ライオン、出産を経験した女性に妊娠中の口の状態の変化など調査、口の中に不具合が発生してもその変化に気づいていない

ライオンは、「いい歯の日(11月8日)」を前に、出産を経験した女性を対象に妊娠中の口の状態の変化などについて調査を行った。その結果、口の中に不具合が発生していても、自分ではその変化に気づいていない人がいる可能性が示唆された。自分では気づけないリスクや疾患を知ることができる歯科健診だが、妊婦歯科健診の受診率は35.2%(厚生労働省 令和元年度地域保健・健康増進事業報告)にとどまっているのが現状だ。そこで、11月1日にオンラインでオーラルメディアセミナーを開催。妊娠中の口の中の変化やリスク、妊娠中こそ歯科健診を受けてもらいたい理由について、日本歯科大学附属病院マタニティ歯科外来の鈴木麻美先生に解説してもらった。また、プレママの歯科受診の実態と歯科健診のメリットについて、公益財団法人ライオン歯科衛生研究所の久保田好美氏に紹介してもらった。

論文によると、妊娠期に「歯肉炎」を発症している人の割合は約60%(久保ら、口腔衛生会誌,73:21-30,2023、歯肉出血のある者、歯周ポケットのある者の割合)とされているものの、ライオンが行った調査では、妊娠期の口の状態の変化について、約7割が「変化なし」と回答(ライオン調べ、過去1年以内に第1子を出産した20~44歳女性、n=106、2023)。妊娠期は口の状態が変化していても、多くのプレママは「口の変化」に気づいていない可能性がある。「胎児に影響するという不安」が解消されれば歯科健診を受けたいと思うか聞いたところ、72%が受けたい気持ちが高まった(受けたい気持ちが高まる、やや高まるの合計)と回答した(ライオン調べ、過去1年以内に第1子を出産した20~44歳女性、n=106、2023)。プレママの「胎児に影響するという不安」が解消されれば、歯科健診を受けてもらえる機会を作れる可能性があることが示唆された。

日本歯科大学附属病院 マタニティ歯科外来 鈴木麻美先生

この結果を受けて、日本歯科大学附属病院 マタニティ歯科外来 鈴木麻美先生に「妊娠期の口の中のリスクと歯科健診のメリット」について話してもらった。「妊娠期に起こる口の中の変化とリスクでは、ホルモンバランスの変化やつわりなどの全身への影響の他、口腔内においても、歯肉からの出血、唾液の減少・口の乾き、口腔内のネバネバ感・口臭などがあり、これが進行していくと、う蝕(虫歯)、歯肉炎・歯周炎、口内炎・口角びらん、智歯周囲炎などの発症が懸念される」と、口腔内リスクは妊娠期に高まるのだと指摘する。「これには、妊娠すると大きな喜びがある反面、精神的に不安定になりやすい。これによって、ホルモンバランスの変化がみられ、それにともなう全身の変化(血管拡張・透過性亢進・血液量の増加)や唾液の変化、口腔内細菌叢の変化が起こる。そして、口腔環境の悪化にともない、歯周病の悪化、妊娠関連歯肉炎の発症などにつながり、炎症物質などの産生によって、子宮の収縮や低体重児出産、早産といった最悪のケースに陥る場合もある」と、口腔環境の悪化は、胎児に大きな影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らす。

「妊娠関連歯肉炎では、歯肉の腫脹と易出血によって智歯周囲炎なども起こりやすい。妊娠性エプーリス(良性腫瘍)では、刺激によって大きくなる。痛みや出血など生活に支障が出る」と、妊娠期特有の口腔内の所見について解説。「妊婦は、歯科診療について診療自体がお腹の赤ちゃんに影響しないのか心配している。そこで、歯科医院は産科と医療連携をすることで、歯科治療の可否や、使用できる薬剤を確認している。具体的には、妊娠前期(~15週)では応急処置のみ。妊娠中期(16~28週/安定期)では歯科治療可能。妊娠後期(29週~)では体調に合わせた歯科治療を行うようにしている」と、歯科診療時の対処法について言及してくれた。「診療途中に具合が悪くなったら、お腹が張るとき、お腹が大きくなってきたときには、膝を立てて、上を向いて横になったり、少し左を向くなどして治療している」とのこと。「また、出産までに治療が終わらなかったり、授乳中の治療に使う歯科麻酔や飲み薬が必要な場合は、出産予定日から治療計画を立てて、赤ちゃんに影響のない薬剤を使用するようにしている」と、治療計画に基づいて診療していくと述べていた。

「妊婦はエックス線撮影に不安を持っている。しかし、必ず防護するので妊娠初期でもほとんど問題はない。また、診断・治療に必要な撮影は、妊婦の気持ちを考え必要最小限にとどめている」と、歯科治療において、エックス線写真から得られる情報は重要なため、妊婦に理解してもらいながら撮影しているとのこと。「また、歯科治療時に疼痛をともなうと診断したときに局所麻酔を使用するが、使用しないで痛みを我慢するストレスの方が血圧の上昇や子宮の収縮などにつながる。そのため、産科と連携し、産科医に歯科治療の可否や使用できる薬剤の確認を行うようにしている。さらに必要最小限の使用にとどめ、アレルギーなども考慮して薬剤を選択する」と、局所麻酔薬は、妊娠全周期に使用可能であるものの、局所麻酔の際の配慮として、“痛みの少ないやさしい麻酔”で対処するようにしていると教えてくれた。「飲み薬は、疼痛や炎症が発症すると予想された際に、治療上の有益性が高いと判断されたときに最小限の使用としている」と、産科と連携しながら処方していると述べていた。

「妊娠前から健診を受けていれば、妊娠中に治療は必要なかった可能性があるため、歯科健診やかかりつけ医が必要と思われる」と、鈴木先生は指摘する。「普段からの定期的な歯科健診としては、就職や結婚などライフイベントのタイミングをおすすめしている。妊娠前からの定期的な歯科健診は、全身の健康へもつながり、非常に重要」と、マイナス1歳からの口腔ケアを心がけてほしいという。「妊娠期間の歯科健診では、口腔内の疾患の早期対応につながり、重症化を避けることができる。また、生まれてくる赤ちゃんの口腔内のことを質問できる(歯の萌出時期、栄養、う蝕予防、歯磨きの方法など)点から、積極的に受診してほしい」と、かかりつけ歯科医院を持つことはとても大切なことだと訴えた。

ライオン歯科衛生研究所 歯科衛生士 久保田好美氏

次に、プレママの歯科受診の実態と歯科健診のメリットと題し、ライオン歯科衛生研究所 歯科衛生士 久保田好美氏が講演を行った。「厚生労働省令和元年度地域保健・健康増進報告では、歯科受診率は約35%と低い。こうした中、当社が行った妊婦歯科健診受診後の満足度調査では、約70%が満足と回答した。一方で、妊婦歯科健診の未受診について、『つわりで体調が悪かった』が33%、『普段から治療以外で歯科医院に行く習慣がないから』が28%、『むし歯などの不具合がないから』が26%と上位を占めた」と、妊婦歯科健診の課題も見えてきたという。

「妊娠すると女性ホルモンの影響で歯周病菌が増加し、リスクが高まる。しかし、特に歯周病は痛みがなく進行するため、自覚しにくい。つわりによる歯みがき時間の短縮、回数の減少、食べづわり、吐きづわりにより口腔内が不衛生になりやすい」と、妊娠期は口腔リスクが高まりやすいのだと指摘する。「妊婦歯科健診を受診することで、妊娠中の体調を含む、自分に合ったセルフケア方法のアドバイスを受けることができる。むし歯菌などを生まれてくる子どもに移さず、歯の健康を守ることにつながる。口の中のリスクがわかり、トラブルが起きる前に予防ができる。経過観察できる疾患がわかり、適切な対応(処置)で重症化を予防できる、といったメリットがある」と、妊婦歯科健診を受診してほしいと訴える。「歯科健診の受診時には、問診で妊娠中ということを伝えてほしい。検査では、チェアーを倒しすぎない等負担の少ない体制で実施する。結果では、母体を考慮した対応や時期の説明を行い、検査の結果に基づき、必要な対応(処置)を行う」と、妊娠期を考慮した処置やセルフケア指導を受けられるとのこと。「ただし、体調が落ちつく安定期(妊娠5ヵ月)になったら早めに受診する。妊娠前から歯科で予防処置を受ける習慣をつける。自覚症状がない場合もあるため、不具合がなくても歯科受診し確認してもらう」ようにしてほしいと訴えた。「また、出産後は自分時間が取りにくいため、妊娠中に歯科受診することが大切」と、妊娠期のほうが出産後よりもよいと話していた。

「当社の調査によると、妊娠期の歯みがきがつらかったと約40%が回答。妊娠期の口腔内の変化として、唾液の分泌量の低下、粘稠性が高まることから、自浄作用の低下がみられる。また、歯みがきが十分にできず、口腔内が不衛生になりやすい」と、妊娠期もしっかり歯みがきをしてほしいとのこと。「当社の調査では、妊娠期のセルフケアのコツを知っている人は少なかった。そこで妊娠期においては、無理せず体調の良い時間を選んで行う。また、ヘッドが小さい歯ブラシでみがくと嘔吐感を防ぐことができる。歯みがきができないときは、マウスウォッシュを活用するようにしてほしい。そして、ハミガキ剤は、刺激の少ないものを選ぶようにしてほしい」と、妊娠期のセルフケアについて教えてくれた。

「妊娠期は口腔リスクが高まりやすく、自分では気づきにくい。また、出産後は育児等で自分の時間が取りにくい。だからこそ、プレママが歯科受診をするようにしてほしい。歯科受診によって、妊娠中の予防処置やセルフケア指導を受けられるというメリットもある。さらに、生まれてくる子どもの歯の健康を守ることにもつながる」と、定期的な歯科健診を推奨していた。

ライオンの「システマ」ブランドでは、プレママの歯周病予防の実践拡大に向け製品サンプリングと情報発信を実施。産婦人科医院でのサンプリングでは、プレママ向け歯周病予防リーフレットと製品プレゼントキャンペーン(6000名/年)を行った。また、子育て系メディアへの記事広告も行っているという。さらに同社の「クリニカ」ブランドでも、プレママと乳幼児の予防歯科実践の拡大に向けて情報発信と製品サンプリングを実施。産婦人科医院サイネージで、予防歯科の重要性と実践のポイントをまとめたムービーを放映(355医院)しているという。この他に、媒体タイアップとして、予防歯科啓発冊子と製品プレゼントキャンペーン(1400名/年)も実施した。

ライオン=https://www.lion.co.jp/ja/


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