医療最前線

さまざまな不調を抱える人が増えたコロナ禍にオンライン漢方の人気が上昇中、AI導入で最先端をいく「あんしん漢方」とは?

2021.10.12 12:00 更新

 新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、外出自粛や在宅勤務、ソーシャルディスタンス、マスクの常用など、今までの日常生活が一変した。そして、長引くコロナ禍の影響により、病気ではないものの、慢性疲労・睡眠不良・ストレス過多・気分障害・不定愁訴などの不調、冷え症や肥満などで悩む人が増加傾向にある。そうした中で、最近では、漢方薬を取り入れる人、特にオンライン漢方サービスの利用者が増えつつあるようだ。そこで今回、各社が提供するオンライン漢方サービスの特徴を紹介するとともに、AIシステムを導入した最先端のサービスとして人気を集める「あんしん漢方」を展開するMSGの飯寿行社長に話を聞いた。

 オンラインでの漢方相談は、近年、老舗の漢方薬局でも取り組みを始めており、薬剤師がオンラインで顔を見ながら利用者の漢方相談に対応している。その一方で、今、急速に利用が伸びてきているのが、スマホひとつで、健康相談から漢方薬の受け取りまでができるオンラインに特化した漢方相談サービスだ。

 昔ながらの漢方薬局などの場合には、基本的に都度、薬剤師に相談しながら漢方薬を処方してもらうため手間がかかるうえに、月々の漢方薬代も2~5万円と高価になり、利用するのに敷居が高かった。これに対して、オンラインに特化したサービスでは、スマホだけで相談から注文、決済、配送までのやり取りが完了するため、手軽に利用できる。また、対面だと言いづらい相談でもしやすく、費用も1万円以内のサブスク感覚でできるなど、敷居が低くなったことで、若い世代を中心にニーズが高まりつつある。

 こうしたニーズの高まりを受け、各社からさまざまなオンライン漢方サービスが登場してきている。ただ、一口でオンライン漢方サービスといっても、それぞれ漢方薬の処方形態(粉薬、錠剤など)、基本料金で処方される漢方薬の種類、ドクターのサポート体制の有無など、サービス内容にはかなり違いがあるようだ。

 では、主なオンライン漢方サービスの特徴を紹介しよう。MSGが運営している「あんしん漢方」は、漢方医学に精通したプロフェッショナルが構築したKampo AIを用いて、体質と症状に合った漢方薬を提案するサービス。オンラインで体質判定のアンケートに回答すると、症状と体質に合った漢方薬を提案。提案内容に同意して申し込むと、自宅に漢方薬が郵送されるという。わたし漢方が運営している「わたし漢方」は、専門家に相談したい人々と、薬剤師をつなぐオンラインチャット相談サービス。LINEで登録薬剤師が問診メッセージを出し、質問に回答すると、漢方薬が処方されるとのこと。

 YOJO Technologiesが運営する「YOJO」は、一人ひとりの健康に寄り添う、かかりつけオンライン薬局となっている。LINEで体質に関する質問に回答すると、医療アドバイザー(薬剤師)が各自に合った漢方薬を選定してくれる。VARYTEXが運営している「KAMPO MANIA」は、いつでもどこでもスマホ1台で自分の証をチェックし、専門家(医師・薬剤師等)に相談できるサービス。基本情報を入力後、証セルフチェックをすると証タイプやおすすめの漢方薬が表示され、オンラインショップから購入することができる。

 今回、これらのオンライン漢方サービスの中でも、画期的なAIシステムを導入し、中医師が確立した体質判定を取り入れるなど、漢方薬見極めの精度の高さと、コスパの良さで、オンライン漢方の最先端をいく「あんしん漢方」のサービス概要や今後の展開について、MSGの飯寿行社長に話を聞いた。

 「病気ではなく、検査数値にも問題はないが、不調を抱える現代人は増加している。慢性疲労・倦怠感、睡眠不良、ストレス過多、気分障害、不定愁訴、肥満などを含む、いわゆる慢性病に対して、現代医学は適切な処方を持っていないが、漢方はこうした不調に優れた効果を発揮することが多い。それは『病気を見る』のではなく、『病人を見る』医学であり、『症状のある部位を診る』のではなく、『症状のある部位を含むその人の全体を診る』医学であるからだと思っている。現代人の複雑多様な病に対して、対症療法という合理性と普遍的法則を求めた現代医療ではなく、経験科学の所産で『症状のある部位を含むその人の全体を診る』テーラーメイドの考え方を持つ漢方医療が評価されるのは、『自分に合った医療』を求める時代のニーズではないかと考えている」と、漢方のニーズが高まっている背景について語る。

 「一方で、漢方医学の教育については、2011年にようやく医学教育のカリキュラムに入ったばかりで、教育基盤はまだ発展途上であるのが実状。実際に90%程度の医療機関で漢方薬が使用されているものの、日本東洋医学会認定の漢方専門医は2000名程度で、日本全体の医師総数32万人から見ると、わずかに0.6%にとどまっている。また漢方では、一人ひとり異なる心身の状態や体格、体質、生活環境など、さまざまな要素を多角的、総合的に見て、その人の今の状態に適した生薬の組み合わせや最適な摂取量を考えるのだが、その判断要素は実に多岐にわたり、また生薬の種類も膨大な数がある。専門家一人の知識や経験だけでは、そのすべてをカバーすることは難しいといえる」と、薬剤師による漢方薬処方は精度に課題があると指摘する。「当社が提供するオンライン漢方サービス『あんしん漢方』は、AIを導入することで、高精度の漢方薬処方を実現している。当社のAIシステム『Kampo AI』は、過去の著効例を中心にデータを収集し、2015年のサービススタートから延べ1万名以上のデータを収集している。現在進行形で蓄積され続ける個々のデータを解析し、今もその精度を上げ続けている」と、「あんしん漢方」は、他社サービスとは一線を画する漢方薬処方の精度を実現していると強調した。

 「ただし、漢方の効能効果や副作用は、必ずしも漢方薬だけに起因するものではなく、生活スタイルによるものも大きいため、まだ完全にAIが正しく判断できるシステムには至っていない。あくまでも今までの研究上、相性が良いであろうと推察できる漢方薬を導き出している。そのため、『あんしん漢方』では、効能効果や用法用量、副作用、他の薬との飲み合わせなどは、AIが出した結果に対して薬剤師がすべて確認し、チェックおよび修正を行っている。生活スタイルなどの要素も含めたビッグデータによって精度が上がっていけば、ゆくゆくはAIだけで判断できる未来もあると思っている」と、AIの判断結果を踏まえて、薬剤師が最終確認して漢方薬を処方していると教えてくれた。

 また、「あんしん漢方」は、2~3種類の漢方薬をカスタマイズして処方し、基本料金が30日7678円(税込)という、他社サービスに比べてコストパフォーマンスが高い点も特徴となっている。この理由について、飯社長は、「漢方で根本的な改善を実感するためには多少の時間を要する場合もあり、継続しやすい手頃な価格設定が購入に際しての重要な要件だと考えている。これを実現するために、当社では、広告費のスリム化、効率化を図っている。さまざまな広告手法を駆使して、できる限り効率の良い告知に知恵を絞っている。そして、DXによるたゆまぬアップデートとシステム構築に力点を置いている。これによって人材や時間に無駄なエネルギーを消耗されることなく、サービスの向上と価格の抑制を実現している」と説明した。「さらに、『あんしん漢方』では、一般用の漢方薬の処方だけでなく、医師による診断が適切だと思われた場合、オンライン診療による医療用漢方薬の処方も案内している。一般用漢方薬と医療用漢方薬に含まれる生薬の種類は同じだが、医療用漢方薬は医師の診察に基づいて処方される漢方薬となっている。オンライン診療の料金については、自由診療の場合、診察費、漢方薬、サポートが付いて14日分が7000円(税込)、28日分は1万2000円(税込)で提供している」と、必要に応じて、西洋医学と漢方に精通した医師のアドバイスや診断を受けられ、医療用漢方薬の処方にも対応していると訴えた。

 今後の展開について飯社長は、「新たな取り組みとして、ストレス社会の改善を目的に、村田製作所の自律神経機能年齢を測定する機器と漢方薬との実証研究を進めている。研究では、漢方薬を1包服薬し、45分後に8歳の若返りを計測した他、1日3包の漢方服薬によって自律神経機能年齢が8時間後に50歳若返った例なども確認されている。年内には、ストレス改善を目的とした漢方サポートプランもスタートする予定だ。これを継続することにより、日中の自律神経のコントロールも可能になるのではないかと思っている」と、「あんしん漢方」を通じてストレス改善もサポートしていくのだと意欲を見せる。「他には、通常の中医師が行っているような診療スタイルをサービスに組み込み、精度をさらに上げていきたいと考えている。たとえば舌、顔の情報をマイページにアップしてもらい、より多くの情報からAIが分析できるサービスを計画している。また、体質に合った食事やツボ、運動療法などのアドバイスも強化していく」とのこと。「さらに、専門医の診察を受けたほうがよい場合などのセーフティーネットとして、全国で直接診察してもらえる大学病院などの医療機関とネットワークを強化することで、より安心安全にオンライン漢方サービスを利用できるようにしていく。また、ダイエットや冷え症などに悩んでいる人には、スポーツジムや温浴施設などとの協業によってヘルスケアを実践できるようにしていきたい」と、医療機関やヘルスケア施設との連携も強化していく考えを示した。

 「あんしん漢方」のサービスが、身体の不調だけでなく、ストレスの改善やヘルスケアにも広がることで、心身の悩みを抱える多様な利用者の漢方ニーズに応えることが可能になる。「あんしん漢方」の先進的な取り組みによって、今後、さらに幅広い人々にオンライン漢方サービスが浸透していくことが期待される。

MSG=https://www.msgcorp.jp/


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