- Hobby&Culture2025/06/24 19:46
タニタ、中高年の体力低下に関する意識・実態調査2025,健康寿命の延伸に不可欠な「運動機能」最も自信があるのは70代

健康総合企業のタニタは、「中高年の体力低下に関する意識・実態調査2025」を実施した。全国の40歳以上の男女1000人を対象に、4月3日から6日の4日間、インターネットリサーチによって行った。今回の調査では、体力(ここで表す体力とは「行動体力」のことで、運動以外に日々の活動を実行したり維持したりするために必要な身体能力。若年層においても生活習慣によっては体力が低下している場合が見られるため、早い段階から体力を気にかけ、維持・増進することが大切)の中でも日常生活で思うようにからだを動かすことができる機能を“運動機能”と提示して調査を実施した。自身の運動機能についての評価と実態について聞いた。その結果、高齢者が運動機能に自信を持っている傾向や40代という若い世代でも筋力が衰えている実態が分かった。この他、少子高齢化が進み労働力不足が深刻化する中で対策が必要となる「職場での転倒事故」についても聞いたところ、半分以上の職場で転倒防止のための取り組みが行われていないことが分かった。今回の調査結果を受け、生体情報を使った運動分析を研究している新潟大学の村山敏夫准教授は、「運動機能の維持は、生活の質に直結する。単なる健康の問題にとどまらず、私たちが社会の中で安心して生きていくための『社会基盤』として考えるべき」と呼びかけている。

「自分の運動機能にどのくらい自信があるか」という問いに対し、「自信がある」と答えた人は全体の45.1%で、運動機能に自信がないという人が5割半を占めた。年代別に見ると、「自信がある」と答えた人の割合は70代(55.0%)が一番高く、調査対象者で一番若く低い結果となった40代(38.0%)を17ポイント上回り、高齢者が運動機能に自信を持っている傾向が分かった。一方で「立ってズボンや靴下を履く際にバランスを崩すことがあるか」という問いでは、80代以上の6割以上が、70代の半数以上が「ある」と回答するなど、年齢に比例して高くなる結果になった。さらに、「自分の運動機能に自信がある」と答えた70代でも42.7%が「バランスを崩すことがある」と回答しており、自信とは相反して運動機能が低下している実態が浮き彫りになった。また40代でも4人に1人(24.5%)が「バランスを崩すことがある」と回答しており、年齢に関わらず日々の運動不足などによって筋力が低下している人がいる状況も分かった。脚の筋肉は、からだを支えたり、動かしたりする重要な運動器。ウオーキングや筋トレなど、運動を習慣化して筋力を維持することが日常生活を支える一助となりそうだ。

“フレイル”という言葉の認知度合いについても聞いた。“フレイル”とは、加齢に伴い心身の活力が低下するとともに、社会的なつながりが薄れている状態を指し、“健康な状態”と“要介護状態”の中間の段階といわれている。タニタが2022年に行った調査(「人生100年時代の健康とフレイルに関する調査2022」2022年調査では全国の40歳以上の男女(2500名)が対象)では認知率が41.9%だったが、今回は14.6ポイント高い56.5%となり、半数以上の人が認知している結果となった。年代別に見ると年齢が上がるにつれ認知率も高くなっており、40代(35.5%)と80代以上(70.5%)の間には35.0ポイントの差が見られた。また「自身がフレイルになることについてどのくらい心配か」という問いに対しては、「心配である」人が56.9%となり、2022年の調査(61.2%)を4.3ポイント下回る結果になった。フレイルの認知が上がったことで対策を講じる人が増え、自身がフレイルになる心配が軽減された人が増えたのかもしれない。

「運動機能が衰えるとマイナスの影響が出ると思う日常生活での行動」を複数回答で聞いたところ、「階段の昇り降り」(57.8%)と「歩行」(51.5%)が上位を占めた。次いで「起居動作(立ち上がる、座る、起き上がるなど)」(46.4%)、「入浴」(34.1%)と続き、5位に「車の運転」(31.7%)が入った。階段の昇り降りや歩くことなど、日常生活の身近な動作に影響が出ると思う人が多い一方で、認知機能が注目されがちな「車の運転」についても運動機能が関わると感じる人が多いようだ。

「運動機能維持のために心がけていることがある」と答えた人は88.5%となり、多くの人が運動機能の維持に努めていることが分かった。年代別に見ると60代以上ではどの年代も9割を超え、70代(95.0%)が最も高くなった。高齢者が積極的に運動をしていることが、前述の自分の運動機能への自信の高さにつながっている要因の一つかもしれない。また「運動機能維持のためにやりたいと思いながらもできていないことがある」と答えた人も7割に上った。運動機能維持につながる行動を心がけているものの、十分だと感じていない人が多いようだ。“できていないこと”としては、筋力トレーニングと答えた人が最も多く34.1%となり、次いでウオーキングとなった。

調査対象者の中で現在就業中の人に「職場で転倒したことがあるか」を聞いたところ、7人に1人が「ある」と答えた。仕事場所別に見ると、工場で仕事をしている人では5人に1人となり、工場などのからだを動かすことが多い場所での転倒事故が多いことが分かる。また約3人に1人が「職場で転倒した人がいるということを見聞きしたことがある」と答えている一方で「職場で転倒防止のための取り組みが行われているか」の問いに対しては、半数以上が「特になし」と回答している。今後は少子高齢化が進み、労働者も高齢化していく。職場での転倒事故などの労働災害も多くなると考えられるため、早急に対策を行う必要がありそうだ。
新潟大学・村山敏夫准教授は、「同調査では、自分の運動機能に『自信がある』と答えた高齢者が若い世代より多い傾向が分かった。高齢者の中には、過去の経験や自己認識に基づいて『自分は大丈夫』『若い頃から運動してきたから平気』といった自信を持っている人が少なくない。私が開催している『交通安全教室×健康教室』でも、自信と実際の身体機能との間にギャップがあるケースが多く見受けられる。例えば歩行時の反応時間や歩幅、バランス能力を測定する簡易的なテストを行った際に、横断歩道を渡り切るのに必要な時間が想定より長くかかるなど、実際の身体能力に課題が見られることがある。こうした体験を通じて、客観的に自分の身体機能を知ることが、リスクへの気づきと予防行動の動機づけにつながる」とコメントしている。
「車の運転は、単にアクセルやブレーキ、ハンドルを操作するだけではなく、身体的・認知的な総合能力が求められる複雑な作業となる。そのため、運動機能の低下が運転能力に一定の影響を及ぼす可能性は否定できない。特にとっさのブレーキ操作やハンドル操作には、筋力や反応速度が不可欠となる。もちろん、運動機能の低下だけが事故リスクを高めるわけではなく、認知機能や注意力の低下など複数の要因が関与している。しかし運動機能が十分であれば、たとえ予期しない事態が起きたとしても、瞬時の判断と身体の反応によって被害を最小限にとどめることが可能となる。したがって、車の運転を安全に継続するためにも、日頃から運動機能を維持・向上させることが重要だ」と指摘する。
「“運動機能”は、身体を意図した通りに動かすための能力を指し、主に筋力、柔軟性、バランス能力、敏捷(びんしょう)性、持久力、巧緻性などの身体的要素から構成される。これらの機能は、歩く、立ち上がる、物を持つといった日常生活動作を円滑に行う基盤となるものであり、生活の質に直結する。運動機能の維持は、単なる健康の問題にとどまらず、私たちが社会の中で安心して生きていくための『社会基盤』として考えるべき時代といえる」と話していた。