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本田財団、第41回「本田賞」の授与式をオンラインで初開催、インダストリー4.0の提唱者であるドイツ工学アカデミー評議会議長のヘニング・カガーマン博士が受賞

2020.11.19 16:52 更新

 公益財団法人本田財団は、2020年の「本田賞」をドイツ工学アカデミー評議会議長のヘニング・カガーマン博士に授与することを決定した。カガーマン博士は、現実世界とデジタルの融合(サイバーフィジカルシステム)による第4次産業革命(インダストリー4.0)の提唱で世界に大きな影響を与えたことを称え、今回の授賞に至った。11月17日には、第41回「本田賞」の授与式が、新型コロナウイルス感染拡大予防のためオンライン形式で初開催され、カガーマン博士がリモートで記念講演を行った。

 「『本田賞』は、科学技術分野における日本初の国際賞として、1980年に創設された。人間環境と自然環境を調和させるエコテクノロジーを実現させ、結果として『人間性あふれる文明の創造』に寄与した功績に対し、毎年1件の表彰を行っている。今回、第41回目となる『本田賞』の受賞者として、ヘニング・カガーマン博士を迎えることができたことを心から嬉しく思っている」と、本田財団の石田寛人理事長が挨拶。「人類は、今までに3回の産業革命を経験してきたが、カガーマン博士が提唱するインダストリー4.0は、これに次ぐ4回目の産業革命を起こすものとなる。インターネットによりモノとサービスがつながり、データを活用することで、製造業をはじめとしたあらゆる産業の最適化・効率化を図るだけでなく、人間が創り出す付加価値の高度化、勤務環境の改善、生涯教育の実現、さらには資源の効率的な使用を目指すものである。技術の一方的な進展にともなう社会の混乱と悲劇を予測し、人々が適切に対応していくための道筋を示したカガーマン博士の成果は、まさしく本田賞の精神に沿った偉大な功績といえる」と、インダストリー4.0の概念を確立・提唱したカガーマン博士の功績を讃えた。

 続いて、本田賞選考委員会の内田裕久副委員長が、第41回「本田賞」の受賞者選考の経緯について説明した。「本田賞選考委員会では、世界約400名の推薦人から挙がってきた候補者について、専門家の意見も交えながら厳正に審査を進め、受賞者を決定している。科学技術分野だけでなく様々な分野を対象としているため、候補者の業績審査と比較には、毎年困難を極めている」と、幅広い分野の候補者から厳正な審査を行っているという。「今年は、14ヵ国29組の候補者の中から、選考委員会において白熱した議論を重ねた結果、ヘニング・カガーマン博士を受賞者に決定した。選考過程では、候補者がどのようなチャレンジをして、その成果が世界中の人々の実生活に、いかに寄与しているのかという点を重視した」と、受賞者選考のポイントについても言及した。

 「カガーマン博士は、インダストリー4.0の主導者であり、あらゆる産業においてデジタル技術を活用した産業最適化の必要性を提唱してきた。また、ドイツ政府が進める『ドイツアクションプラン ハイテク戦略2020』の将来プロジェクトにインダストリー4.0が設立されてからは、その代表アドバイザーとしてドイツと世界各国の企業連携を支援し、デジタルトランスフォーメーション(DX)についての国際的な議論を深めることに尽力してきた。さらに、現在ではインダストリー4.0の発展型として、プラットフォーム型のビジネスモデル『スマート・サービス』、人工知能や機械学習を用いて学習する『自律システム』の作業部会で主導的な立場を担っている」と、カガーマン博士の取り組みを紹介。「エコテクノロジーの原点は本田宗一郎氏が語っていた『技術で人々を幸せにする』ことであり、インダストリー4.0が目指す『標準化とオープンスタンダード』により人々の生活を豊かにするという考え方は本田賞にふさわしい成果であると判断した。また、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大し、社会全体のDXが加速度的に進む今だからこそ、インダストリー4.0の目指す姿を正しく伝えることが重要と考え、今年度の授賞となった」と、授賞理由について説明した。

 そして、第41回「本田賞」の授与式が執り行われ、メダル・賞状とともに副賞として1000万円がカガーマン博士に贈呈された。本田財団の中島邦雄副理事長は、「21世紀も5分の1が過ぎたが、この時代においては、技術と社会がどのようなつながりを持っていくのかが大きな課題になっている。その中でインダストリー4.0は、今我々が抱えている環境やエネルギー、食物などの様々な問題を解決し、最適な社会を目指すための有力な手段になると考えている。今回はこの点を高く評価して、『本田賞』の授賞となった。カガーマン博士のこれからの活躍にも期待している」と、インダストリー4.0のさらなる発展に期待を寄せていた。カガーマン博士は、「『本田賞』を受賞できたことを光栄に思う。これは、インダストリー4.0のプロジェクトに参加した様々な専門家の努力が認められたものだと受け止めている。今後、インダストリー4.0の重要性はさらに高まり、国際協力が必要になると感じている。その意味でも、今回の『本田賞』に選んでもらえたことを感謝している」と、受賞の喜びを語った。

 授与式の後には、カガーマン博士が「インダストリー4.0 経済成長と社会的利益の実現」と題した記念講演を行った。「私は、2011年にヴォルフガング・ヴァルスター博士やヴォルフ・ディーター・ルーカス博士と共に、初めてインダストリー4.0という概念を紹介する論文を発表し、世界に大きなインパクトを与えた。この背景には、我々が示したビジョンに説得力があり、経済だけでなく社会にも多大な影響を与えることが明白であったことが挙げられる」と、インダストリー4.0は経済と社会の両面に寄与するものなのだと訴える。「経済面では、大量生産からマスカスタマイゼーションへの移行を目指している。決められたものを大量生産するのではなく、顧客の需要の変化にリアルタイムで対応できる生産体制に移行することで、以前よりもはるかに高い生産性と適用性を実現することができる。また、社会面では、資源を合理的に使用することにより、働く人を定型的な業務から解放し、価値を創造する活動に集中できる労働環境を実現することができる」と、インダストリー4.0がもたらす価値について説明した。

 「昨年、専門家チームでは、インダストリー4.0の2030年版の改定ビジョンを発表し、グローバルなデジタルエコシステムが将来に向けたアイデアの中心になることを確認した。そのためには、オープンなエコシステムで、国際的な相互運用性に取り組み、持続可能な経済を目指していくことが重要になる。経済成長と資源消費を切り離し、自律性という概念を工場のレベルから国家のレベルに拡大していく必要があると考えている」と、インダストリー4.0の今後の展望について語る。「インダストリー4.0による自律性を拡大することで、様々な社会問題を解決することが可能となる。一方で、そこには法律面や倫理面における課題も存在している。そこで我々は、ユースケース別に導入し、その社会にとって有益であるかどうかを判断することを提案している。また、ダイバーシティやオープン化といったグローバルな課題に対しては、これからも国際協調を進め、各国の様々な経験や知識、ベストプラクティスを共有していくことが求められる。これには、オープンなコラボレーションが重要であり、自給自足や保護主義であってはならないと考えている」と、インダストリー4.0を先進国から新興国・途上国までオープンに展開し、持続可能な世界の実現に寄与していく考えを示した。

公益財団法人本田財団=https://www.hondafoundation.jp/


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