- Drink&Food2025/12/26 17:09
サントリー、サントリー山崎蒸溜所で通常の製造工程に加えてブレンダーが日々業務を行う「ブレンダー室」を特別公開

サントリーは12月4日、サントリー山崎蒸溜所で、同社のウイスキーづくりのこだわりと特長を紹介する見学・取材会を開催した。当日は、通常の製造工程に加えて、ブレンダーが日々業務を行う「ブレンダー室」を特別に公開。今年度「現代の名工」に選ばれた主席ブレンダー・輿石太氏が、原酒の香味の違いや個性を見極め、調和させるブレンダーの仕事について詳しく説明した。また、輿石氏が開発を手掛けてきた「響」ブランドの中味のこだわりとブレンドの妙を感じられるテイスティングセミナーも実施。ブレンダーの匠の技とウイスキーの奥深い世界に触れた。

「1923年に着工、翌24年に竣工した日本初のモルトウイスキー蒸溜所である山崎蒸溜所は、ジャパニーズウイスキーのふるさとともいわれている」と、サントリー 山崎蒸溜所 工場長 有田哲也氏。「山崎は、水生野といわれる名水の里として知られ、万葉集の歌にも詠まれた。当時、ウイスキーづくりに最適な水を探し求めて日本各地を踏破した当社創業者の鳥井信治郎がたどり着いた地でもある」と、山崎はウイスキーづくりの理想郷といわれる所以について紹介。「天王山の麓に位置する山崎は、掛川・宇治川・木津川の三川の合流地点となっており、濃い霧が立ち込める、日本ならではの湿潤な環境となっている」と、山崎はウイスキーの貯蔵に適した自然環境でもあるのだと教えてくれた。

「当社は、ウイスキーづくりを学んだスコットランドと大きく異なる日本の地で日本人の味覚に合ったウイスキーづくりを行うべく、100年以上にわたる徹底した“つくり分け”と“つくり込み”に挑戦し、熟成・美味品質を追求している」と、ウイスキー事業創業時から美味品質を追求しているとのこと。「1923年に山崎蒸溜所の建設に着手。1968年にはパイロット ディスティラリーを設立した。1980年代には設備を改修。これによって、2003年には『山崎12年』がISC(International Sprits Challenge)を受賞。2006年に蒸溜釜を更新すると、2010年には『山崎1984』がISCを受賞した。そして、2013年に蒸溜釜を新設。2023年からさらなる美味品質の追求を推し進めるべく、パイロット ディスティラリーを改修。フロアモルディングを新設した」と、美味品質追求の歴史について語る。

「山崎では、ワイン樽、スパニッシュオーク樽、ミズナラ樽、パンチョン、ホッグスヘッド、バーレルの樽と、発酵槽、ポットスチルによって、100種類以上の原酒をつくり分けている」と、つくりの各工程で様々な工夫を凝らしているとのこと。「原料から徹底してこだわり、長期熟成に適した高い品質の原酒をつくっている」と、長期熟成に適した力強い原酒を生む“つくり込み”を行っているという。「そして、高品質で多彩な原酒をブレンダーの熟練の技でかけ合わせている」と、熟練の技によって生み出されるブレンドが美味品質に欠かせないのだと訴えた。

「山崎は、2003年の金賞受賞を皮切りに、世界的な酒類コンペティションISC(International Sprits Challenge)でその品質が評価された」と、2003年に「山崎12年」が金賞受賞、2010年に「山崎1984」が全部門最高賞を受賞、2023年に「山崎25年」が全部門最高賞を受賞、2024年に「山崎12年」が全部門最高賞を受賞した。「そして、ISC2025において『山崎18年』が全部門最高賞(シュプリーム チャンピオン スピリット)を受賞した。3年連続同一ブランドでの受賞はISC史上初の快挙となる」と、「山崎」は世界的な評価を得ているのだと胸を張った。

次に、ブレンダーの仕事について、同 ブレンダー室 主席ブレンダーの輿石太氏が紹介した。「サントリーウイスキーのものづくりの根幹は、原酒の“つくり込み”と“つくり分け”にある」と、様々な原酒を持っていることがウイスキーづくりには欠かせないのだと力説する。「原酒の“つくり分け”の大切さは、多彩な原酒の存在がブレンドに有利に働く。一方、原酒の“つくり込み”の大切さは、個々の原酒の品質が高ければ、高い品質の製品ができる」と、“つくり込み”と“つくり分け”による、高品質で多彩な原酒を持つことが大切なのだと訴えた。

「ウイスキーは、原料品質管理とフロアモルティング麦芽といった原料・原料加工から粉砕粒度や清澄麦汁といった仕込、ビール酵母の併用や酵母の状態制御といった発酵、直火蒸溜や高泡蒸溜といった蒸溜が行われ、その後、樽の選別、貯蔵環境の管理といった貯蔵・熟成を経て、チームによるブレンドを行い、原酒を管理していく」と、ウイスキーの製造工程について解説。

「ブレンダーは、貯蔵・熟成およびブレンドの工程を担っている」と、ウイスキーづくりにおいてブレンダーが関わる工程について教えてくれた。「ブレンダーは、微細な香味の違いを判別・評価し、それぞれの原酒の個性を見極め、用途先を決定する」と、ウイスキー原酒の評価を行っているとのこと。「テストブレンド(試作)を繰り返すことでレシピを決め、目指す製品の香味を実現する」と、ウイスキー原酒のブレンド作業についても言及。「製品の長期販売計画に基づいて、原酒の使用計画や原酒の製造計画を管理する」と、ウイスキー原酒の在庫マネジメントも行っていると述べていた。

「サントリーウイスキーの“つくり込み”については、消費者の飲用シーンまで意識した製品の中味の設計やブレンダーチームでの官能・議論による各原酒の熟成・美味品質の見極めを行う」と、チームで取り組むのだという。「定番製品の品質維持・向上への取り組みについては、サントリー貯蔵原酒約160万樽の品質をチェック。具体的には、高酒齢・特別な樽を全樽、数年おきに品質チェック。スタンダードな樽の代表樽を毎年ロット毎に品質チェックする」と、原酒の棚卸が“つくり込み”にとって重要とのこと。「定番製品の安定供給と品質の両立のため、年間で数十回配合を見直している」と、定番製品の品質安定化を図ることで、消費者に長年愛される美味品質を維持・向上させることができるのだと語っていた。「さらに、保有する原酒在庫のタイプや品質を把握し、各原酒をいつどのように製品へ使用するかを見極め、細やかに管理している」と、はじめに原酒を1万樽に詰めたら、3年目には蒸発によって9000樽に減少。6年目には、蒸発と製品として使用することで6000樽にまで落ち込む。この6年目の原酒で品質が良くなっているかの判断を行う。そして、10年目には蒸発と使用分で2000樽となり、17年目にはわずか200樽しか残っていない状態となると説明した。

この後、輿石氏が開発を手掛けてきた「響」ブランドの中味のこだわりとブレンドの妙を感じられるテイスティングセミナーを開催した。「約1500年の歴史を持つ手漉き・手ちぎりの越前和紙を洋酒ラベルに世界で初めて採用した『響』は、世界に誇る日本の伝統工芸との共生を体現している。また、時を象徴する24面体ボトルを採用。ブランドカラーは日本の伝統色“深紫(こきむらさき)”となっている」とのこと。「響ブランドに共通する香味は、華やかな香り立ちと、日本らしい繊細な味わい、高品質の原酒ならではの豊かな余韻が特長となっている」と、「響」の香味について言及した。「響の香味を彩る個性豊かな原酒を育む山崎、白州、知多の3つの拠点では、響のハーモニーをつくりあげるために、山崎モルト、白州モルト、知多グレーンそれぞれの原酒が役割を担っている」と、山崎、白州、知多の原酒が響の香味を描いているのだと教えてくれた。

そして、テイスティングを実施。「テイスティングでは、まず色を見て、グラスを軽く回す。香りを試してみて、加水して、口に含んでみる」と、テイスティング方法をレクチャーした後スタート。「山崎アメリカン ホワイトオーク樽原酒」、「山崎 スパニッシュオーク樽原酒」、「山崎ミズナラ樽原酒」、「白州 スモーキー原酒」、「知多グレーン原酒」、「サントリーウイスキー響 21年」、「サントリーウイスキー響 30年」をテイスティングした。「『山崎アメリカン ホワイトオーク樽原酒』は、香ばしい感じのモルティとウッディな味わいが特徴。『山崎 スパニッシュオーク樽原酒』は、甘くフルーティで香味が豊かな味わいとなっている。『山崎ミズナラ樽原酒』は、甘さと独特の樽香、複雑な余韻が楽しめる」と、原酒について説明。

「『白州 スモーキー原酒』は、軽快でバランスがよく熟成されている。『知多グレーン原酒』は、穏やかでピュアな味わいとなっている」と教えてくれた。「『サントリーウイスキー響』は、日本のウイスキーならではの美しくバランスのとれたハーモニー。華やかで豊かな香り、奥深い味わいが特徴となっている。『サントリーウイスキー響 21年』は、ドライフルーツのような甘い香りとスパイシーな味わいが特徴。重厚なコシと気品のあるコク、奥行きのある長い余韻が感じられる。『サントリーウイスキー響 30年』は、長期熟成モルト由来の甘い伽羅香、熟した果実の華やかさと驚くほどなめらかな口当たりと圧倒的な余韻の長さが感じられる」と、テイスティングで提供されたサントリーウイスキー響の特徴についても解説してくれた。















