医療最前線

約4割の看護師が「辞めたいとおもった」、調査で明らかになった11の「ふしぎなナース文化」とは

2022.10.05 20:58 更新

 テーラード技術を取り入れた白衣を中心に、医療用品の企画・開発・販売を行うクラシコは10月3日、看護師の働きやすい環境づくりを考える「#看護服からはじめよう」プロジェクト発表会を開催した。

 新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、看護師の労働環境の過酷さや人手不足等の問題に注目が集まり、官公庁から現場レベルまで看護師の労働環境の見直し・改善が急速に進んでいる。一方で同社の調査では、約4割の看護師が「辞めたいとおもった」と回答。その背景には、看護師の自由な働き方を縛っている独特なルールや慣習「ふしぎなナース文化」があるという。

 今回のプロジェクトにより、まずは看護服から看護師の働く環境を見つめ直し、看護師を縛る制約への変革の輪を広げていくという。

 「ふしぎなナース文化」についての調査は、今年4月~7月の期間に実施。全国の20~50代の看護師の男女400人、20~70代の病院利用者400人、看護管理者(看護師長以上)25人からアンケートを取った。

 看護師に対し「あなたが働く病院で、疑問や不満に思っているルール・慣習」について聞いたところ、以下のような11の「ふしぎなナース文化」を抽出することができた。

「髪色は明るくしてはいけない?」
「靴下・下着は白でなければいけない?」
「看護服は上下とも白でないといけない?」
「髪を結ぶシュシュやヘアゴムは、黒や茶など地味な色でないといけない?」
「女性はまつげエクステをしてはならず、男性はひげを生やしてはいけない?」
「寒い冬でも、半袖のナース服から出る防寒インナーや患者の前でのカーディガンはいけない?」
「通勤時の服装も地味でなければいけない?」
「ナースステーションでは水分補給ができず、飲みものの種類にも制限がある?」
「休憩時間であっても、病院外に出ることはゆるされない?」
「看護師は移動にエレベーターを使用してはいけない?」
「SNSで投稿したり、友達の投稿にいいねしたりしてはいけない?」

 調査では、自分の勤務する病院に存在する独特な慣習・ルールの存在意義や理由を約44%の看護師がわからないまま、慣習に従っている状況にあることもわかった。同社によると、理由のわからない病院独自ルール・慣習への不満が、仕事へのモチベーションの低下につながり、離職に発展するケースもあることが考えられるという。

 対して、病院幹部である看護管理者に対する調査では、「ふしぎなナース文化」として挙がった中には、命を預かる責任から必ず守らなければならないものもあるとの意見が多く寄せられた。意図を理解していない現場看護師が4割を超える中、現場への理解の浸透が足りていない状況があると考えられるという。

 病院利用者に対する調査では、「ふしぎなナース文化」について、11のルールの平均を取ると8割以上の人が「ふしぎなナース文化」を不要と考えていることが明らかになった。また、身だしなみ・服装に関するルールに従っていなくても特に気にならないと考える人は7割を超える結果となった。

 クラシコの大和新社長は、「実際に『ふしぎなナース文化』を調査して、看護師は衛生面・安全面が最優先事項であるのは間違いないが、見た目に関するルールは『患者はどう思うか』といったサービス視点を気にしている面が強い一方、患者は意外と気にしていないことが明らかになった。つまり、病院や看護師が自分たちで自由の範囲を狭めてしまっている」と発言。

 発表会に登壇したファミワン代表看護師の西岡有可氏は、「現場看護師として11の『ふしぎなナース文化』の大半を経験し、『なぜ看護師だけなのか』と違和感を感じることが多くあった。だが、看護師長の立場で感じたこととしては、ルールを1つ1つ線引きするのは難しく、だからといって個人の解釈に任せると常識から逸脱する人がいるので、看護師に心地よく働いて欲しいという気持ちはありながら、全面禁止にせざるを得ない部分もあった。また、病院は公的な存在であるから、地域や周りの目を気にして通勤服やSNSなど勤務以外の面にまで規制をかけざるを得ないという側面もある」とコメントした。

 調査では、ルールについて看護師たちと話し合ったり、意図を説明して理解を図ったりするような機会があるか聞いたところ、「あまりない・全くない」と答えた人は52%と約半数だった。同社は、理解を図るための現場看護師との対話、そして利用する一般の人々との対話が不足している可能性が考えられると分析している。

 また調査をする中で、昨今身だしなみに関するルールを緩める動きが一部の現場であることも伺えたという。業務に影響を与えない範囲で、暗黙のルールを見直し、看護師の自由を広げる動きが少しずつ広がっているとも。

 西岡氏は、「10年以上前と比べると、スクラブの色が自由に選べたり、『清潔が守られている範囲であれば』と、髪型や髪色の規制を緩くしたりと、変化が少しずつ広がってきている。背景として、人手不足で看護師の採用が難化する中、病院を選んでもらうために多様性や自由さのアピールは欠かせなくなっている」とコメント。

 同社は、「本当に残さなくてはいけないルール」は現場の看護師にその必要性を浸透させ、反対に「変えてもいいルール」は相談しながら少しずつ緩めていき、看護師がストレスを感じる「ふしぎなナース文化」の数を減らしていくことで、今よりも働きやすい医療現場を作ることができると分析している。

 クラシコでは、「白衣は着心地が悪い」という既成概念を覆すような、医師や看護師の人たちの仕事のモチベーション向上につながる、デザイン性と機能性を兼ね備えた白衣をはじめとする医療ウェアを提供しているといい、「#看護服からはじめよう」プロジェクトへの賛同病院を募集し、同者の展開する看護服の導入を支援するという。

 10月4日時点ではすでに「小田原レディスクリニック」(神奈川県小田原市)、「産婦人科クリニックさくら」(神奈川県横浜市)の2院で導入決定しており、今後も複数院での導入を検討している状態とのこと。また賛同病院に対し、看護服導入によるモチベーション変化に関する実証実験を実施しており、「ふしぎなナース文化」に関する調査結果や実証実験の調査結果は、来年に行われる看護管理系の学会での発表を目指しているという。さらに、看護協会などの機関や賛同病院、賛同者と連携し、取り組みを中長期的に広げていく考えも示した。

 発表会の最後に、西岡氏は、「『ふしぎなナース文化』を少しずつなくしていくことは、看護師の定着に貢献すると考えている。最も大事なことは『対話』で、現場スタッフや患者がどう思っているのかをしっかりと知り、必要のあるもの・ないものを選定していってほしい」とコメント。

 クラシコの大和社長は、「『#看護服からはじめよう』プロジェクトを通して、まずは看護服から着心地の良いものに変えることで、現場看護師が少しでも笑顔で働けるような環境づくりが進むことを願っている」とまとめた。

クラシコ=https://classico.co.jp/


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