- Leisure&Travel2026/01/29 20:05
山梨県、「山梨デザインセレクション2025」の表彰式を初開催、山梨の風土・文化・産業・暮らしに根差した10点が受賞

山梨県は、地域に根ざした創造力と美意識を顕彰・発信する新たな取り組みとして、「山梨デザインセレクション」事業を実施している。1月14日には、初開催となる「山梨デザインセレクション2025」の受賞製品発表および表彰式を開催した。今年度は137点の応募があり、一次選考を通過した83点を対象に最終選考を行い、「山梨デザインセレクション」として10点の受賞が決定した。
「山梨デザインセレクション」事業は、山梨の風土や文化、産業、暮らしに根ざした優れたデザインを発掘・顕彰し、それらを広く共有・発信することで、山梨県全体のデザイン力とブランド力を高めていくことを目的としている。セレクションに選出された製品やプロダクトは、山梨の創造的資産としてアーカイブし、県内外への発信を通じて、山梨の魅力と可能性を広く伝えていく。同時に、未来に継承することで、山梨のデザイン的価値の向上を目指す。

選考委員を務めた、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科教授/HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長で山梨県チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)兼センター長の永井一史氏は、「山梨は、日本を代表する山紫水明の地であり、総面積の約86%が山地で占められている。江戸時代は木綿、たばこ、養蚕から近代はぶどうや桃などの果樹へと転換。そして、印章、水晶細工、印伝、宝石加工、手漉き和紙、雨畑硯、武者のぼり、スズ竹細工、鬼瓦、大石紬、親子だるま、花火という12の魅力的な伝統工芸が今も残っている。今回の『山梨デザインセレクション』では、こうした山梨の風土・文化・産業に根差したデザインを審査の基準とした」と、セレクションの選考基準について説明。「『山梨デザインセレクション』では、山梨の優れたデザインの魅力を県内外に発信すると共に、地場産業や地域企業のデザイン力を可視化し、地域の価値を見つめ直す。また、県内のデザイン力を高め、地域の力を向上させ、未来へつなげる契機とする。さらに、デザインの選定・アーカイブを通じて、デザイン資産として蓄積していく」と、「山梨デザインセレクション」を実施する意義を述べた。
「募集対象は、山梨に関わりのある製品・プロダクトで、『プロダクト領域』、『ビジュアル・コミュニケーション領域』、『フード・ローカルプロダクト領域』、『ブランドやサービス領域』の4つのカテゴリで応募を行った。予想を上回るエントリーがあり、応募総数は137点に達した。普遍性・創造性・社会性・持続性・地域性の5つの観点から審査を行い、83点が一次選考を通過。最終審査では、すべての製品を実際に並べ、私を含め4名の選考委員がディスカッションしながら、『山梨デザインセレクション2025』にふさわしい10点を選定した」と、実際の製品を見て触れて、受賞製品を最終決定したと教えてくれた。

ここで、「山梨デザインセレクション2025」の受賞製品が発表され、表彰式が行われた。受賞したのは、「SOILジンジャーシロップ」(事業者:SOIL)、「98WINEs/98BEERs/stay366/一木」(事業者:98WINEs)、「七賢 EXPRESSIONシリーズ」(事業者:山梨銘醸)、「Charcuterie by DEAR DEER」(事業者:富士山ジビエセンター)、「西嶋和紙 ミニチュア半紙一〆(ひとしめ)」(事業者:山叶製紙)、「FUGAKU U80 SLEEPING BAG/ENVELOPE MULTI」(事業者:富士新幸)、「ホワイトバルサミコ酢」(事業者:アサヤ食品)、「くろ玉」(事業者:澤田屋)、「めでたやのお正月商品」(事業者:大直)、「手持ち花火 花桜」「線香花火 菊花」(事業者:和火師・佐々木厳)の10点。表彰式では、受賞事業者に表彰状が授与されると共に、選考委員から受賞製品に対する評価コメントが伝えられた。

「SOILジンジャーシロップ」は、南アルプス産の生姜を使ったノンアルコールのシロップ。「大人の夜のジンジャーエール」をコンセプトに掲げているように、お酒が飲めない人でも夜を存分に楽しむことができる。そんな遊び心のあるノンアルコールドリンクとなっている。山梨県南アルプス市出身のデザイナーがこの事業を着想し、生姜生産農家となって製造している点にも着目。ボトルのサイジングもちょうど良く、カラフルで個性的なエチケットのデザインが、飲み物の価値を再発見させてくれると評価された。

「98WINEs/98BEERs/stay366/一木」は、日本産ワイン誕生の地である山梨県甲州市のワイナリー・98WINEsが手がけるワインブランド。山梨県が誇るワイン産業において、長年磨いてきた醸造方法に加え、独自性あふれるエチケットデザイン、自然の豊かさを生かして設熺された工場など、統合されたデザインとしてしっかり成り立っていることに、選考委員から感嘆の声が上がったという。

「七賢 EXPRESSIONシリーズ」は、ヴィンテージシャンパンを想い起こさせる革新的なスパークリング酒。日本酒の飲まれ方は、時間をかけて変化してきた。フレッシュさを価値としてきた流れの中で、熟成によって飲まれる時間の表情を受け止める文化も、静かに育まれてきた。瓶内二次発酵によって生まれる発泡をもつ「EXPRESSIONシリーズ」は、その延長線上に立ち、日本酒の可能性を世界へと開いている。山梨の資産であるミレーの作品を用い、葛西薫氏という巨匠が手がけたパッケージも、この酒の思想を雄弁に物語る。世界の料理と響き合う日本酒として、意義深い仕事であると評価している。

「Charcuterie by DEAR DEER」は、富士山ジビエセンターで受け入れた野生の鹿や猪を原料とするソーセージやハムをはじめとする加工食品のシリーズ。青を基調とした軽快なデザインや、ハムやソーセージなど身近な食材への展開は、ジビエという特殊に映りがちな存在を、生活の中で扱いやすいものにデザインしている。サステナビリティを意識したこの取り組みが、食肉部分の展開に加え、山梨が誇る印伝の鹿革に活用されることにも期待されている。

「ミニチュア半紙一〆」は、山叶製紙から出荷される書道用半紙「一〆(ひとしめ)」の梱包を、そのまま1/8サイズに縮小したステーショナリー。紙が重なり合うことで生まれる弾力や、わずかな膨らみをそのまま包みの形にした柔らかな佇まいには、思わず手にとってしまう魅力がある。中には色や質感の異なる四種の書道用半紙が百枚重なり、その層そのものが美しい。伝統的な書道用和紙の梱包が1/8サイズに縮小され、もともとそこにあった文字や印影によるグラフィックの力も宿り、日本の和紙の魅力が静かに伝わる逸品となっている。

「FUGAKU U80 SLEEPING BAG/ENVELOPE MULTI」は、リサイクルダウンを使用したサステナブルなアウトドアギア。アウトドア用としてだけでなく、日常でも心地よく使える工夫が随所に見られる点が魅力となっている。リサイクルダウンを活用し、地域資源を生かした循環型のものづくりとしても優れている。収納ケースがクッションとして使える仕立ても生活になじみ、アウトドアと日常を軽やかにつなぐデザインとして高く評価された。

「ホワイトバルサミコ酢」は、山梨県で栽培された白ぶどうを中心に20品種あまりを使用し、香りと味の良いところをそのまま残した白いバルサミコ酢。キッチンに穏やかに馴染む素直なデザインや、スリムで出しっぱなしにしても美しく、扱いやすい形状にも細やかな心配りが感じられる。その佇まいと品質へのこだわりは、日々の料理をさりげなく引き立て、世界にも紹介したくなる上質さを備えている。

「澤田屋リブランディング」では昨年、甲斐銘菓「くろ玉」のパッケージを約30年ぶりにリニューアル。伝統的な図柄を丁寧に整理し、「くろ玉」を象徴的な図形として抽象化した。黒×赤の2色構成でパッケージへ落とし込んだ点に、老舗の品格と現代性の調和が表れている。新しさを追うあまり本来の良さを損ねがちな領域で、伝統の核を守りつつデザイン言語を再構築し、くろ玉らしさを際立たせた。売場でも贈答でも強い存在感を放つ、ブランドの未来を示す仕事であると評価された。

「めでたやのお正月商品」は、千年以上の伝統をもつといわれる市川大門の和紙を立体的に用いることで、日常における小さなお祝いを軽快に表現している点が高く評価された。日本の伝統的なお祝いや季節感を表す行事において、通常、重たさを感じてしまう和紙を組み合わせながらも、ポップで気軽さを感じさせる現代のテイストにデザインした。これによって、日常生活の中にフィットするアイテムに仕上げている。

「手持ち花火 花桜」「線香花火 菊花」は、祈りや鎮魂という精神性を、地産素材と余白を活かした静謐な意匠で美しく可視化している。打上花火の産地という文脈で、あえて個人の内面に寄り添う手持ちへ転換し、生活の中での火との対話の場を創出した点にストーリーがある。伝統文化を残すだけでなく、新たな精神的価値として届けるための意思あるデザインであるとの評価を受けた。

表彰式に続いて、選考委員を務めた山梨県チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)兼センター長の永井氏、多摩美術大学副学長/NAOTO FUKASAWA DESIGN 代表 日本民藝館館長で山梨県デザイン・ディレクター(DD)の深澤直人氏、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科教授/DESIGN STUDIOS 代表で山梨県デザイン・ディレクター(DD)の柴田文江氏、Q0 代表取締役社長/飛騨の森でクマは踊る 取締役会長で山梨県デザイン・ディレクター(DD)の林千晶氏の4名と受賞者によるトークセッションが行われ、選考の感想や「山梨らしいデザイン」、「地域におけるデザインの価値」などをテーマに意見を交わした。

「山梨デザインセレクション」の今後について林氏は、「東京でデザインをする際には、何十万人、何百万人という大きな市場が対象になるが、『山梨デザインセレクション』では、対象が『この人』から『この人たち』、さらに『その友達』へ、一人から複数人へと広がっていくような感じがした。単にペルソナを設定するのではなく、誰を喜ばせたいのか、どんな課題を解決したいのかという筋がしっかり通っていれば、その背景にいるたくさんの人たちに伝わると思っている。次回も、そういうデザインがされたアイテムと出会えることを楽しみにしている」と、次のセレクションにも期待を寄せた。

柴田氏は、「今回選ばれた受賞製品のデザインが本当に素晴らしいので、来年の山梨デザインセレクションの選考はさらに大変になると感じている。これからエントリーする人たちは、今回の受賞製品のデザインをよく見て、自分たちのデザインと照らし合わせて研究していくと、いい正解が導き出せると思う。個人的には、あまりデザインまみれにならず、純粋な山梨らしさを担保するデザインの製品が出てくることを願っている」と述べていた。

深澤氏は、「最近は、あらゆるものに産業やデザインが張り付きすぎていて、自然に生まれたものの喜びをつくることが難しくなっている。良いデザインが1つあると、それが量産化され、消費される。そしてまた、新しいデザインが求められる。これは、サステナビリティの観点からも大きな問題だと感じている。『山梨デザインセレクション』も、デザインによって山梨の自然や環境を壊してしまうことがないようにしてほしい。賞を取ることが重要でなく、良いデザインのものは継続して、同じ製品が何度もセレクションに選ばれてもいいのではないかと思っている」と、これからのセレクションのあり方を提言した。

永井氏は、「今回初めて『山梨デザインセレクション』を開催したが、山梨にとって、とても重要な取り組みであることを実感した。文化的テロワールを尊重した選考基準も、始まるまでは未知数なところもあったが、実際に受賞製品が揃ってみると、みんな山梨らしさに溢れていて、まさしく光って見えた。これで『山梨デザインセレクション』の一つの軸ができたので、今後も継続して開催していきたいと考えている。また、今回受賞した事業者には、『山梨デザインセレクション』の価値をさらに高めていくために、県内外で一緒に盛り上げていってもらいたい」と、「山梨デザインセレクション」の認知度を全国に広げていきたいと意気込みを語った。
山梨県=https://www.pref.yamanashi.jp/
山梨デザインセレクション=https://ydc.pref.yamanashi.jp/special/2025/yamanashi-design-selection/
- #CDO
- #HAKUHODO DESIGN
- #アーカイブ
- #セレクション
- #センター長
- #チーフ・デザイン・オフィサー
- #デザイン
- #デザイン的価値の向上
- #ブランド
- #一次選考
- #伝統工芸
- #創造力
- #創造的資産
- #受賞製品
- #多摩美術大学美術学部統合デザイン学科教授
- #山梨デザインセレクション2025
- #山梨県
- #山紫水明
- #文化
- #文化的テロワール
- #暮らし
- #最終選考
- #永井一史氏
- #産業
- #美意識
- #表彰式
- #風土
















