全国でRSウイルス感染症の流行が拡大、重症化リスクのある赤ちゃんを守る新たな予防策「母子免疫ワクチン」に注目

今年8月以降、「RSウイルス感染症」の報告数が全国で急増している。RSウイルス感染症は、RSウイルスを病原体とする急性呼吸器感染症で、例年では秋から冬にかけて流行が見られる。しかし、近年は春から夏の初めにかけても流行が拡大する傾向があり、感染の季節性が崩れつつある。今年は年明け早々から報告数が急増し、国立感染症研究所の定点調査でも例年を大幅に上回る数値が確認された。特に0歳から2歳の乳幼児での感染が目立ち、生後6ヵ月未満の赤ちゃんでは重症化の恐れもあるという。そこで、赤ちゃんへの感染を防ぐ新たな対策として、妊娠中に接種する「母子免疫ワクチン」への注目が集まっている。

RSウイルス感染症は、咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着した物品を介した接触感染によって広がる。症状は鼻水や咳、発熱など風邪に似ており、大人は軽症で済むことが多いため、見過ごされやすい病気である。ところが、RSウイルスは、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染し、特に生後6ヵ月未満の赤ちゃんに感染すると、細気管支炎や肺炎などの重症化を引き起こすことが少なくない。呼吸困難で入院が必要になるケースもあり、時には命に関わる危険もあるという。

RSウイルス感染症にかかった乳児の4人に1人が、入院が必要になるという報告もあり、中でも、保育園や幼稚園に通っているきょうだいがいる場合や早産、低体重で生まれてきた赤ちゃんの場合は、特にリスクが高いといわれている。実際に、生後間もない赤ちゃんがRSウイルスに感染し、重症化してしまったことがある経産婦からは、「赤ちゃんがとても苦しそうで不安」、「命にかかわるのではないか」、「入院中は面会が限られ、そばにいてあげられなくてつらかった」といった声が挙がっている。

赤ちゃんは気道が狭く、肺や免疫機能が未発達なため、RSウイルスによる炎症が呼吸を大きく妨げてしまう。さらに近年の研究では、RSウイルスに感染し重症化を経験した乳幼児は、成長後に喘鳴(ゼーゼーとした呼吸音)が繰り返し出ることや、将来的に喘息を発症するリスクが21.8倍も高い(出典:Sigurs N. et al.:Pediatrics 95(4):500, 1995)ことも報告されている。つまり、RSウイルス感染症は一時的な病気にとどまらず、その後の生活の質にも影響を与える可能性があるという。

感染力の強いRSウイルスから赤ちゃんを守るためには、家庭内での対策が不可欠になる。まず、基本となるのが、こまめな手洗いや手指消毒、そして症状がある人はマスクを着用すること。使用後のおもちゃやドアノブなどをアルコールで拭き取るといった習慣も効果的。また、赤ちゃんがいる家庭では、家族に咳や発熱などの症状がある場合、できる限り接触を控えることが推奨される。

こうした中で、RSウイルス感染症の新たな予防策として注目されているのが「母子免疫ワクチン」だ。これは、妊娠中の母親が接種することで母体にできた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生まれたその瞬間から赤ちゃんを守るという新しい仕組みのワクチン。接種できるのは妊娠24週から36週の期間。妊娠中に届けた抗体は、生後6ヵ月ごろまでその効果が持続するという。特に重症化のリスクが高い生後6ヵ月未満の赤ちゃんを守るために、昨年から注目度が高まってきている。

費用はおおむね3~4万円前後で自己負担となることが多いが、接種費用の全額または一部負担してくれる自治体も増え始めているとのこと。今後、助成の対象地域が広がる可能性もあり、妊婦にとっては住んでいる自治体の最新情報をこまめに確認することが重要になる。

RSウイルス感染症は毎年のように流行し、乳幼児には大きなリスクをもたらす。感染そのものが危険であるだけでなく、将来の喘息リスクにもつながる可能性があることもわかってきた。従来は手洗いや消毒、予防薬などの対策が中心だったが、母子免疫ワクチンの登場によって、赤ちゃんを守るための新しい選択肢が生まれている。このワクチンは、ママが赤ちゃんに贈る“最初のプレゼント”といっていいかもしれない。気になる人は、かかりつけの産婦人科の先生に相談してみては。


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