医療最前線

第17回コーヒーサイエンスセミナーを開催、コーヒーの抗糖尿病作用および抗肥満成分の効果を発表

2013.09.24 19:54 更新

 全日本コーヒー協会は、コーヒーに関する理解を深めてもらうことを目的に、またコーヒーに関する知識の啓発普及を目的として、コーヒーサイエンスセミナーを例年開催している。今年は9月6日に、コーヒーと成分に関するテーマの2つの講演を実施。東京大学大学院 農学生命科学編休暇 博士課程在学中の高橋祥子先生が、コーヒーポリフェノールの抗肥満と抗糖尿病効果について発表した他、名古屋大学大学院 生命農学研究科 教授の堀尾文彦先生が、コーヒーの抗糖尿病作用に関する研究成果を発表した。

 「当協会では、コーヒーをもっと多くの人に楽しんでもらいたいとの思いから、10月1日を“コーヒーの日”と定め、認知拡大に務めるとともに、コーヒーの効果効能についてアピールしている」と、全日本コーヒー協会 広報・消費振興委員会の熊谷和宏委員長が挨拶。「コーヒーはホッとしたいときや、癒しを得たいときに楽しむ飲料として知られている。そんなコーヒーには、学術的にも健康に寄与することが明らかとなっている」と、コーヒーは私たちの健康にプラスに作用する効果が期待できるとのこと。「今回コーヒーサイエンスセミナーという機会を設けて、コーヒーの健康機能を伝えていきたいと考えている」と、コーヒーの健康効果について広く知らしめたい考えを示した。

 続いて、神奈川工科大学応用バイオ科学部栄養生命科学科の石川俊次先生が挨拶した。「コーヒーには発がんの抑制や糖尿病発症機能の抑制などが明らかになりつつある。今回のセミナーでは、この抗糖尿病作用について深く学んでもらいたい」と、コーヒーの新たな知見について学習してほしいと話していた。

 そして、岐阜大学大学院医学系研究科 疫学・予防医学 教授の永田知里先生が「コーヒー摂取と糖尿病発症に関する疫学研究からの知見」と題した講演を行った。「エビデンスは、無作為臨床試験によって得られるものが高いとされている。しかし、規模や予算面などから疫学的に観察する手法を用いてエビデンスを得る手法がある」と、エビデンスを得る方法にはいくつかの種類があるという。「今回、コーヒーの抗糖尿病作用のエビデンスを疫学的に研究するのに用いた手法はコホート研究と呼ばれるもの。これは長期間データを蓄積し、リスクを算出していく研究となっている」と、研究方法について解説してくれた。「研究では、コーヒーの摂取量の他に、影響を及ぼす可能性がある飲み物の摂取量についても聞いている」と、蓄積すべきデータの内容について言及してくれた。

 「このコホート研究の結果、1日に6杯以上コーヒーを飲んでいる人は糖尿病のリスクが低減することがわかった」と、米国で行われたコホート研究を紹介。「いくつかのコホート研究が集まったところで、メタアナリシスという手法を用いる。これは、いままでの研究の平均を導くものとして行われる」と、メタアナリシスについて説明してくれた。「メタアナリシスの結果、コーヒー摂取と糖尿病リスクについては、コーヒー1杯につき7%のリスク減少につながることがわかった。カフェイン抜きコーヒーもリスクが抑えられることもわかった。一方、お茶はコーヒーほどのリスク低減を示さなかった」と、カフェインあり、なしに関わらず、コーヒーには糖尿病リスク低減が期待できることが明らかとなった。「次の課題としては、糖尿病リスクを低減するメカニズムについて研究すること。この点については現在進行形で研究がなされている」と、原因の解明に取り組む研究がなされていると話していた。

 次に、東京大学大学院 農学生命科学編休暇 博士課程在学中の高橋祥子先生が「コーヒーとポリフェノールの抗肥満、抗糖尿病効果の作用機序に関する系統的検討」について発表した。「当研究室では、ニュートリゲノミクスにおける網羅的解析を行っている。網羅的に見ることで、相対的な分子を発見することができる」と、研究方法について解説。「生活に溶け込んだコーヒーが糖尿病抑制に何らかの影響を与えるのではないかと考えられる中、そのメカニズムについてはいまだに不明であることから、今回、オミクス解析を用いて、生体応答を網羅的に把握し、さらに培養試験を行った」と、研究の背景とその手法について説明してくれた。

 「マウスによる試験では、普通食を与えたマウス、高脂肪食を与えたマウス、高脂肪食プラス通常のコーヒーを与えたマウス、高脂肪食プラスカフェインレスコーヒーを与えたマウス、高脂肪食プラス未焙煎コーヒーを与えたマウスに分類し観察した。その結果、コーヒーを摂取していたマウスでは、体重が抑制されていた。脂肪重量についても抑制されていることがわかった」と、抗肥満作用が見られたとのこと。「肝臓の中性脂肪も同様だった。また、インスリン感受性を見た結果、コーヒー摂取したマウスでは、抵抗性が緩和されていた」と、糖尿病抑制効果についても確認することができた。

 「これらの現象を網羅的に解説するべく、トランスクリプトミクス解析という方法で分析した。この解析法は、たくさんの遺伝子の発現をみることができる。その結果、コーヒー摂取することによって、高脂肪食が遺伝子発現し、プロファイルに与える影響を緩和する方向に遺伝子変動が引き起こされることがわかった」とのこと。「高脂肪食による影響では、これらの遺伝子群で発現。コーヒー摂取で発現量は減少していた」と、高脂肪食によって発現した遺伝子は、コーヒーの摂取によって、その量が抑制されることがわかった。「さらに、コーヒー摂取によってTCA回路に関わるたんぱく質が上昇していた。コーヒーによってTCA回路が促進されていることがわかった」と説明。「コーヒー群の中でも、とくに、GC摂取による代謝物変動への影響を与えていることがわかった。そして、GC摂取によって尿素回路に関連する代謝物の増加がみられた」と、尿素はエネルギーの消費に影響を及ぼすと述べていた。「コーヒー摂取群に、HFGC群において尿素回路が活性化されている可能性が示された。コーヒー摂取に対する生体応答の全体が見えることによって、統合解析から立体的な現象を示すことができた」と、今回の研究の成果をまとめていた。

 「培養試験では、ヒト肝臓由来の細胞を用いて分子レベルの検討を行った。ミトコンドリア活性測定では、コーヒーでミトコンドリアの活性が上昇した。クロロゲン酸はミトコンドリアのみ上昇させていた」とのこと。「クロロゲン酸でTCA回路の酵素の活性が上がることが確認できた」と研究結果を発表した。「iTRAQ法で網羅的に解析した結果、クロロゲン酸によって変動したたんぱく質を見ると、解糖系酵素とミトコンドリア酵素に変動があった」と、クロロゲン酸がある影響で、TCAサイクルの活性が上がり、エネルギー産生が上がると示唆していた。

 2つ目の研究として、名古屋大学大学院 生命農学研究科 教授の堀尾文彦先生が、「モデル動物を用いたコーヒーの抗糖尿病作用の解析」について発表した。「インスリン分泌不全とインスリン抵抗性が複雑に組み合わさることによって、2型糖尿病は発症する。そこで、2型糖尿病自然発症モデルマウスで実験を行った結果、コーヒーは高血糖発症抑制作用を発揮することが示された。また、コーヒーがインスリン感受性を改善することによって、高血糖発症抑制作用を発揮することが示された」と、実験データを用いて説明していた。「コーヒーの抗糖尿病作用機構の検討を行ったところ、脂肪肝も改善することがわかった。以上の点から、コーヒー摂取によって、脂肪組織では、炎症性サイトカインの発現低下および血中濃度の低下がみられ、肝臓では、脂肪肝の改善が見られた。これがインスリン抵抗性の改善につながり、高血糖発症を抑制しているものとみられる」との見解を示していた。

 「2型糖尿病自然発症モデルマウスにおいて、骨格筋と肝臓におけるインスリンによるAktのリン酸化は、コーヒー摂取によって促進された。つまり、コーヒー摂取は骨格筋と肝臓におけるインスリンの作用を増進させることが示唆された」と、実験結果をまとめていた。「また、コーヒーおよびカフェインの摂取は、高脂肪食誘導性2型糖尿病の耐糖能(糖代謝能)を向上させた。そして、インスリン抵抗性を改善した。つまり、インスリン作用を向上させた」と、2型糖尿病自然発症モデルマウスでみられた結果と同様であると解説していた。

 


 「膵臓ランゲルハンス氏島(ラ氏島)β細胞の健常性を高め、ストレプトゾトシン(STZ)に対する抵抗性を高めることができれば、1型糖尿病の発症の防御にもつながる。さらに、2型糖尿病の発症をも抑制できる可能性があるとの考えから、コーヒー、デカフェコーヒー、カフェイン摂取が膵臓ラ氏島β細胞保護作用を発揮して、スプレプトシン誘発性糖尿病を抑制する可能性について検討した」と、1型糖尿病抑制についての研究も行ったとのこと。「コーヒー摂取は、STZ投与に対してラ氏島β細胞保護作用を示し、STZ誘発性糖尿病の発症を抑制した。カフェイン以外のコーヒー成分が、ラ氏島β細胞保護において有効である可能性が示された」と、研究結果をまとめていた。

全日本コーヒー協会=http://ajca.or.jp/


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