- Drink&Food2025/07/10 21:24
富士経済、料飲店・喫茶などの国内外食市場の調査、2025年市場見込では串カツ・串揚げ専門店が2024年比13.0%増の1090億円に

総合マーケティングビジネスの富士経済は、メニュー施策や利用シーン開拓によるブランド価値向上と、DX化によるオペレーションや業務効率の改善によって、客単価上昇や客数増加を図る外食61業態の国内市場を調査した。その結果を「外食産業マーケティング便覧2025 No.2」にまとめた。トピックスとして、2025年市場見込(2024年比)では、串カツ・串揚げ専門店が1090億円(13.0%増)と予測する。大阪のご当地グルメとして認知され、大阪・関西万博開催を追い風に、前年以上に伸びるほか、2019年の規模を上回る。
この調査は、外食産業のうち、料飲店や喫茶といった飲料の提供を主とする飲食店、交通機関やレジャー施設、宿泊宴会場といったコト消費に伴う飲食施設のほか、弁当・給食、テイクアウト、ホームデリバリーの市場の現状を分析し、将来を展望した。
なお、食事の提供を主とするファストフード、ファミリーレストラン、専門料理店(アジア・エスニック料理、西洋料理、日本料理)の調査結果は「外食産業マーケティング便覧 2025 No.1」にまとめ、その概要は5月に発表した。
注目市場として、居酒屋・炉端焼は、アルコール飲料とともに、和食をメインとした幅広いメニューまたはやきとり、刺身、串カツなどの和食の特定メニューを主体に提供するサービスを対象とする。和食以外の特定メニューに特化した居酒屋、アルコール売上比率の低い料亭・割烹などの日本料理専門店は含まない。
大人数での宴会や会食需要によって2019年の市場は約1.6兆円の規模があった。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によりそれらの需要が消失したことで、2021年の市場は5000億円程度まで縮小した。2022年以降は影響が落ち着いたことで回復に向かっている。
2024年は、少人数グループの来店が増えたほか、メニューのブラッシュアップやフェアメニューの投入、顧客の滞在時間が延びたことなどによる客単価上昇もあり、市場は拡大した。また、宴会需要に関しては忘年会の件数が昨年の2倍近くとなったチェーンもみられたほか、高価格帯コースが人気だったことも市場の底上げ材料となった。
2025年は、多くの上位チェーンが新規出店や既存店のリニューアルを積極的に進めていることや、歓迎会などの宴会需要が好調なことから、市場は引き続き拡大するとみられる。しかし、生活様式の変化などから、大人数による利用や深夜帯の需要などは2019年以前の水準には戻らないとみられ、アルコールを来店動機としない客層へのアプローチを強化するため、オリジナルのカクテルやノンアルコールドリンクの拡充、フードメニューの充実化など、今後も各チェーンによるメニュー改革が継続されると予想される。

串カツ・串揚げ専門店は、串カツ、串揚げをメインに提供する居酒屋を対象とする。関西を中心とするローカル店舗が多いが、「串カツ田中」「神楽食堂 串家物語」などは全国規模で展開している。
2024年は、値ごろ感のあるキャンペーン実施やコラボレーションなどの集客施策により上位チェーンが市場をけん引したほか、国内外からの観光客による需要が旺盛であったことから、市場が拡大した。神戸牛、松阪牛、近江牛など銘柄牛の串カツメニューなどが訪日外国人観光客に人気となった。
2025年は、「串カツ田中」が店舗数を増やし、「神楽食堂 串家物語」がメディア露出などにより顧客の来店動機を創出している。また、大阪・関西万博の開催に伴い大阪エリアの観光客が増加する中、ご当地グルメとして客数増加が期待され、市場は前年以上に伸び、2019年の規模を超えるとみられる。
2026年は前年の反動が懸念されることから、上位チェーンの旺盛な出店、季節限定のメニューやデザートメニュー拡充などによる女性やファミリー客の獲得などが不可欠とみられるが、それらの施策により市場は微増が予想される。

おにぎり専門店は、おにぎりをメインに提供する店舗を対象とし、惣菜や弁当がメインの店舗は含まない。メニューとしてのおにぎりと区別するため、便宜上おにぎり専門店と記載する。
2024年は、ターミナル駅や空港などを中心に出店が増えたほか、メディアを通じて具材のバリエーションの広さが話題になったことで、市場が拡大した。また、米の価格が高騰し、多くの企業が値上げを行ったことも、市場を押し上げた。

2025年は、出店エリアや店舗数の拡大によりエントリー層を獲得しているほか、コメダや串カツ田中など他業態からの新規参入もありメディア露出機会が増えているため、市場が拡大するとみられる。また、上位チェーンの海外出店を機に外国人の認知度が高まり、インバウンド需要が増加していることも追い風である。特に駅、空港など、人流が活発な立地への出店が多いことも寄与している。

量販店デリカは、量販店の惣菜コーナーで販売されている、店内製造またはベンダー製造による弁当、惣菜を対象とする。
2024年は、物価の高騰に歯止めがかからず値上げが相次ぐ中で、外食していた層の利用を取り込み、市場が拡大した。少量パックや弁当・どんぶりなどの主食を含むワンプレートメニューを充実させたことが奏功した。一方で、フライ類やコールドデリカは苦戦しており、買い上げ点数が減少したケースもみられた。
2025年は、中食需要が引き続き旺盛であることから、市場は拡大が予想される。なお、参入各社は素材からの一部調理を一括して行う自社プロセスセンターを活用することで、店内調理作業の効率化や商品力の強化を進めている。また、人手不足、コスト吸収などにも有効であり、今後も活用が進むとみられる。
ただし、近年はドラッグストアやディスカウントストア(いずれも当市場対象外)でも自社プロセスセンターを構えるなど、惣菜を強化する動きが顕著となっており、競合が激化していくことが懸念される。

料飲店の2024年は、客数増加に加え、宴会需要の回復がみられた。訪日外国人観光客の増加や価格改定に伴う客単価上昇、上位チェーンによるメニュー施策や既存店のリニューアルなど集客力強化も奏功し、市場が拡大した。
2025年は、4月にビールをはじめとするアルコールメニューの値上げなど、価格改定を行うチェーンが多くみられるほか、上位チェーンによる新規出店や既存店のリニューアルや看板メニューの育成などによる来店動機の創出などによって、市場は小幅ながらプラスを維持するとみられる。
2026年以降は、深夜帯の需要低迷が続いていることや若者のアルコール離れなどにより、伸びは鈍化し、横ばいもしくは微減推移が想定される。

喫茶の市場はコーヒーショップと喫茶店・コーヒー専門店の伸びがけん引している。
2024年は、コーヒー豆の高騰により、コーヒーショップと喫茶店・コーヒー専門店の上位チェーンなどで価格改定が行われたほか、コロナ禍を経て高まったランチニーズに対応するため各チェーンがフードメニューを拡充したことで客単価が上昇し、市場が拡大した。
2025年は、上位チェーンが積極的な新規出店によって店舗数を増やしていることから、引き続き市場が拡大し、2019年の規模を上回るとみられる。

宿泊宴会場は、ホテルや旅館、結婚式場・宴会場などの飲食を対象とする。2024年は、宿泊施設数の増加に加え、国内旅行ニーズ増加とインバウンド需要の高まりにより客室稼働率が上昇したこと、各種コスト増による婚礼単価の上昇もあり市場が拡大した。
2025年は、大阪・関西万博の開催で訪日外国人観光客も増加し、宿泊需要が高まる中で、市場は引き続き拡大が予想される。
[調査方法]富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
[調査期間]2月~5月
[小売価格]
書籍版:16万5000円
書籍/PDF版セット:19万8000円
書籍/PDF+データ版セット(全体編):22万円
ネットワークパッケージ版:33万円
(すべて税込)
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