- Study&Work2026/03/19 20:27
三菱電機と燈、AI領域のさらなる強化に向けた協業戦略を発表、「フィジカルAI」で製造現場の自動化を推進

三菱電機とAIスタートアップの燈(あかり)は3月17日、「三菱電機・燈 協業に関する戦略発表会」を開催した。両社は今年1月に協業契約を締結しており、発表会では「Physical AI(フィジカルAI)」を活用した事業連携構想やここまでの成果、そして今後の展望が語られた。

三菱電機 代表執行役 執行役社長CEOの漆間啓氏は、同社が推進する「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革において、まずデータ収集基盤「Serendie(セレンディ)」の展開や、OT(Operational Technology)領域のセキュリティを担うNozomi Networksの買収など、着実に布石を打ってきたこれまでの流れをプレゼンした。
今回の燈への出資は、AI領域のさらなる強化が狙いとなる。建設業界から始まり、黒字経営を続ける燈の躍進と健全な財政実績、加えて「爆速」をはじめとする同社の行動指針に共鳴したことが提携の決め手となったという。今後、三菱電機の持つ多種多様な制御機器や現場の知見と、燈のAI技術を掛け合わせ、これまでデータ化が困難とされる領域であった制御機器の自律制御や現場の暗黙知をデジタル化する「フィジカルAI」の構築を目指す。漆間社長は開発スピードを重視し、PoCを経て約6ヵ月以内の実用化・事業化を目標に掲げた。

東京大学発のAIスタートアップとして知られる燈 代表取締役社長兼CEOの野呂侑希氏は、2021年に21歳の学生起業家として同社を創業した後、わずか5年間で従業員数約420名規模へと成長を遂げた組織について語った。同社は最先端テクノロジーで日本の産業基盤を支えることを使命としており、建設業のDX推進で躍進を遂げると、現在フェイズ2として、ものづくり産業全体のDXへと事業領域を拡大している。従業員は実に約半数がエンジニア職だという。
燈の技術的な強みは、100種類以上に及ぶ独自のAIモジュール群と、データ化されていなかった現場の情報を「デジタルツイン」として仮想空間上に再現する能力にある。彼らには仮想空間内でシミュレーションとAIの訓練を行い、そこで最適化されたアルゴリズムを再び現場の実機(ロボットや機器)へ搭載するというサイクルを高速かつ高精度に回すことができる。
野呂氏は、「質の高い日本の製造現場に残る『匠のデータ』とAIを融合させるフィジカルAIの領域であれば、競争の激しいグローバル市場でも十分に勝機がある」と強調し、大企業である三菱電機との間にも温度差やタイムラグを感じることなく、爆速で協業が進んでいるとした。

三菱電機 専務執行役CDO CIOの武田聡氏は、フィジカルAIの具体的な実装戦略について解説した。現場の膨大なOTデータをすべてクラウドに上げて処理することは、コストや通信速度の面で非現実的であるとし、エッジ側(現場機器)でAIが自律的かつ分散的に制御・学習を行うアーキテクチャが不可欠であると指摘した。
すでに両社の共同プロジェクトは始動しており、工場内のライン間物流(AMR=Autonomous Mobile Robot:自動搬送車両)の最適化において成果を挙げている。燈の技術を用いてサイバー空間上に工場環境や生産状況を再現し、エレベーターとの連動で複数フロアにまたがって稼働するAMRの動線をシミュレートした結果をもとにした燈のAIの提案によって、稼働率が5割改善したという実証データが得られた。三菱電機は今後、製造現場にとどまらず、ビルや電力、社会インフラなど様々な領域へフィジカルAIの適用を拡大していく方針である。

発表会後に行われた質疑応答では、今後の事業化や他社との差別化についてより具体的な見解が示された。今回の協業の目指す事業化は、単なるパッケージ販売ではなく、現場のプロセス改善までを両社で伴走支援する形態を想定している。
野呂氏は、米大手のNVIDIA(エヌビディア)ら競合他社との差別化については、計算能力やシミュレーション環境の提供に注力するグローバル企業に対し、現場のデータを素早く実機に反映させる「ラストワンマイルの作り込み」を強みとする方針とする。また、課題となる熟練工の「暗黙知」のデータ化は、生成AIの活用や、燈が誇るエンジニアたちによる現場での直接的な情報収集などを組み合わせて進めていく。
また、燈と三菱電機の関係を(資金調達を受けた)燈側が単なる開発委託企業としていわれたことをただやるのではなく、両者の掛け合わせによる強みの模索によって、能動的に新規ビジネスを提案するなど、お互いの持つ力を最大限発揮して、相乗効果を出すパートナーシップとしての関係を標榜していると明言して、質疑応答を締めくくった。

三菱電機=https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/
燈=https://akariinc.co.jp/
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