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ネオマーケティング、コロナ禍でのオフィス利用と働き方調査、敷金の支払いで成長機会を失う「敷金ロス」が浮き彫りに

2022.07.01 18:46 更新

 生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行うネオマーケティングは、5月27日~6月2日の7日間、従業員規模300名未満で、資本金が3億円未満の賃貸オフィスビルに入居する全国の経営者を対象に「コロナ禍でのオフィス利用と働き方」をテーマにインターネットリサーチを実施した。調査では、約5割の経営者がオフィスの重要性を再認識している一方で、オフィス移転には「引越し費用」「敷金」が大きなネックになっていることがわかった。この結果を受け、オフィス移転における敷金の支払いで成長機会を失う「敷金ロス」について、経済学者の飯田泰之氏が解説した。

 新型コロナウイルスの影響で、リモートワークなどの新しい働き方を導入した企業は多いと思われる。終息が見え始め、都心のオフィス空室率も改善しはじめた今、働く場所や働き方について改めて考えているのかもしれない。そこで、今回は「コロナ禍でのオフィス利用と企業経営」についてアンケート調査を実施した。

 新型コロナウイルス感染症拡大後に実施した働き方について聞いたところ、「在宅勤務(リモートワーク)」63.5%、「時差出勤」45.6%、「時短勤務」30.8%の順となった。しかし、現在は「在宅勤務(リモートワーク)」50.9%、「時差出勤」33.1%、「時短勤務」20.6%と10ポイント以上減少している結果となっている。

 では、リモートワークのどのようなところにデメリットを感じているのか。経営者の回答は、「コミュニケーション不足」65.6%、「業務がリモートワークで対応できるものに限られる」32.7%、「人事評価がしづらい」29.6%となった。リモートワークに関して計9割が何かしらのデメリットを感じているようだ。

 新型コロナウイルス感染症の収束後、在宅勤務/リモートワークはどのように変化すると思うかを聞くと、「増加すると思う」と回答した人は計27.8%、「変わらないと思う」と回答した人は39.3%、「減少すると思う」と回答した人が計32.9%という結果になった。新型コロナウイルス感染症の収束後は、リモートワークが増えるよりも減ると思っている経営者が多いことがわかった。

 コロナ禍以降(2019年12月以降)、「リアルなコミュニケーションの重要性」について実感したと計74.0%の経営者が回答していた。また、「リアルな会議の重要性」に関しても計61.1%が実感していた。「オフィスビルの重要性」に関しても計46.7%が実感しており、改めて働く場所や働き方について考えている経営者が多いと思われる。

 オフィスビルで働く上でのメリットに関しては「気軽にコミュニケーションが取れる」65.8%、「業務に集中しやすい」47.8%、「働くための環境が整っている」45.5%という順になった。オフィスでは、リモートワークでのデメリットとして挙がった「コミュニケーション不足」、「業務がリモートで対応できるものに限られる」という項目を解消できると感じている経営者が多いようだ。

 理想のオフィスについて聞くと、「空間にゆとりがある」が49.9%で最多となった。新型コロナウイルスの影響か、密を避けたオフィスが理想であると考える経営者が多いようだ。次いで、「集中できる空間」48.2%、「コミュニケーションが取りやすい設計」44.8%と回答した人が多い結果となった。

 新型コロナウイルスの影響で改めて見直されるオフィスだが、前問のような理想のオフィスを求め、計46.8%の経営者が「移転をしたい」と考えていることがわかった。しかし、「移転したいので計画をしている」は12.8%にとどまり、「移転したいが計画していない」と回答した経営者は34.0%となった。

 また、「移転したいが計画していない」と回答した経営者340名に対し、その理由を聞いたところ「引越し費用がかかるから」52.9%、「敷金(保証金)がかかるから」32.6%と費用がネックとなり、移転に踏み切れない経営者が多いことが調査から明らかになった。

 従業員1人あたり3万円程度かかるといわれる引越し費用。一方、「敷金(保証金)」は賃料の6~12ヵ月分が相場ともいわれている。そこで、入居しているオフィスビルの創業時や移転時に支払った敷金(保証金)を聞くと、 平均455万円となった。中には、2億円もの敷金(保証金)を預けている中小・スタートアップ企業経営者も。敷金(保証金)に対し、「高いと感じた」と回答した経営者は計64.6%となっている。移転の際に、こうした費用が再度必要になることを懸念している経営者が多いと思われる。

 敷金(保証金)についてさらに聞いたところ、敷金(保証金)は「取られて当然だ」という考えが根強く、計49.6%と約半数となった。また、原状回復費用や償却分以外は返却される敷金(保証金)だが、約3人に1人の経営者は「返ってこないものだ」と思っていることがわかった。中には「支払った金額を覚えていない」と回答した経営者も29.0%おり、大きな初期コストのはずが、低い関心であることがうかがえる結果となった。

 敷金(保証金)について、増資または負債で資金調達を行った経営者の45.6%が「そのお金があれば成長できていたと思う」と回答した。反対に、自己資金で事業を行っている経営者では31.0%と、さまざまな方法で資金調達を行った経営者のほうが、敷金(保証金)を、本来なら事業成長に活かせる資金だと捉えていることがわかった。

 敷金(保証金)について、増資または負債で資金調達を行った経験のある経営者の39.3%が「そのお金があれば社員をもっと雇用していたと思う」と回答した。自己資金で事業を行っている経営者では、26.3%と、10pt以上もの差が生まれる結果に。さまざまな方法で資金調達を行った経営者のほうが、社員雇用の機会を失ってしまったとも考えられる。

 また、増資または負債で資金調達を行った経営者の42.7%が「敷金(保証金)が原因で、成長資金をセーブした」と回答した。自己資金で事業を行っている経営者の32.1%と、こちらも10pt以上の差に。資金調達を行っている経営者のほうが、成長資金をセーブし、拡大や成長する機会を失ったといえるかもしれない。

 今回の調査結果を受けて、経済学者の飯田泰之氏は、「敷金・保証金は事業展開の大きな足かせとなる。中小・スタートアップ企業を対象とした今回の調査によれば、敷金・保証金額の平均値は455万円、最大2億円となっている。企業のスタートアップ時に十分な余裕資金を持つ事業主は多くはない。ごく小規模な事業を含めても、主に自己資金で事業をする経営者は28.7%にすぎず、創業から間もないほど、企業規模が大きいほどにその割合は低い。金融機関からの借入が主な資金調達手段となる企業においては、特に400万円を超えるオフィス開設・移転の初期費用は無視できる金額ではない。これは敷金・保証金支払いによって失われた支出を資金調達手段別に観察することからも理解できる。『敷金(保証金)がなければできたこと』について、金融機関から借入をしている企業は主に自己資金で経営を行う企業に比べ、『事業成長の足かせになったと思う』という選択肢への同意が10pt以上、『借入金を増やさなくてはいけなかった』との回答で20pt近くも高くなっている」と、敷金は、中小・スタートアップ企業にとって大きな足かせになっていると指摘する。

 「かつては無利子で預かり、それをさまざまな形で運用することができる敷金・保証金は、不動産オーナーにとって第二の家賃ともいうべき存在だった。しかし、低金利と金融商品の多様化により、退去時に返済する必要のある資金を一時的に預かるメリットは薄れている。残された敷金・保証金の機能は借主の故意・過失や倒産による経済的損失を備えるためのバッファ、修繕費等の先払いとしての役割に限定されるようになっている。これらの多くは保険や債務保証によってカバー可能なリスクである」と、不動産オーナーにとっても敷金を預かるメリットは薄れているのだという。

 「敷金・保証金は、金融上の制約の多いスタートアップ企業・中小企業から、担保化可能資産を持つことから平均的には金融上の制約が少ない不動産オーナーへ流動性の供与という性質を持っており、資源配分上も好ましいものではない。これは、敷金を支払うことによって、本来の成長資金に使えずに成長機会を損失する『敷金ロス』が生じている状況だといえる。成長企業が裁量的に利用可能な資金を増大させる敷金・保証金から債務保証方式への移行は、不動産オーナーへのデメリットは小さく、企業へのメリットが大きい。これからの起業・スタートアップの増大というマクロの政策目標の達成に向けても、その圧縮は少なからぬ効能を発揮しうるのではないだろうか」と、起業やスタートアップをさらに増やしていくためにも「敷金ロス」の圧縮が重要であると訴えた。

[調査概要]
調査方法:ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用したWEBアンケート方式で実施
調査対象:アイリサーチ登録モニターのうち、従業員規模300名未満で、資本金が3億円未満の賃貸オフィスビルに入居する全国の中小企業・スタートアップ経営者
有効回答数:1000名
調査実施日:5月27日(金)~6月2日(木)

ネオマーケティング=https://neo-m.jp


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