- Drink&Food2025/08/07 23:13
キリン、「プラズマ乳酸菌」が高温下での免疫細胞pDCの鈍化を抑制することを発表、熱中症と免疫ケアの関係性についても示唆

キリンホールディングスのヘルスサイエンス研究所は、キリンの独自素材「乳酸菌L.ラクティス プラズマ」(以下、プラズマ乳酸菌)を用いた高温条件下での細胞試験を実施し、プラズマ乳酸菌によって高温条件下における免疫細胞pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)の働きの鈍化(pDC活性化指標の低下)が抑制されることを新たに確認した。
一般的な乳酸菌は、NK細胞など一部の免疫細胞のみを活性化させるが、プラズマ乳酸菌は、これらの細胞の「免疫の司令塔」であるpDCを直接活性化することができるのが特長。活性化された司令塔の指示・命令によって、免疫細胞全体が活性化され、外敵に対する防御システムが機能するという。
「免疫の司令塔」であるpDCは、ウイルスや病原体から体を守る重要な免疫細胞の一種であり、pDCの活性を維持することは免疫細胞の活性化の点から非常に重要であることが知られている。なお、今回の試験結果は、細胞試験での結果を示したものであり、生体内の状態を示した試験ではないとのこと。

東海大学 医学部 総合診療学系 健康管理学領域 主任教授 医学博士の西崎泰弘氏は、「熱中症による死因は『多臓器不全』であることが多いが、熱中症予防には脱水回避とともに免疫のケアが重要であることが医学的に知られている。熱中症モデルによる解析によって、エンドトキシンと呼ばれる腸管内の毒素が、高体温や脱水からくる免疫の異常すなわち不活発化によって拡散され、『エンドトキセミア』と呼ばれる状態となって重症化に至ることがわかっている。気温が高い時、ヒトは汗をかいて表面温度を下げ、結果的に深部体温を下げる。しかし、エンドトキセミアによって惹起される『サイトカインストーム』は、身体の中から発熱するため直接的に深部体温を上げてしまう。最終的にエンドトキセミアは、全身性の炎症反応を引き起こし、多臓器不全に至ってしまうことになる。日頃からの免疫のケアと飲水が熱中症予防につながるので、ぜひ取り組んでほしい」と、高温状況下での免疫ケアと水分補給の重要性について訴えた。
また近年、日本では、気候変動による影響で夏の暑さが激甚化していることに加え、夏の期間が長期化し春と秋が短くなる「二季化」がますます進行しつつある。この状況について西崎氏は、「今年6月1日、日本では労働安全衛生法が一部改正され、職場における熱中症対策が罰則規定付きで義務化された。熱中症は、脱水と深部体温上昇がもたらす死に直結する病態で、昨年の5~9月は、過去最高の9万7578人が救急担送され、うち120人が死亡、2178人が3週間以上の入院を要した。今年も昨年並みの猛暑が予測されているのでしっかりした予防が必要になる」と、猛暑による熱中症のリスクがさらに高まっていると注意を呼び掛けた。

なお、今回発表された試験内容は、ヒト由来のpDCを通常温度(37度)、もしくは高温(38.5度)で培養し、H1N1(不活化インフルエンザウイルス)のみを添加する、もしくは、プラズマ乳酸菌とH1N1の両方を添加した細胞の48時間後のIFN-α産生量を測定。高温条件下においては、pDCの働きが低下するが、プラズマ乳酸菌を添加した細胞の場合は働きの鈍化が抑制される傾向が確認された。この結果は、プラズマ乳酸菌が高温条件下で低下するpDCの活性を維持する有効な手段のひとつとなることを示唆している。
キリングループでは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン 2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを目指している。その実現に向けて、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス事業」の育成を進めている。この一つとして、キリングループの35年の研究から生まれた「プラズマ乳酸菌」を使用した商品をグループ横断で展開し、「免疫ケア」をしながら生活する一人ひとりの健康を支援し、明るく健康で生き生きと過ごせる社会の実現を目指している。
キリンホールディングス=https://www.kirinholdings.com/jp/
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