医療最前線

医療・福祉モビリティ協会、COVID-19禍で要望が高まる「感染者対応搬送車」の「標準仕様」を策定し試作車を開発、自治体・医療機関・民間搬送事業者などに安価で提供

2021.03.03 19:59 更新

 一般社団法人医療・福祉モビリティ協会は、特種用途車両および機器の設計・製造・販売を手掛けるエスティサポートの協力のもとに、業界初となる感染者対応搬送車の「標準仕様」を策定するとともに、その試作車を開発したことを発表した。

 現在、COVID-19をはじめとする感染者の搬送は逼迫しており、消防機関の救急車はもとより、保健所が所有する車両、民間救急車、病院救急車を含めても、出動・対応が追いついていないという現状がある。今回の標準仕様の策定および試作車の開発は、こうした課題に直面している自治体・医療機関・民間搬送事業者などに、感染者対応搬送車を低コスト・短納期で提供し、状況を緩和・解決することを目的としている。

 感染者対応搬送車では、すでに自動車メーカー各社が、「社会貢献の一環」として、運転席と後部座席に仕切りを設置した車両を開発し、自治体や医療機関向けに提供を行っている。しかし、その提供の方法は多くの場合、「貸与」であるため、提供できる台数は限られてしまっているのが現状とのこと。それでも自治体からの要請は後を絶たず、自動車メーカーの中には社用車や販売店の在庫車をかき集めて対応しているケースもあるという。

 そこで今回、医療・福祉モビリティ協会では、自治体や保健所、医療機関など、より多くの現場で容易に感染者対応搬送車を導入でき、負荷軽減につなげることを目的に、低コスト・短納期で製造できる感染者対応搬送車の「標準仕様」を策定するとともに、実際の機能・性能を確認してもらうための試作車を開発した。これにより、個別に対応した際に、ヒアリングから採寸、部品調達、加工・アセンブリを含めて約3か月程度は必要であった製作期間を1か月以内に短縮。工数削減にともない、80万円代での製造(車体価格は別)を可能とし、必要とする現場に迅速に納車し、運用開始できるようになった。

 「標準仕様」のポイントとしては、車種にはトヨタの5ナンバーサイズのミニバンシリーズ「ヴォクシー」、「ノア」、「エスクァイア」を選定。後部座席に車椅子で乗り降りできる福祉車両としての機能を実装(別途オプション)する。また、運転席側と後部座席側の間を密閉する「隔壁」を設け、飛沫感染などのリスクを回避。床面をロンリウム加工することにより、除菌・消毒・清掃の容易性を追求する。換気装置を実装し、飛沫核(エアロゾル)などによる感染に配慮するとともに、後席を陰圧状態とする。さらに、搬送者と患者の疎通を円滑にサポートするインターフォンを実装。医療機器・検査機器の仕様を可能とする電源設備(AC100V用コンセント:300W相当)を搭載する。

 現場での対応は、ケースバイ・ケースになると思われるが、基本的には行政における救急業務の補完的な役割を担う。具体的には、「感染が疑われる人や濃厚接触者を、PCR 検査を実施する医療機関へ搬送」、「PCR検査などで『陽性』と判定された人を、症状に応じて自宅・宿泊療養施設・医療機関などへ搬送」、「高齢者施設など、施設でクラスターが発生した際の搬送最適化」、「感染により入院し、高度医療を受けていた重度・中等症患者が回復した際の民間医療機関などへの移送」などを想定している。

 これによって、保健所などにおける搬送・移送の手配業務が効率化され、軽減されれば、その分のリソースを追跡調査や患者のケアに振り向けることができる。また、濃厚接触者がPCR検査などを受けに行く際のリスクも担保できるようになるという。さらに、フレキシブルな搬送・移送手段が確立すれば、現在、多くのCOVID-19患者を受け入れ、病床が逼迫している公立病院・公的病院から、回復時に民間病院に転院させていくというプランも、より現実味を帯びてくるとのこと。

 また、厚生労働省は「インフルエンザに代表されるような感染症は、10年から40年の周期で大規模流行の傾向にある」と警鐘を鳴らしている。2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の豚由来の新型インフルエンザ、2012年のMERS(中東呼吸器症候群)も記憶に新しく、加えて昨年からのCOVID-19パンデミックを考えると、グローバル経済を前提に国境を超えた人の流れが必然となった現代においては、「有事」を想定した「備えあれば憂いなし」の対応も求められている。

 さらに、感染者搬送車は、「平時」であっても様々なバリエーションでの活用が想定される。例えば、医療・福祉・住まい、そして生活支援・介護予防の連携を踏まえた「地域包括ケアシステム」。ここでは、ヒト・モノ・カネ・情報の連携のみならず、そこに「搬送」という機能が付加されることで、在宅診療の充実をはじめ、地域医療の向上につながることが期待される。

 感染者対応搬送車は受注生産(現状では月産10台)で、価格は88万円から(車体価格は別、車椅子用リフトはオプション)となる。

一般社団法人医療・福祉モビリティ協会=https://mwma.jp
感染者対応搬送車特設ページ=https://mwma.jp/sp01/


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