「くも膜下出血」の再出血を予防するには? 新薬「ピヴラッツ」で術後の脳血管収れんを抑制

「くも膜下出血」は、脳内のくも膜下腔と呼ばれる部位で起こる出血で、脳血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂し出血することで起こります。出血すると、突然の激しい頭痛や嘔吐といった症状に襲われ、そのまま意識を失うケースもあり、死亡率は約3割と高く、たとえ一命をとりとめたとしても半数近くの患者で半身まひや言語障害などの後遺症が残ってしまいます。発症する年齢は50~70代が多いものの、20~30代の若年層でも起こることがあります。最近では、高齢者のくも膜下出血が増加しており、男性よりも女性の患者に多く見られる傾向にあります。これには、女性ホルモンの分泌量の減少が関係していると推定されています。

くも膜下出血では、発症直後の治療の後に、早期再出血するリスクが非常に高く、予防するために出血後すぐに動脈瘤へ血液が流れないようにする手術や動脈瘤内にコイルをつめる塞栓手術など外科的治療が行われるのが一般的です。なぜなら、出血後に適切な外科的治療を行った場合でも、くも膜下出血で血腫に触れた脳動脈が数日から2週間ほどの間に、過度な収縮をしてしまう「脳血管れん縮」が起こり高次脳機能障害を引き起こすこともあるためです。脳血管れん縮を予防することが予後に大きくかかわってきます。

くも膜下出血の治療薬としては、2022年1月にエンドセリン受容体拮抗薬「ピヴラッツ」という点滴薬が約25年ぶりに世界に先駆け日本で承認・発売されました。ピヴラッツの一般名は、「クラゾセンタンナトリウム」で、血管を収縮させる作用を持つエンドセリン(21個のアミノ酸からなるペプチド)の働きを阻害する世界で初めての拮抗薬です。

出血後、数日から2週間ほどの間に脳血管れん縮が起こると脳血流量が低下し虚血状態となります。その後、酸素や栄養素が十分に供給されず広範囲に脳にダメージが生じた場合に、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。この脳血管れん縮を抑制するのがピヴラッツの働きです。ピヴラッツは、くも膜下出血後48時間までを目安に点滴を開始することで、エンドセリン受容体に結合し、血管れん縮を抑制することが可能となり、最大15日間まで点滴が可能です。一方、副作用として、肺水腫など体液が溜まりやすくなる症状があるため、適切な術後管理が必要となります。(監修:健康管理士一般指導員)


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