医療最前線

食から認知機能について考える会、「食を楽しみながら認知機能維持・向上を目指す」をテーマに第2回メディアセミナーを開催

2021.12.16 18:49 更新

 食から認知機能について考える会は、12月14日に第2回メディアセミナーを開催した。今回のセミナーでは、「食」を楽しみながら認知機能維持・向上を目指すことをテーマに、加齢や環境による認知機能への影響を改善させるための食成分・食習慣や、咀嚼による脳血流増加が認知機能にもたらす影響について、順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学教授の堀江重郎先生と、東京都健康長寿医療センター研究所 自律神経機能研究室 研究部長の堀田晴美先生を招き、オンラインで講演を行った。

 まず、順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学教授の堀江先生が、「加齢や環境が認知機能に与える影響・その対策としての『食』の可能性」について説明した。「現在、内閣府では、エイジレス・ライフを推進しており、長生きするだけではなく、社会に貢献できる“貢献寿命”の延伸が求められている。その基盤として、身体面、精神面、社会面のすべてが充実した『ウェルビーイング』の獲得が重要になっている」と、高齢者もウェルビーイングが求められる時代になっていると指摘する。「近年、健康寿命は延びているものの、まだ平均寿命とは大きな開きがあるのが実状だ。高齢者のウェルビーイングを阻害する大きな要因となっているのが認知機能の低下であり、介護が必要となる主な原因の一つでもある。認知機能の低下は、40歳過ぎから徐々に始まっており、その原因としては、加齢にともなう性ホルモンバランスの変化や季節変化、生活環境、生活習慣病、認知症につながる疾患などが考えられる」と、認知機能の低下にはさまざまな原因があり、早期に対策に取り組むことが大切であると訴えた。

 「特に性ホルモンの変化については、女性では40~50歳の更年期におけるエストロゲン分泌のゆらぎが脳の神経細胞の働きに影響を及ぼし、自律神経系や認知機能、精神機能などが不安定になることが示されている。一方、男性では、男性ホルモンのテストステロンの減少による男性更年期障害(LOH症候群)が認知機能の低下にも影響していることが認められている。男性ホルモンを増やすには、運動、睡眠、食事、ストレス低減といった生活習慣の改善が重要になる」と、性ホルモンと認知機能の関係性について言及。「そして、日本のさまざまな疫学研究から、食の改善が、認知機能低下の対策に効果的であることが明らかになっている。このため、認知機能対策の基本として、バランスに配慮された食事や認知症予防にエビデンスのある食品をとることが推奨される。ただし、認知機能は、対策をしてもすぐに改善されるものではなく、実感もしにくい。無理なく自分のペースで続けることで習慣化し、10年後20年後のウェルビーイングの向上につなげてほしい」と、将来的に認知機能を落とさないためにも、食を通じた認知機能対策を習慣化してほしいと述べていた。

 続いて、東京都健康長寿医療センター研究所 自律神経機能研究室 研究部長の堀田先生が、「よく噛む人は元気なのはなぜ?~咀嚼と認知機能をつなぐ『血管をやわらかくする』脳細胞のはなし~」と題した講演を行った。「咀嚼は、以前から『脳機能の活性化』につながるといわれてきたが、そのメカニズムはほとんど解明されていない。これまでの研究では、咀嚼中の脳において、特に一次感覚運動野で脳血流量が増えることが示されていた。そこで、当研究所では、咀嚼と脳血流量の関係を確かめるべく、ラットによる実験を行った。この結果、脳の咀嚼野を刺激すると脳血流量が増え、その際、血圧は変わらないことがわかった」と、咀嚼をすると血管がやわらかくなり、脳血流量が増えることが明らかになったという。「また、脳の奥には、大脳皮質の血管をやわらかくする物質(アセチルコリン)を放出するマイネルト細胞があり、認知機能に重要な役割を担っている。当研究所の実験で、咀嚼野に刺激を与えるとマイネルト細胞の活動が増加することが示された。さらに、あごの筋を実際に動かさなくても、咀嚼をイメージするだけで脳血流量が増えることも確認された」と、咀嚼の刺激によって脳機能が活性化する仕組みについて解説した。

 「正常時の脳動脈は、血圧が低下した際に、血管を太く広げて血流量を維持するはたらきを持っている。しかし、アルツハイマー病のモデルマウスでは、原因物質であるアミロイドβが脳動脈の周りに沈着しているため、血管を広げられないことがわかった。このような脳動脈のはたらきの障害は、高齢者における血栓症や自律性低血圧などの虚血時に対する脳の脆弱性を高め、アルツハイマー病の病状を悪化させる要因になると考えられる」と、脳動脈の機能障害が認知症の病態に大きな影響を及ぼしていると指摘する。「これらの研究結果によって、普段から咀嚼を意識して、脳血管のやわらかさを保つことで認知症リスクを軽減させる可能性があることが示唆された。よく噛んで、食事を楽しみながら、マイネルト細胞を活性化させ、認知症を予防してほしい」と、よく噛んで食べることを意識することが脳血管をやわらかくし、認知症予防につながるのだと教えてくれた。

食から認知機能について考える会=https://www.shoku-ninchi.org/


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