ウォッチニュース

[ドクター連載 第11回]年々増加し続ける認知症高齢者、"物忘れ"が気になったら専門医に相談を--認知症編(その1)

2013.01.29 05:37 更新

  近年、認知症を発症する高齢者の方が増え続けています。昨年8月に、厚生労働省が発表した推計によると、2012年の認知症高齢者は305万人にのぼり、 2020年には400万人を超える見通しとなっています。2003年時点の推計では、2020年で289万人とされていましたので、予想を上回るペースで 認知症高齢者の数が増えていることがわかります。そこで、今回からは、高齢者の10人に1人は発症するといわれる認知症についてご紹介していきたいと思い ます。

 認知症とは、五感を統合して自分の状態を判断する能力、および脳に記憶したものを生活の中でいかしていく能力が低下、または失わ れた状態を総称したものです。ひとくちに認知症といっても、その原因は様々ですが、現在認知症の原因疾患として主要なものは、「アルツハイマー型認知 症」、「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」とされております。そして、このうち国内の認知症高齢者の多くを占めているのが「アルツハイマー型認知 症」です。まずは、「アルツハイマー型認知症」から詳しくみていきましょう。 「アルツハイマー型認知症」は、脳の神経細胞の中に、特殊 なタンパク質(βアミロイドなど)が蓄積することで神経細胞が変成し、その機能が衰えて いくことで 発症するといわれています。機能が衰えた神経細胞は死滅していくため、やがて脳全体が萎縮していきます。症状の特徴としては、判断力や記憶力が徐々に低下 していき、進行すると正常な行動ができなくなり、周囲の介助なしには生活が難しくなります。

 「脳血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血な ど、脳の血管に起こった障害が原因となって脳の機能が低下するものです。明確な原因がわかっている場合は、その病気を治療することで症状を改善したり、進 行を遅らせることもできます。以前に比べて、脳血管障害にともなう、「脳血管性認知症」は割合的に少なくなってきているとの報告がありますが、中にはアル ツハイマー型認知症との合併もあると考えられます。

 「レビー小体型認知症」は、脳の神経細胞にレビー小体という特殊な変化が起こるこ と で発症します。症状としては、判断力や記憶力の低下に加えて、幻覚や幻視といった精神障害が初期から現れるのが特徴です。脳の変性の病気として知られてい る「パーキンソン病」と同じような脳内変化がおきていることがわかっていますが、詳しい原因はわかっておりません。

  これら3つの認知症 の中でも、みなさんが最も気になるのは、やはり「アルツハイマー型認知症」でしょう。しかも、その初期症状は、“物忘れ”と似ているので、「もしかしたら 自分も・・・」と不安に思っている方も多いはず。もし、“物忘れ”の症状が気になる方は、自己判断をせずに、まず専門医に相談することをおすすめします。 物忘れ外来や認知症外来を受診するのがベストですが、神経内科や精神科、老年科、脳神経外科などでも、認知症の診断を受けることができます。

  認知症を判断する方法として、よく使われているのが「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」というスクリーニング検査です。この検査では、簡単な 質問に回答して、その点数で認知症のレベルを判断します。若い人であれば、ほぼ30点満点を取れる内容で、70?80歳の高齢者でも健常者であれは 25?28点は取ることができます。しかし、点数が20点を下回る場合、認知症が強く疑われます。20点前後の人は、生活全般で判断力や記憶力の低下が見 られます。そして、10点前後になると一人で生活するのが難しくなり、1桁まで下がると生活に介助が不可欠になります。

 また、言葉の 記 憶だけでなく、物のイメージや機能の記憶から、認知症を検査する方法もあります。簡単な例では、10時10分の時計を書いてもらいます。このとき、単純な 円と針を書くだけでも、短針と長針の長さの違いや、時間と分を示す角度を正確に書けるかどうかで、認知症の一つの判断材料になります。

  このほか、自覚症状も重要なポイントです。“物忘れ”や“ど忘れ”は、誰にでもあること。しかし、認知症の場合は、「今日の朝、何を食べたのかわからな い」、「どうやってここまできたのかわからない」といった、明らかに“物忘れ”とは違う記憶の欠如が生じます。ただ、初期症状では、判別しにくいケースも ありますので、やはり一人で悩まずに専門医を受診するようにしてください。

 次回は、「アルツハイマー型認知症」にさらにフォーカスを当て、最前線の治療法と予防のポイントについてご説明したいと思います。(医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院 病院長 田丸司)

医療法人偕行会グループ=http://www.kaikou.or.jp/
医療法人偕行会グループ facebookページ=https://www.facebook.com/kaikou


このページの先頭へ