- Drink&Food2025/10/10 17:31
富士経済、パン・スイーツの国内市場の調査、2026年市場予測は量販店インストアベーカリーが2024年比5.0%増の2290億円

総合マーケティングビジネスの富士経済は、消費者のコスト意識の高まりから足下では低価格商品や値ごろ感のある商品の需要が高まり、今後は同一メニューやカテゴリー内に留まらない需要シフトが起こると予想されるパン・スイーツ市場を調査した。その結果を「パン&スイーツ市場の全貌・課題分析 2025」にまとめた。2026年市場予測(2024年比)では、量販店インストアベーカリーが2290億円(5.0%増)を見込む。ベーカリーを直営化して強化する量販店が増加し、差別化メニューの投入などを通じて商品単価も上昇し伸びが続くとみられる。チョコレート専門店は1001億円(8.5%増)を見込む。カジュアルギフトや自家需要の増加が市場拡大に貢献し、カカオ原料価格が高止まりする中、焼き菓子や半生菓子の開発が活発になる見通しだ。
この調査では、食パン、テーブルパン、総菜パン、菓子パン、チルドパンなどのパンと、チルド・ドライ洋菓子・和菓子、チョコレートなどのスイーツの国内市場をまとめるとともに、販売チャネルを量販店やCVSなどの流通、ベーカリーショップ、スイーツショップといったパン・スイーツの専門店、外食店に分類して分析した。
量販店内に出店するチェーンベーカリーを対象とする。市場はパン以外(ドリンクなど)の売上も含む。
2010年代後半は、流通パンとの競合や、量販店のベーカリー売場に対する位置付けが低かったことから微減が続いたが、2021年以降、外出自粛や在宅勤務による内食需要の高まりが市場を後押しした。その後も原料高騰に伴う価格改定で単価が上昇したことや、個人ベーカリーや外食店に対する価格優位性から伸びが続いている。
2024年は、低価格な流通パンへのシフトもあったものの、コストパフォーマンスの高い総菜パンを中心に需要が増加したことや、店舗数の増加により好調を維持した。量販店の新規出店や改装時にインストアベーカリーを併設する動きが活発化し、量販店サイドの注力度の高まりがうかがえる。
2025年も、店舗数の増加に加え、量販店がベーカリーをテナントから直営へ切り替えて他チェーンとの差別化を図る動きがみられ、エリア独自メニューや単価の高い付加価値商品の投入などで1店舗あたりの売上が増加し、市場は続伸するとみられる。また、コロナ禍でパンの袋売りが広がったが、裸売りに戻すことでオープンフレッシュベーカリーならではの焼きたて感、シズル感を訴求でき、需要喚起につながるとみられる。

チョコレート専門店は、チョコレート商品の販売が5割以上を占める洋菓子店を対象とし、百貨店の催事場も含む。
百貨店が主要なロケーションであるため、2020年は店舗の休業やギフト需要の低下に伴って市場は大きく縮小したが、その後は人流回復やバレンタインを中心とした自家需要の増加で回復に向かった。
2024年は、前年に引き続きバレンタインデーのカジュアルギフト需要や自家需要が旺盛であった。また、カカオ豆の高騰や為替の影響による価格改定で単価が上昇したことも市場の拡大要因となった。
2025年は、カカオ豆価格の高止まりや夏場の長期化による需要減退といった懸念がある中、参入各社は焼き菓子や半生菓子など、カカオ含有量が少ない商品の開発に注力している。原料高騰などによって価格改定の動きが続いていることは将来的に参入企業の注力度低下につながる可能性もあるが、市場は短期的には拡大し2026年に1000億円を上回ると予測される。

パン市場は、食パン、テーブルパン(ロールパンなど)、総菜パン、菓子パン、チルドパンで構成され、菓子パンと総菜パンで約70%を占める。また、チャネル軸では流通パン(量販店やCVS、ドラッグストアなどの棚に陳列されるパン)、ベーカリー(ベーカリーショップや量販店インストアベーカリー)、外食(ハンバーガーショップ、宅配ピザ、ドーナツショップなど)に大別される。
2024年の市場は前年比3.2%増となった。流通パンでは低価格なホワイト食パンやボリュームのある120円以下(税込)の単品菓子パンや総菜パンといった値ごろ感のある商品の需要が高かった。ベーカリーは個人店の減少が続いているが、量販店インストアベーカリーの出店が旺盛で、総菜パンや菓子パンのドーナツをはじめとするベーカリースイーツを中心に需要を獲得した。
2025年の市場は3兆3187億円と見込まれる。流通パンは価格改定に伴い価格訴求品の消費者ニーズが一層高まっており、割高感があるハーフサイズ(2枚・3枚入り)の食パンなどが苦戦しているものの、単価上昇により伸びを維持するとみられる。ベーカリーでは個人店の苦戦が続く一方、量販店インストアベーカリーは、参入企業の注力度が高く市場をけん引するとみられる。
菓子パンは、デニッシュやフィリング入りのパン(アンパンなど)の他、ドーナツやスイスロールなどのベーカリースイーツを含む。2021年以降、ドーナツの好調やお得感のあるマルチパック品のラインアップ拡充などで市場が活性化し、拡大が続いている。2023年にはドーナツショップの店舗数増などもあり市場は1兆円を突破した。
2024年も引き続き市場は拡大した。外食ではドーナツショップが上位企業を中心に実績を伸ばし、ハンバーガーショップではアイドルタイムの集客に向けてパイの新商品投入が活発であった。流通パンでは、価格優位性の高い120円以下の大ぶりな単品菓子パンの需要が高まった。
2025年は、年初に価格改定があり消費者の価格志向がより強まっている。こうした中で流通パンメーカーは、アッパー、ミドル、廉価の3軸での価格展開を進めており、低価格ニーズに応えるとともに、洋菓子と比較した際の価格優位性によって需要流入が期待され、市場拡大が続くとみられる。

チルド洋菓子(ケーキ、シュー・エクレアなど)とドライ和菓子(大福・団子、まんじゅうなど)で60%以上を占め、その他にバウムクーヘンなどのドライ洋菓子、チョコレートなどがある。販売チャネルではスイーツショップが約60%、流通スイーツが約35%を占める。
2024年の市場は、洋菓子、和菓子ともに前年を上回った。洋菓子では前年までの鶏卵不足が緩和され、流通スイーツの新商品投入が活発化した。また、大容量のロールケーキや小型ホールのタルト、低単価なシュークリームといった値ごろ感のある商品が好調であった。スイーツショップではケーキやシュー・エクレアで付加価値商品を投入しレギュラー商品とのラインアップで多様な顧客の獲得に繋げた。
2025年もスイーツショップの上位企業が店舗数を増やしており、市場は前年比微増が見込まれる。流通スイーツではチルド洋菓子で付加価値商品が、ドライ洋菓子では値ごろ感のある商品が需要を獲得し伸びを維持するとみられる。
和菓子は、コロナの影響により、市場は2020年に4000億円を下回ったが、その後は百貨店内店舗を中心に回復して2022年に4000億円台に戻し、拡大を続けている。2024年は、洋菓子と比較して値ごろ感があることから贈答需要が高まり、スイーツショップは観光地や行楽地の店舗を中心に安定した需要を獲得した。流通スイーツでは、ようかんが日持ちの点や栄養補給に効果的であるとしてSNSなどで話題となり、備蓄需要も獲得して売上増となった。
2025年も、スイーツショップでは手土産需要や自家需要が好調であるほか、流通スイーツは多くの品目で季節感を訴求したフレーバー展開や新商品が投入されており、市場の伸びが続くとみられる。
[調査方法]富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
[調査期間]5月~7月
[小売価格]
書籍版:25万3000円
書籍/PDF版セット:28万6000円
書籍/PDF+データ版セット(全体編):30万8000円
ネットワークパッケージ版:50万6000円
(すべて税込)
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