医療最前線

キリンHD、新型コロナウイルス感染症の現状ならびに新たな切り札となり得る免疫の司令塔「pDC」の存在とその有効性を解説

2022.03.08 21:43 更新

 キリンホールディングス(以下、キリンHD)は3月7日、「自然免疫」に着目した感染症対策について、日本医科大学 特任教授の北村義浩先生、国立感染症研究所 エイズ研究センター長の俣野哲朗先生、長崎大学病院講師の山本和子先生に登壇してもらい、自然免疫に着目した新たな感染症対策へのアプローチと題し、現在の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の状況や特徴、自然免疫からのアプローチの有効性について説明してもらった。また、キリンHD ヘルスサイエンス事業部 博士の藤原大介部長から、「免疫の司令塔」である「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化させ、免疫維持を実現する「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」の作用についても説明してもらった。

 「新型コロナによる感染症は、2019年末から感染拡大を続けている。オミクロン株に感染した人の7%が再感染者(英国)でデルタ株の約8倍となっている。また、オミクロン株は、ワクチンが標的とする部分(スパイクタンパク質)に35ヵ所変異し、2回ワクチン接種していても、オミクロン株に対する効果が減弱することが報告されている」と、新型コロナの現状について日本医科大学 特任教授の北村義浩先生が解説。「ワクチン接種率は高いが、オミクロン株の感染拡大は止まらないことから、第7波以降も予想される」と、次の波も起こると警鐘を鳴らす。「新型コロナは変異が早く、これまでのワクチンが効かなくなる恐れもある」と、ワクチン2回接種の効果は、6ヵ月で10分の1以下に低下。毎年、接種しなくてはいけない可能性もあると指摘する。「オミクロン株では、ワクチンでの発症予防効果が減少している」と、ワクチン2回接種後のブースター接種後の発症予防効果について言及。「ワクチン(獲得免疫)は、効果は高いが特定のウイルス株に一定期間しか効かない。どんなウイルス株にも効果的なアプローチの開発が重要となる」と、今までの方法の欠点を補うための新しいアプローチが必要だと説く。

 「こうした中、一度は入ってきた敵を覚えて、二回目以降、効果的に攻撃する『獲得免疫』の他に、外からの敵を見つけてすぐ攻撃。初めての敵でも攻撃する『自然免疫』について着目する必要があると感じた。自然免疫は、規則正しい生活や栄養バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠と心のゆとりが得られる休養、笑う・楽しむことで高めることができる」とアドバイスする。「また、自然免疫『pDC』が対ウイルスの免疫をコントロールすることもわかっている。早期にpDCが活性化する若年者は早い段階でウイルスが消去し、新型コロナに感染しても軽症であるケースが多い。これに対し高齢者は『pDC』の活性化が遅延。ウイルス排除に遅れが生じ、新型コロナに感染した場合に重症化するケースがあるとされている。そこで、今回のセミナーでは、この自然免疫『pDC』について解説していきたいと思っている」と、自然免疫について詳しく解説していきたいと述べた。

 次に、キリンHD ヘルスサイエンス事業部 博士の藤原大介部長が、「有効な自然免疫アプローチの発見-抗ウイルス効果を狙った乳酸菌の開発-」について講演を行った。「免疫細胞には上下関係があり、司令塔が存在する。司令塔を乳酸菌で安全に活性化できないかと考え研究を行った」と、免疫細胞の司令塔pDCを研究するに至った背景について語る。「これまで、世界的に乳酸菌はpDCを活性化できないとされていた。しかし、2012年に当社が世界で初めてpDCを活性化できる乳酸菌を報告した」と、プラズマ乳酸菌を添加することで突起が発生し免疫の司令塔pDCが活性化することを見出したという。「一般的な乳酸菌は、免疫細胞の一部のみ活性化。一方、プラズマ乳酸菌は、免疫細胞全体を活性化する」と違いについて言及。「プラズマ乳酸菌の作用についてのヒト試験では、プラズマ乳酸菌飲用で、ヒトにおいて風邪・インフルエンザのリスクが低下した」とのこと。

 「岩手県雫石町小中学校における介入研究結果では、同様の流行パターンを示した隣接地域と比べて、インフルエンザによる児童・生徒の欠席率が低下した」と、小学生では有意に低かったと報告する。「人類は新型ウイルスには備えがないが、pDCはウイルスに対する汎用性のあるアプローチとして、今後も研究を重ねていく」と、人々の健康に貢献するべく、免疫研究を行っていくとアピールした。

 国立感染症研究所 エイズ研究センター長の俣野哲朗先生は、「新型コロナの感染免疫学 感染防御・制御に向けて」と題した講演を行った。「無症候ウイルス産生者の隔離困難から、感染拡大抑制におけるワクチンの重要性が高まった」と、無症候感染者からの「みえない」感染拡大が深刻化していると訴える。「新型コロナワクチンは、中和抗体IgG誘導で、上気道感染阻止は困難とされ、主に肺での増殖を抑制する」と解説する。「新型コロナ感染後のウイルス増殖抑制に向けては、中和抗体やCTL(CD8陽性T細胞)だけでなく、自然免疫というインターフェロン(IFN)の特に上気道での抑制作用に期待される」と、自然免疫で増殖を抑制することも重要ではないかと語る。

 「新型コロナにおいて、軽症例ではIFNが早期誘導していた」と、IFNの早期誘導がみられると軽症であったという。「新型コロナの軽症例ではpDC数が高かった」という。「キリンとの共同研究から、プラズマ乳酸菌はpDCに取り込まれpDCを活性化することが明らかとなった。また、プラズマ乳酸菌刺激pDCの培養上清から新型コロナの増殖を抑制することができ、IFN誘導遺伝子の発現も増強した」と、新型コロナ増殖抑制因子の産生作用がみられたという。「今後は、インターフェロンによる抑制機序に加えて、他の作用機序についても研究していく」と語っていた。

 長崎大学病院 呼吸器内科 講師の山本和子先生は、「新型コロナに対する自然免疫アプローチ~プラズマ乳酸菌の有効性の検討~」と題した講演を行った。「日本ではこれまで521万263人が新型コロナと診断された。これは国民の約4.1%に相当する(人数は3月4日0時時点)」と新型コロナの国内発生動向を紹介。「第5波以降から若年者の感染者数が増加し、高齢者の割合が減少した。新型コロナワクチン導入の効果がみられたと推察される」と、新型コロナの年代別陽性者数と重症度を説明する。「しかし、新型コロナは、インフルエンザと比較して遥かに超過死亡が多い」と、新型コロナはインフルエンザと同様ではないと強調する。「軽症の新型コロナの治療の必要性として、高リスク者の感染による重症者の増加から病床が逼迫し、医療崩壊が起こり、死亡者が増加する。また休学、休職の増加による社会経済活動の停止および国力の低下が懸念される」と、治療しなければ多方面でリスクが生じると語る。「抗ウイルス薬や抗炎症・免疫調節薬も登場したが、副作用もあったり、他の薬との併用ができないなど制約も多いため、内服の免疫調節薬があれば理想的と思われる」と、新型コロナの病態と治療戦略には課題もあるという。「プラズマ樹状細胞(pDC)は免疫の司令塔とされ、抗ウイルス物質(インターフェロン)の発生や、様々な免疫細胞を活性化する。このpDCに作用するプラズマ乳酸菌による新型コロナの病態抑制が期待される」と自然免疫で新型コロナを抑制することで、新たな波を小さくしていく必要があると訴える。

 「そこで、新型コロナ患者に対するプラズマ乳酸菌を用いた症状緩和効果についての検証を行っている」と、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を現在進行形で行っているとのこと。「新型コロナは感染力が強く、一定数で肺炎を合併し、後遺症を残す。新型コロナは大変異を繰り返し、ワクチンのみで対応するのは困難と思われる。大多数を占める軽症患者の治療は内服薬が今後の中心となる。この抗ウイルス薬に加えて、体内の免疫の調節アプローチによる治療戦略が必要と思われる」と、プラズマ乳酸菌カプセルの内服で免疫細胞の活性化を行うことも新型コロナ抑制につながるのではないかと示唆していた。

 最後に北村先生は、「第6波の感染が収まらない中、現在流行中の型よりも感染力が高く、また重症化しやすいとされている新たな変異株『ステルス・オミクロン(BA.2株)』の感染拡大の懸念が高まっている。ウイルスとの戦いは長期戦となるため、これまでの対策に加えて 自然免疫に着目した新しいアプローチが必要となる」とまとめていた。

キリンホールディングス=https://www.kirinholdings.com/jp/


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