医療最前線

アンジェス、先進的なゲノム編集技術を持つ米EmendoBio社を買収、遺伝子治療プログラムと次世代ゲノム編集プラットフォーム技術を有する世界初の企業へ

2020.11.10 19:52 更新

 大阪大学発のバイオ製薬企業であるアンジェスは11月9日、先進的なゲノム編集技術を有する米EmendoBio(エメンドバイオ)社の発行済株式の最大100%を取得し、子会社化することを発表した。買収金額は、2億5000万米ドル(262億5000万円、1ドル=105円)で、買収にかかる対価を主に株式発行によって充当する方法で行う。同日に行われた発表会では、エメンドバイオ社を買収する目的や同社が持つゲノム編集技術の概要、今後期待されるシナジー効果について説明した。

 アンジェスは、創業以来遺伝子治療の開発に携わり、2019年に世界で初めてプラスミドDNAを用いたHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子治療薬を製品化することに成功している。現在、遺伝子治療で開発されている主な手法としては、「プラスミド」「ウイルスベクター」「ゲノム編集」の3つがあり、このうちゲノム編集を用いた治療法はまだ製品化されていないという。ゲノム編集は、特定の塩基配列(ターゲット配列)のみを切断するDNA切断酵素(ヌクレアーゼ)を利用して、遺伝子を改変する技術で、世界中でヒトへの適用が待ち望まれている。その中でアンジェスは、ゲノム編集の次世代キープレーヤーとしてエメンドバイオ社に着目。昨年から投資を行い、同社の持分法適用関連会社としていた。

 今回の買収の狙いについて、アンジェスの山田英社長は、「エメンドバイオ社の買収によって、既存の遺伝子治療法ではアプローチできなかった、多くの適応症に対応できるゲノム編集技術を獲得することができる。また、当社が持つ遺伝子治療プログラムと、エメンドバイオ社が持つゲノム編集プラットフォームを融合することで、グローバルマーケットに向けた展開を加速する。そして、両社の経験を活用し、いち早くゲノム編集の人への実用化を目指していく」と述べた。

 続いて、エメンドバイオ社が有するゲノム編集技術について、アンジェス特別顧問の笈川義徳氏が説明した。「エメンドバイオ社は、ゲノム編集の能力を拡大することを目的として、イスラエルを代表する総合的な基礎研究機関であるワイツマン科学研究所の科学者によって2015年12月に設立された。合成生物学を駆使することで、ゲノム編集の領域で対応できる適応症を拡大し、いままで治療できなかった疾患を治療することを目指している」と、エメンドバイオ社の概要を紹介。「エメンドバイオ社が独自開発したOMNIヌクレアーゼ(酵素)は、標的ごとに最適化され、より精度高く、誘導された場所の特定の場所を切り取ることができる。さらに、OMNIヌクレアーゼを用いたゲノム編集では、対をなす対立遺伝子の一方を傷つけることなく、もう一方のみをターゲットにして編集できるアレル特異的遺伝子編集を実現した。これによって、片方の遺伝子だけに異常がある数多くの優性疾患を初めて治療することが可能となった」と、エメンドバイオ社が開発したOMNIヌクレアーゼによる先進的なゲノム編集技術について解説した。

 「OMNIヌクレアーゼを用いたアレル特異的遺伝子編集は、ゲノム編集による治療の適用範囲を大きく広げることができると期待されている。今後考えられる適応症としては、がん、神経系、眼科、皮膚科、免疫疾患、血液系、循環器系、治療法のない常染色体顕性遺伝子疾患、厳密な発現調節を要する遺伝子疾患など多岐にわたる」と、広範囲の適応症に対する治療法を開発できるようになるという。「市場規模としても、従来のゲノム編集による遺伝子治療が約9000億円であるのに対し、アレル特異的遺伝子編集では約1兆1000億円が見込まれており、市場全体が倍以上に拡大することになる」と、適応症の広がりにともない、ゲノム編集のターゲット市場も一気に拡大するとの見通しを示した。

 エメンドバイオ社買収による今後のシナジー効果について、アンジェスの山田社長は、「当社の国際的規制を踏まえた、前臨床、CMC、臨床開発のノウハウ、およびGMPに沿った製造管理に関するノウハウなど商業化に必要な知見と、エメンドバイオ社が持つOMNIヌクレアーゼが融合することで、ゲノム編集技術の人への適用により近づくと考えている」と、ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療用製品の早期の実用化に期待を寄せる。「この買収によって、当社は遺伝子治療プログラムと次世代ゲノム編集プラットフォーム技術を1社で所有する世界初の企業となる。エメンドバイオ社の米国を含むグローバルでの事業展開を加えることで、『遺伝子医薬のグローバルリーダー』を目指して加速していく」と意欲を見せた。

アンジェス=https://www.anges.co.jp/


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