名古屋市立大学が国産初となる紫外線LED搭載の皮膚疾患向け紫外線治療器を開発、森田明理教授が開発背景や製品特徴など解説

 名古屋市立大学 医学部 加齢・環境皮膚科学の森田明理教授とウシオ電機は共同研究で、国産初となる、紫外線LED光源を搭載した難治性皮膚疾患に対する紫外線治療器「セラビーム UV308 mini LED」を開発。ウシオ電機が、10月19日から国内での販売を開始した。同日に行われた発表会では、森田教授が、皮膚疾患に対する紫外線治療機器の開発背景や、紫外線LED光源を搭載した新製品の概要などについて説明した。

 「名古屋市立大学は、世界に先駆けて光化学療法の実施・応用に取り組んできた歴史がある。その中で私は、太陽の光には、良い部分(波長)と良くない部分があるという仮説を立て、ライフワークとして光の良い部分(波長選択)を探索し、波長特性を応用した皮膚疾患向け紫外線療法を研究してきた。そして、2002年に、311nmを用いた半身/全身照射型ナローバンドUVB治療器の開発に成功した」と、森田教授は、紫外線治療機器開発の経緯について紹介。「2008年には308nmエキシマライトUVB治療器、2011年には312nm平面発光UVB治療器を開発、さらに2021年には340-400nmUVA1のLED化に成功し、上市してきた。特に、ウシオ電機と共同開発したランプ光源方式のエキシマライト光線療法機器『セラビームUV308』は、2008年の発売以来、皮膚の適用疾患に対する高い治療効果と安全性が認められ、現在では世界7ヵ国、約1200施設で使用されている」と、同大学発の紫外線治療機器が多くの医療施設で活用され、乾癬や白斑、掌蹠膿疱症、円形脱毛症などの難治性皮膚疾患に対しても十分な効果が得られているのだと力説した。

 「そうした中で今回、LED開発の急速な進展や環境規制の高まりを背景に、サステナブルな社会の実現に向け、308nmをピーク波長とする深紫外線LEDを用いた新たな紫外線治療器用光源『UVB-LED 光源システム』をウシオ電機と共同開発した。LEDは、旧来のランプに比べて波長の選択性、長寿性、低消費電力、水銀フリーといった利点がある」と、深紫外線LED光源を開発した背景を説明する。「波長特性の研究では、効果波長と紅斑作用波長を割ることで、皮膚が赤くならなく(なりにくく)治療効果が高くなる計算値を推定した結果、303nm、305nm、307nmにピークがあり、長波長側で紅斑作用が少ない波長を選ぶとすれば307nmとなる。しかし308nmは、乾癬治療に理想的な光線治療であり、安全性と有効性を得るための最適波長の検討を細胞レベルでも行い、308nmを選択した」と、紫外線ピーク波長に308nmを選んだ理由について言及した。

 「さらに、安全性を高めるべく短波長側の不要な光のカットの検討を行い、短波長側の光の量が少なくなるようなLEDを選択し、効果を維持したまま、副作用(DNA障害)を抑制できることがわかった」と、短波長側を狭帯化することで、既存のエキシマライトUVB治療器と同様の治療効果が見込まれるという。「一方で、深紫外線LEDは、動作環境によって光の性質が左右されやすく、また波長特性が素子個々でばらつくため、安定した光を必要とする紫外線治療器には不向きという課題もあった。これに対し、今回の『UVB-LED 光源システム』では、ウシオ電機と共同開発した制御技術により、高出力かつ安定した適切な光照射を実現した」と、ウシオ電機の優れた制御技術によって、ランプ光源方式からLED光源方式への切り替えに成功したと述べていた。

 「この『UVB-LED 光源システム』を搭載した、難治性皮膚疾患向け紫外線治療器『セラビーム UV308 mini LED』は、高出力LEDの安定した光照射によって、照射時間を従来の1/4に短縮することが可能となった。また、従来のエキシマライトUVB治療器と比較して消費電力量を約70%削減できると共に、光源の寿命は約4~5倍に延ばすことができる。さらに、耐用期間の6年間は保守不要になる」とのこと。「軽量・小型化を実現している点も大きな特徴で、ハンドピースの重量は370gと従来の約1/3になった。また、本体部設置スペースは、A4サイズ以下と省スペース化を図っている。そして、開発から製造、販売、アフターサービスまで国内で一貫して提供する」と、新たな紫外線治療器「セラビーム UV308 mini LED」の製品特徴をアピールした。

 最後に、今後の展望について森田教授は、「病院に通うことが難しい患者から、『セラビーム UV308 mini LED』を在宅医療で使えるようにしてほしいという要望が寄せられていた。こうしたニーズに応えるべく、製品を改良し、今年3月に在宅光線療法の承認を厚生労働省から取得した。今後は在宅医療への展開も目指していく。また現在、がん治療への適用に向けた研究を進めている他、将来的にはフォトフォレーシス(体外循環式光化学療法)への応用にも取り組んでいく」と、紫外線治療器のさらなる進展と適用領域の拡大に意欲を見せた。

名古屋市立大学=https://www.nagoya-cu.ac.jp/


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