医療最前線

科研製薬、今夏の猛暑に備え"ワキ汗"に関する悩みを解決するセミナーを開催、原発性腋窩多汗症は日常生活などに大きな影響を与える疾患

2022.06.09 18:41 更新

 気象庁によると今年の6~8月は、全国的に例年に比べて気温が高くなると予想されており、今年の夏は猛暑になることが予測されている。こうした中、「ワキ汗」が気になるという人も多いのではないだろうか。そこで科研製薬では、日本初の「多汗症」患者会の多汗症サポートグループと共催し、今夏の猛暑に備え“ワキ汗”に関する悩みを解決するプレスセミナーを6月7日に開催した。セミナーでは、知っているようで知らない「ワキ汗・多汗症」について、池袋西口ふくろう皮膚科 クリニック院長の藤本智子先生が解説した他、「ワキ汗の意識・実態調査」の結果について発表した。

 「当社は腋窩多汗症(ワキ汗)で悩む人が自分らしく安心して生活できる社会をつくるために、疾患啓発プロジェクトを進めている」と、腋窩多汗症(ワキ汗)について広く知ってもらい、悩む人が相談しやすく適切な治療を受けられる環境づくりに取り組んでいると、科研製薬 総務部 広報グループの野中貴子氏は語る。「2020年11月には、ワキ汗の情報・サポートサイト『ワキ汗治療ナビ』を開設。総訪問者数は約40万ユニークユーザー(2021年1~12月)に達した」と、サイトでは、ワキ汗の基礎知識や治療方法、病院検索、患者の声などを紹介しているという。「さらに、YoutubeチャンネルやTwitterの開設を行うことでワキ汗に関する認知向上に努めている」と、SNSなどを活用し、理解を深めてもらう活動も行っていると力説する。「このような活動を通じて、当社では、ワキ汗に対する新たな情報を提供し、より多くの患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献していく」と、今後も腋窩多汗症の疾患啓発プロジェクトを推進していく考えを示した。

 池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長の藤本智子先生が「腋窩多汗症の実態と最新治療法について」と題した講演を行った。「ほぼ全身に分布する汗腺であるエクリン汗腺と、体の一部分(腋の下、陰部、乳首)に存在する汗腺であるアポクリン汗腺がある。汗には体温調節の役割があり、体重70kgのヒトが体温を1℃下げるためには100㏄の汗をかいてそのすべてが皮膚から蒸発しなくてはならない」と、汗をかくことは重要なことなのだと説明する。「発汗経路は2つあり、体温調節のため体温が脳(視床下部)で感受され、脊髄、自律神経(交感神経)を介して掌蹠を除く全身の皮膚から生じる『温熱性発汗』と、精神的緊張時におこる汗精神的緊張が脳(前運動野・辺縁系)、脊髄、自律神経(交感神経)を介し、掌蹠の皮膚から発汗生じる『精神性発汗』がある」と、体温の上昇を抑える汗と、緊張などから汗が生じるケースがあるのだと指摘する。

 「原発性局所多汗症とは、手のひらや顔・頭部・脇・足のうらの限局した部位に日常生活で困るほど汗の量が多くなる病気のこと。発症が25歳以下、睡眠中は発汗症状がみられない、両側性かつ左右対称性、1回/週以上多汗のエピソードがある、家族歴がある、日常生活に支障をきたす--といった項目のうち2つ以上当てはまると、原発性局所多汗症と診断される。そして、診断は汗の量ではなく、汗でどれだけ支障を感じているかである」と、多汗症について詳しく解説してくれた。「原発性局所多汗症全体の有病率は10.0%であり、部位別では腋窩が5.9%で最も高かった。受診経験率は、手掌と足底で10%程度であったが、受診率は0.7~2.1%であった。まだ見ぬ多汗症患者が大勢いる」と、「ワキ汗」や「多汗症」に悩んでいる人は10人に1人はいるとのこと。「20~40歳代の88%が汗で困ると回答していた」と、さまざまな場面で汗は支障をきたす存在なのだと述べていた。

 「腋窩多汗症の患者は、QOLの指標であるDLQIスコアが11.6~17であり乾癬やアトピー性皮膚炎に比べてQOLが低い結果となった。また、出勤してもパフォーマンス低下が著しく、30%以上も生産性を損失しているとされ、その経済的損失は、月3120億円ともいわれている」と、経済的な側面からも大きな影響がある疾患なのだと語っていた。

 「腋窩多汗症では、発汗量が少なくても、日常生活に支障がある患者がいる」と、腋窩多汗症の患者の「困っている」はわかりにくいのだという。「そこで、ワキの多汗症に関する意識・実態調査を実施した(実施期間:2021年8月26日~8月31日、調査方法:インターネット調査、調査対象:日常的にワキ汗に悩む全国の男女、有効回答数:608名)」とのこと。「ワキ汗が気になり始めるのは、中高生・新社会人など多感な時期で、人前に出る機会が多くなる時期にワキ汗を感じやすいことが判明した。また、日常的にワキ汗に悩む人は、日常生活に様々な制限が生じQOLが大きく低下。『洋服の汗ジミが気になる/洋服を選んでしまう』が約8割、『異性と接するときに気になる』が約7割、『つり革につかまるのをためらう』が約6割となった。ワキ汗が原因で『希望の職をあきらめた経験がある』人は、15人に1人(6.6%)おり、ワキ汗(多汗症)について『周囲の理解を得られていない』と回答した人は4割以上いた」と、ワキ汗について多くの悩みを抱えている現状が浮き彫りとなった。「その一方で、医療機関を受診したことがある人は、わずか1割未満だったが、『治療したい』と回答した人は6割以上と治療意欲は高いことが明らかになった」と、医療機関を受診する医師はあってもなかなか行動に移せていない人が多いことがわかった。

 では、病院ではどのような治療を行うのだろうか。「2020年に日本で承認、販売された保険適用の塗り薬『外用抗コリン薬』を処方する。保険適用で、全身性副作用のリスクが低く、刺激が少ない」と、メリットについて語った。「『塩化アルミニウム製剤』は、年齢を問わずに治療が可能で安価なのだが、接触皮膚炎が一定頻度起こったり、院内製剤の取り扱いであり、導入は施設ごとの判断となる」と、デメリットもあると指摘する。「重度原発性腋窩多汗症に保険適用となる『ボツリヌス毒素製剤』は、同意書と、投与の書類が必要で、治療効果の平均は約半年となっている」と、注射の痛みの副作用があるとのこと。「『内服抗コリン薬』は、多汗症に保険適用で安価だが、口や目が乾いたり、眠気が出る場合がある。尿が出にくい、頻尿などの場合があり、顔がほてったり、気分不快に注意が必要」と、それぞれ良い面、悪い面があると教えてくれた。

 最後に「原発性腋窩多汗症はQOLを著しく損ない、日常生活、学業・仕事、人生にまで大きな影響を与える疾患である。腋窩多汗症で悩んでいるが医療機関を受診していない患者も多く、患者が受診しやすい医療環境を整備することや、適切に多汗症の診断を行い、治療の選択肢を提示していく必要がある。原発性腋窩多汗症は医療機関で治療が可能な疾患であり、2020年には新たに保険適用の塗り薬(外用抗コリン薬)が世界に先駆けて日本で承認、販売され、日本での原発性腋窩多汗症治療の選択肢が広がっている」とまとめていた。

 多汗症サポートグループの黒澤希代表理事は、多汗症患者が生活しやすい環境作りの実現に向けてと題した講演を行った。「多汗症はサイレント・ハンディキャップといわれている。理由は、多汗症が世の中に認知されておらず、悩みを打ち明けても理解されにくい」と、多汗症患者は多くの悩みを抱えているのだという。「患者は、多くの人たちに多汗症という疾患があることを知ってもらいたいと願っている」と、理解してもらいたいのだと説明する。「多汗症サポートグループでは、病気や自分達の経験について社会へ発信することを通じて疾患啓発を図るとともに、仲間と出会い励ましあう、情報を共有する場をつくっていく。そして、商品開発や多汗症に関する調査事業等を行うことで患者のQOL向上を目指していく」と、多汗症サポートグループの活動内容について紹介してくれた。この後、多汗症患者の多汗症サポートグループ 高部大問理事が、多汗症患者特有のエピソードなどを語ってくれた。

科研製薬=https://www.kaken.co.jp/
多汗症サポートグループ=https://npo-hsg.org/


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