医療最前線

前立腺がんの罹患数が10年で約1.8倍に、疫学調査結果から大豆由来成分「エクオール」の前立腺がんに対する有用性の可能性が示唆

2022.09.05 19:00 更新

 近年、前立腺がんは増加傾向にあり、国立がん研究センターがん対策情報センターの報告によると、2008年の前立腺がんの罹患数5万1534人(「がんの統計2013」2008年の前立腺がん罹患数のデータ)と比較し、2018年は9万2021人(「がんの統計2022」2018の前立腺がん罹患数のデータ)で、10年間で約1.8倍となっている。2021年の前立腺がんの罹患数予測は9万5400人(「がんの統計2022」 2021年の前立腺がん罹患数予測データ)で、まだまだ増加することが予想されている。こうした中、独立した2つの疫学調査から、大豆由来の成分「エクオール」が、前立腺がんのリスクを有意に低下させる可能性が示唆される調査結果が発表された。

 文部科学省科研費の日本他施設コホート研究(JACC STUDY)では、研究のひとつとして、前立腺がんの関連性について、大豆に含まれる成分「ゲニステイン」「ダイゼイン」、そして、ダイゼインから腸内細菌によって作られる「エクオール」の3成分を比較したところ、血中「エクオール」が高いグループはエクオールが検出できなかったグループに比べて、有意に前立腺がん患者の割合が低いことがわかった(オッズ比:0.39)。他の成分では、前立腺がんとの関連性は認められなかった。

 また、国立がん研究センターでの疫学研究でも同様に、血中「エクオール」が高いグループはエクオールが検出できなかったグループに比べて、有意に前立腺がん患者の割合が低く(オッズ比:0.60)、一方、他の成分(ダイゼイン、ゲニステイン)では関連性がないことがわかった。

 今回、独立した各々の疫学調査で同じような結果が出たことで、現代の日本で増加傾向にある前立腺がんに対して、エクオールの有用性の可能性が出てきたという。今後、さらなる研究が期待されている。

 前立腺は、男性のみにある臓器で、膀胱の下、骨盤の最も深いところに位置している。クルミぐらいの大きさで(成人で約20g)、精液をつくる役目を果たしている。前立腺がんに対する有用性が示唆されたエクオールは、大豆由来の成分で、腸内細菌によって、大豆イソフラボンから産生される。女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用があり、軽度な手指関節の不調の改善だけでなく、更年期症状の緩和、骨密度の低下抑制、肌シワの改善、生活習慣病の予防に役立つとされている。

 しかし、大豆イソフラボンからエクオールを産生できる人は、実は日本人の2人に1人しかいないといわれている。エクオール産生菌を持っていなければ、大豆イソフラボンをいくら摂取してもエクオールは産生されず、エクオールのチカラを活かすことはできないとのこと。エクオールが作り出せるかどうかは、検査キット「ソイチェック」で採尿した尿を郵送するだけで調べることができる。また、同キットを取り扱う医療機関もあるという。

 エクオールを産生できない人は、「エクオール含有食品」から摂取することが可能だ。また、エクオールを作れない人だけでなく、エクオールを作れる人でも、大豆を食べない日や腸内環境によって作れない日もあるため、エクオール含有食品で補うことが推奨されれる。エクオール含有食品は、現在ではさまざまな商品があり産婦人科などの医療機関で取り扱われているものもある。毎日食べるものなので、商品を選ぶ際には、どの菌から作られているか、わかるものを選ぶと安心とのこと。


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