日本コクレア、難聴と認知症の関連性や人工内耳など難聴に関する最新知見を紹介、難聴者の治療実態の調査結果も発表

左から:愛知医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頚部外科の内田育恵先生、タレント・俳優の東ちづるさん、日本コクレア 進行役員社長 上中茂弘氏

日本コクレアは、3月1日に、3月3日の“耳の日”に向けた難聴に関する最新知見を紹介するセミナーを開催した。セミナーでは、難聴と認知症に関する講演および人工内耳に関する説明を行った。また、難聴に関する最新の調査についても発表した。

日本コクレア 進行役員社長 上中茂弘氏

「日本は超高齢社会に突入し、難聴者は1250万人(Japan Trak 2022(日本補聴器工業会)データを用いた推計)と今後も増加するとみられる。そこで、難聴者の治療に関する意識や状況を明らかにすることを目的に、日本ウェルリビング推進機構は、難聴を自覚する全国の20歳~69歳の男女618名を対象に1月31日~2月2日の期間、難聴に関するインターネット調査を実施した」と、日本コクレア 進行役員社長 上中茂弘氏がセミナーに先駆けてアンケート調査の概要を紹介。「難聴に関連して病院を受診したことがある人は66.2%だったものの、60代では59.2%と約41%が未受診であることがわかった。また、難聴の治療をしている人は60.2%だった。これを年代別にみると、60代は53.6%と各年代で最も低い治療率であることも明らかとなった」と高齢者層の未受診、未治療の比率が高いと説明する。「60代の66%が補聴器外来を知らないと回答しており、補聴器外来を受診したことがある60代は7%と低く、約72%が自身の難聴の程度を知らないことがわかった」と、補聴器外来の受診率の低さに加えて、聴力検査を受けている割合も低いことが明らかとなった。

「補聴器の装用率は、難聴の受診の有無で大きな違いがあり、未受診者の補聴器装用率はわずか1%だった」と、補聴器外来を受診経験がない人は補聴器を装用しないことがうかがえる。「高齢者の難聴の治療法として人工内耳があることを知っている人は11%で、50代、60代は他の年代に比べて認知率が低かった」と、難聴の治療法を知っている人はさらに少数派なのだと指摘する。「補聴器外来の受診歴のある人は、受診歴のない人に比べて人工内耳の認知率は2倍以上高かった」と、補聴器外来を受診することが難聴の治療法を知るきっかけになっていることが明らかとなった。「今回の調査結果から、難聴と難聴が与える影響に関する認知向上が必要で、難聴治療の専門である補聴器外来の認知向上も必要となる。そして、高齢者の難聴の治療法である人工内耳の認知向上も必要であることもわかった」と、難聴や補聴器外来の受診率を改善していくことが急務であるとまとめていた。

愛知医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頚部外科の内田育恵先生

次に、愛知医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頚部外科の内田育恵先生が「難聴と認知症」と題したセミナーを行った。「我が国は2025年に国民の3人に1人が65歳以上、ほぼ5人に1人が75歳以上になる。そして65歳以上の高齢者のうち認知症患者数が約700万人とされ、推計で高齢者の約5人に1人が認知症を発症していることになる。認知症は介護が必要になった原因の第一位となっている」と認知症患者が今後増えていくと警鐘を鳴らす。「難聴は、認知症に関して修正可能な12のリスク要因のうち、最も影響の大きな要因となっている」と、低教育や喫煙、うつ、社会的孤立よりも難聴の方が認知症のリスクが高いとされている。「高齢になるほど難聴は増えており、60代男性の2人に1人、60代女性の3人に1人は何らかの難聴を抱えている。高齢になり難聴になっても健やかに暮らすには、言語力を大切にして、信頼関係や結びつきを大切にすること」と説明する。

「加齢によって認知機能の様々な側面がすべて一様に低下するわけではなく、結晶性知能である言語能力は60代にピークを迎えるが、その後の低下は80代の前半まで非常に穏やかとなっている。しかし、言語能力“知識”は認知領域のうち、高齢になっても維持されやすい領域であるが、難聴があるとその特徴は失われる」と言語能力の維持と難聴は密接な関係にあると説く。「言語能力“知識”は難聴があると低下したが、補聴器の使用で低下が抑制された」と、難聴であっても補聴器を使用することで言語能力の維持は可能であると力説する。

「認知症を防ぐには社会的な孤立を避けることも必要とされる。国も孤立対策担当大臣を発足し、今年4月1日には孤独・孤立対策推進法が施行される」と国を挙げて取り組む社会問題としている。「難聴はコミュニケーション障害を引き起こし、社会活動を減らしてしまう傾向にある」と、聞こえを良くして社会的孤立を回避しようとする考えは少ないのだと訴える。「米国の調査によると、難聴者の死亡率は難聴のない群を1とすると1.40と死亡率が高くなっている。ただし、難聴者のうち補聴器を使ったことがない群を1とすると補聴器を日常的に使用している群の死亡率は0.76と補聴器の使用有無で死亡率に差が出ることがわかった」と、聞こえにくさを放っておくことは危険なのだと声を大にする。

「年齢とともに聞こえにくくなったときは、耳鼻咽喉科を受診し、補聴器を選択する際は、補聴器相談医に相談。補聴器を利用した後も定期的な診察を受けて、適正な聴こえの管理と維持が必要となる。補聴器の装用効果がなくなったとしても人工内耳という治療もあるのであきらめないでほしい」と聴こえにくくなったときのポイントについて語る。「人工内耳は、耳に体内装置インプラントと体外装置サウンドプロセッサを取り付けることで聞き取りやすくする装置。人工内耳の国内の手術件数は年間1000例以上で、10年間で2倍以上に増加している。人工内耳手術は年齢を理由に適応が外れてしまうことはない」と高齢だから手術ができないということはないと説明する。「心身の脆弱性が高まる高齢期、社会的交流が減少し、認知機能低下をはじめ自身の心身に好ましくない影響が出ていても気付かない場合がある。健康長寿を目指し、聞こえにくさには早めから対策をとってほしい」とアドバイスしていた。

左から:愛知医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頚部外科の内田育恵先生、タレント・俳優の東ちづるさん

この後、内田先生とタレントで俳優の東ちづるさんによるトークセッションが行われた。まず、難聴の対処の必要性について内田先生は、「難聴は急になるものではなく、毎日徐々に聞こえにくくなる。聞こえにくくなることによって社会的な行動範囲を狭めてしまう」と説明する。東さんは、「亡くなった父を介護していた時、父は聞こえにくくなったということを認めたくないようだった」と聞こえないことを積極的にアピールする人は少ないのではないかと話す。

聞こえチェック

「その場合は、補聴器工業会のホームページ等にも紹介されている“聞こえチェック”をしてみてほしい。1つから2つ当てはまる人は、実生活で困ることがあるようだったら、耳鼻咽喉科を受診してみてほしい。3つから4つ当てはまる人は耳鼻咽喉科で相談してみてほしい。5つ以上当てはまる人は、早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしてほしい」と、どのタイミングで耳鼻咽喉科を受診すればよいかを教えてくれた。

タレント・俳優の東ちづるさん

東さんは、「周りの人も聞こえにくくなっていることを察した場合は、耳鼻咽喉科を受診してみるように促してあげることも大切だと思う」と周りの助けも重要なのではないかと語っていた。「聞こえをよくする対処法として、補聴器を使用することも手段の一つといえる」と内田先生。

愛知医科大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頚部外科の内田育恵先生

「補聴器をつけているとピーという音がして使用をやめてしまう人もいる」と補聴器に良いイメージを持っていない人もいると説明する。「耳鼻咽喉科には補聴器相談員がいる。補聴器相談員に相談するとどのくらいのパワーが必要か、などアドバイスを得ることができる」と、補聴器に関するスペシャリストに相談して自分にあったものを選べは使用をやめてしまう人も減ると話す。東さんは、「難聴は治療できる病気であるという認識を持ってほしい」と、聞こえづらくなっても、聞こえるようになるための治療を受けてほしいと呼びかけていた。

日本コクレア=https://www.cochlear.com/jp/ja/home


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