈なスピードで賢くなり、最近登場した大規模言語モデルは、人類の脳を超えつつある。実際に超多次元データを丸ごとAIが解析することで、例えば病気の診断や新たな治療法に向けた研究が世界的に進められており、数年後にはその成果が出てくると期待している。そして、こうした時代にこそ研究者は、人間ならではの好奇心を発揮し、AIをツールとしてうまく使いこなしていくことが重要になる」との考えを示した。

浅野学園浅野中学高等学校の工藤良史さん

今回のトークセッションに参加した感想を聞くと、浅野学園浅野中学高等学校の工藤さんは、「僕は中学時代から同じテーマで研究を続けているが、ずっと同じ視点だと、多角的にものが見られなくなると感じた。これからは、いろいろな分野を取り入れて、研究に生かしていきたい」とコメント。

兵庫県立小野高等学校の植田彩花さん

兵庫県立小野高等学校の植田さんは、「研究者は楽しむことが大切だと感じた。いろいろなことがあって余裕がなくなってしまったときにも、いったんすべて忘れて、自分が純粋にやりたいことを突き詰めて人生を楽しんでいきたいと思う」と意欲を語った。

東京都立科学技術高等学校の安藤朱音さん

東京都立科学技術高等学校の安藤さんは、「今の時代は選択肢がたくさんあって、何をやりたいのか悩んでしまうこともある。このトークセッションを通じて、私もポジティブな考え方をして、楽しく生きていきたいと感じた」と、楽しむことを忘れずに研究者を目指していくと笑顔を見せていた。

最後に岡田氏は、「研究というものは、人間が根源的に楽しいと思える活動の一つだと思っている。研究によって知的好奇心を満たすことを楽しいと思える人は、その素直な心を、そのまま伸ばしていってほしい。何かのためではなく、自分の心の欲求に従って、面白いと思うことを突き詰めていく。その活動の一環として研究に取り組んでいってほしい」と、次世代の研究者たちにエールを送ってくれた。

中谷医工計測技術振興財団=https://www.nakatani-foundation.jp/


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