ウォッチニュース

[ドクター連載 第5回]自覚症状なく進行する「慢性腎臓病」、緻密でデリケートな腎臓の働きとは?--慢性腎臓病(CKD)編(その1)

2012.07.31 05:53 更新

  みなさんは、慢性腎臓病(CKD)という病気をご存じですか? 脳卒中や心臓病、糖尿病などに比べると認知度が低いので、「言葉だけは聞いたことはあるけれど、どんな病気なのか詳しいことはよくわからない」という方も 多いかもしれません。しかし、実は、慢性腎臓病(CKD)の患者さんは、現在約1330万人(20歳以上の成人の8人に1人)もいると考えられており、新 たな国民病ともいわれています(エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009(社団法人 日本腎臓学会編)より)。そして、残念ながら、その患者数は年々増加を続けているのが実状です。

 慢性腎臓病(CKD)とは、名前の通 り、腎臓の働きが慢性的に低下していく病気です。この病気が恐ろしいのは、ほとんど自覚症状がないまま進行してしまうことです。これが患者数を増加させて いる大きな要因でもあります。さらに、腎臓は一度悪くなってしまうと、自然には治らないというのもやっかいな点です。そのため、放っておくと、どんどん腎 臓の働きが低下し、症状が出たときには、かなり悪化しているというケースも少なくありません。

  では、そもそも腎臓は、私たちの体内でどのような働きをしているのでしょうか。今回は、まず、腎臓の役割についてご紹介したいと思います。腎臓は、そらま めのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あります。この腎臓が担う役割として、もっとも重要なのが、老廃物を体 から排出してくれる働きです。腎臓は、血液を濾過して老廃物や塩分を尿として体の外へ追い出してくれます。その一方で、体に必要なものは再吸収して体内に とどめ、体内の恒常性を司っています。

 もちろん腎臓の働きは、これだけではありません。塩分と水分の排出量をコントロールすることに よって血圧を調整してくれる働きもあります。血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、塩分と水分の排出量 を減少させることで血圧を上げます。あわせて、血圧を維持するホルモンを分泌し、血圧が低いときには血圧を上げてくれます。

 また、血 液 がつくられる過程にも、腎臓が大きく関わっています。血液(赤血球)は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)の刺激を受けてつ くられます。腎臓の働きが悪くなるとこのホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず貧血になってしまいます。

 さ ら に、腎臓は、体内の体液量やイオンバランスを調節したり、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割も担っています。そのため、腎臓が悪くなると体液量の調 節がうまくいかなくなり、体がむくんでしまいます。また、イオンバランスが崩れると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れてきます。

  このほか、強い骨を作るためにも腎臓の役割は欠かせません。骨の発育には複数の臓器が関わっていますが、その中でも腎臓は、カルシウムを体内に吸収させる のに必要な活性型ビタミンDをつくる働きを担っています。腎臓の働きが悪くなると活性型ビタミンDが低下し、カルシウムが吸収されなくなって骨が弱くなる などの症状が出てくるのです。

 このように、腎臓は、私たちの体を正常な状態に保ってくれる非常な重要な臓器です。また、とても緻密な 働 きをしている一方で、悪くなったら元には戻らないデリケートな臓器でもあります。とくに、腎臓は多くの血管が集まっている臓器なので、高血圧や糖尿病など の生活習慣病との関連が深く、これらが原因になって慢性腎臓病(CKD)を合併するケースが多いのが実状です。それだけに、慢性腎臓病(CKD)によって 腎臓の機能が低下し続ければ、命の関わるさまざまなリスクが発生してくるのは当然といえます。次回は、慢性腎臓病(CKD)について、詳しくご説明したい と思います。(医療法人偕行会本部 透析事業本部 管理部長 熊澤ひとみ)

医療法人偕行会グループ=http://www.kaikou.or.jp/
医療法人偕行会グループ facebookページ=https://www.facebook.com/kaikou
医療法人偕行会グループ 透析事業本部=http://touseki.jp/


このページの先頭へ