- Home&Living2025/12/17 21:15
パナソニック エナジー、苦み成分塗布コイン形リチウム電池の体験取材会、子どもの誤飲の危険性や誤飲抑制の重要性など解説

パナソニック エナジーは、国内メーカーとして初めて(8月20日時点、同社調べ)苦み成分(安息香酸デナトニウム)を電池本体に塗布したコイン形リチウム電池を10月から発売している。12月12日に行われた「苦み成分塗布 コイン形リチウム電池」体験取材会では、子どもの誤飲事故の危険性について、松下記念病院 小児科部長の磯田賢一先生が解説した他、パナソニック エナジーが実施する誤飲抑制の取り組みや、苦み成分を塗布した新製品の開発経緯、技術的なポイントなどを紹介した。

「当社エナジーデバイス事業部では、『くらしの幸せをつくり、環境との調和をつくる。』をミッションに掲げ、製品を通じて安全・安心な暮らしを支えることを使命として事業活動に取り組んでいる。この想いは、乾電池『エボルタNEO』のコミュニケーションメッセージ『笑顔、つづく。』にも込められている」と、パナソニック エナジー 国内マーケティング部の福山統之氏が挨拶。「近年、スマートデバイスなど小型電子機器の普及拡大にともない、コイン型リチウム電池の用途は急速に広がっている。一方で、家庭内での使用頻度も増え、乳幼児による誤飲事故という深刻な社会課題が顕在化している。東京消防庁の調査によると、東京都内で2020年から2024年までの5年間、5歳以下の子ども5825人が誤飲や窒息などで救急搬送され、そのうち約200件は電池が関係していた」と、コイン型電池の誤飲事故が社会問題化しつつあると指摘する。「こうした現状を踏まえ、当社では、従来の誤飲対策パッケージに加えて、国内メーカーとしては初めて電池本体に苦み成分を塗布するという新しい対策を導入した。この取り組みは、単なる製品改良ではなく、誤飲という社会課題に正面から向き合う当社の姿勢を示すものとなる」と、子どもの安全・安心を最優先に考え、さらなる製品改良を実施したのだと強調した。

続いて、同社 製品企画担当の畑聖子氏が、子どもの誤飲事故の現状について説明した。「子どもの誤飲事故は、たばこや医薬品、洗剤、玩具、電池などが主な原因となって発生しており、薬局などのポスターで注意が呼びかけられている。当社が未就学児の保護者を対象に実施した『家庭内事故に関する調査』でも、子どもが誤飲する可能性があるものとして『おもちゃの小さな部品』『ビー玉やスーパーボールなどの丸い物』『ボタン電池・コイン型電池』が上位に挙がっていた」とのこと。「実際に、国内では1歳の子どもがボタン電池3個を飲み込んでしまった事故が報告されている。また、海外でも子どもの誤飲事故に関するニュースが多数報道されており、国内外で誤飲防止に向けた取り組みが急務になっている」と、誤飲事故から子どもを守ることの重要性を訴えた。

そして、松下記念病院 小児科部長の磯田先生が、子どもが電池を誤飲することの危険性について解説した。「現在、おもちゃやリモコン、キッチンタイマー、体温計など、身近な製品にコイン型リチウム電池が使用されている。万が一、子どもが飲み込んで、食道などにとどまると、粘膜に電池の化学反応による腐食性炎症が起こる。この“化学やけど”は、2時間後から危険な粘膜損傷が始まり、電池が同じ場所で固定されていると重篤な合併症を引き起こす可能性がある」と、電池の誤飲事故は重大な健康被害につながるリスクがあるという。「誤飲事故の相談を受けた小児科の医師にとっては、一刻を争う判断を迫られる。専門家チームを緊急招集し、内視鏡手術で摘出するのか、今いるメンバーで磁石付きチューブを使って摘出するのか、別の病院に搬送するのか、時間とリソースを考えて最適な判断をする必要がある」と、小児科医の立場から誤飲事故への対処の難しさを語った。
「もし、子どもが電池を飲み込んでしまった場合には、ためらわずに医療機関または119番にすぐ電話してほしい。また、その際には『吐かせない』『飲ませない』『様子を見ない』の3つの『しない』を徹底してほしい。そして、飲み込んだ電池と同じ商品またはパッケージと、電池が入っていた製品を医療機関に持ってきてもらうと、電池の種類や大きさがわかり、レントゲンの位置確認や治療手段に役立てることができる」と、保護者ができる緊急対処法をアドバイス。「誤飲事故を起こさないためには、普段から電池製品をしっかり管理し、子どもの前で電池交換をしないことや、家族で統一ルールを作り適宜アップデートすることなどが大切になる。さらに、『先回りしたリスク予測』に基づく安全対策の一つとして、苦み成分を塗布した新しい製品をはじめとした技術革新や家庭への継続的な啓発活動によって、誤飲事故のない社会が実現することを願っている」と、苦み成分を塗布したコイン型リチウム電池への期待を述べた。

再び、パナソニック エナジーの畑氏が登壇し、子どもの誤飲抑制に関わる取り組みについて紹介した。「電池業界では、2019年から誤飲事故撲滅に向けた対策品を市場に導入。パッケージと電池本体に『誤飲ピクトグラム』を搭載すると共に、子どもの手では開けられない大人がハサミで開封する『誤飲対策パッケージ』を採用している。一方で、電池本体への対策は難易度が高く開発が進まず、誤飲事故は依然としてなくならない状況が続いていた」と、業界全体で誤飲防止パッケージを展開していたものの、大きな成果は得られなかったという。「こうした中、私自身が子育てをしている当事者であり、誤飲事故を解決できる立場にいることから、この問題に正面から向き合うことを決意。子どもが電池を手に取ったとしても、苦み成分で飲み込むことを抑制できる新しい製品を考案した。商品化にあたっては、企画書から起案し、社内各部門での協議、事業判断の検証、経営層へのプレゼンを経て、開発決定まで辿り着いた」と、苦み成分を塗布した新製品を開発するに至る経緯を説明した。

製品開発における技術的なポイントについて、同社 製品技術担当の古橋卓弥氏が解説した。「コイン型リチウム電池の第一の役割は、リモコンなどの機器に電気を供給して正常に動かすことにある。そこで、電池としての機能を失わずに誤飲抑制効果を付与するため、最適な苦み成分量と塗布配置を検討。可能な限り多くの機器を集め、それぞれの機器の端子位置を調査し、通電不良が生じにくい塗布配置を決定した」と、苦み成分を塗布する最適な配置を徹底的に追求したと明かす。

「苦み成分量については、乳幼児に苦み成分を舐めてもらう官能試験を実施。安全を第一に考えながら、できるだけ実際の状況に近い試験を行い、誤飲抑制に効果的な成分量を検証していった。この結果、電池本体の負極面に苦み成分『安息香酸デナトニウム』を塗布することで、誤飲しかけた際にも吐き出すことを促す誤飲対策を実現した」と、多くの検証と工夫を重ねて、子どもの誤飲を抑制する新たなコイン型リチウム電池が完成したと目を細めていた。

取材会では、製品に塗布されている「安息香酸デナトニウム」の苦みを実際に体験。スプーンに塗布された「安息香酸デナトニウム」を少し舐めただけでも、強い苦みが長く続き、特に子どもであれば我慢できず、すぐに電池を吐き出すことが実感できた。また、あわせて誤飲対策パッケージの開封も体験した。いくら力を入れても手ではパッケージを開けることができず、指定された場所をハサミで3ヵ所切ることで電池を取り出すことができた。

苦み成分を塗布したコイン形リチウム電池のラインアップは、「CR2032E」「CR2025E」「CR2016E」の計3品種。「CR2032E」には2個入り商品も用意している。また、今回の新製品は、家庭でストックする際にも、安心して保存できるよう設計改良を行い、製品の使用推奨期限を従来の5年から10年に延長している。来年4月からは、国内に加え、全世界36ヵ国以上で順次販売開始する予定。
[小売価格]
1個:363円
2個入り(CR2032E):726円
(すべて税別)
[発売中]
パナソニック エナジー=https://www.panasonic.com/jp/energy.html
















