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JTB、年末年始(12月23日~来年1月3日)の旅行動向見通し、国内旅行者数は1800万人と対前々年比-38.5%であるものの対前年比+80.0%に

2021.12.10 11:33 更新

 JTBは、「年末年始(12月23日~1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しをまとめた。なお、今期も夏季同様、新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下、新型コロナ)の世界的拡大によって海外渡航が制限されているため、国内旅行のみを対象とした。同レポートは旅行動向アンケート、経済指標、業界動向や予約状況などから推計している。その結果、国内旅行者数は1800万人で、対前々年比-38.5%(対前年+80.0%)を見込む。地域観光事業支援も活用した都道府県内・近隣県への「エリアツーリズム」が主流とみられる。旅行に行きやすい雰囲気になった一方で、感染防止の意識も根付き「部屋食や個室で食事できる施設を選ぶ」「少人数での旅行にとどめる」旅行者が多いものと推察される。

 新型コロナが世界的に拡大してから2度目の年末年始を迎えようとしている。ワクチン接種が進むにつれ、新型コロナは一部の国・地域を除き下火に向かったように思われ、それまで滞っていた経済活動も多くの国と地域が新型コロナとの共存に踏み切り、活発化した。一方、新たな変異株であるオミクロン株が英国をはじめとする欧州や香港、日本でも検出されるなど、世界的に拡大する兆しがみられている。旅行分野においては、一時、国際航空便の再開やワクチン接種完了者を対象とする、到着地での隔離期間の短縮などの制限緩和が図られ、旅行促進が期待されたが、新たな変異株で観光・旅行業が再び打撃を受けることが懸念される。

 日本国内では、首都圏などの大都市圏を中心に、1~9月の大半において緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が適用され、旅行や外食、イベントなどに多大な影響を及ぼした。新型コロナの感染者数は8月をピークに減少し、9月30日に緊急事態宣言などが全面解除された。国や自治体は感染対策を徹底しながらも、会食の人数制限やイベントの開催制限に対し、12月からの解除を発表した。また、旅行需要喚起策として期待されている「GoToトラベル」は、来年以降の実施となることがほぼ決まっているが、再開されるまでの代替として、県民割などの「地域観光事業支援」が12月1日現在、東京都を除く46道府県で実施している。一方、安全・安心の旅行の実現を目指して実施した「ワクチン・検査パッケージ」の技術実証が行われ、その結果をもとに、観光庁が「旅行業・宿泊業におけるワクチン・検査パッケージ運用ガイドライン」を策定した。

 人々の旅行意欲に関しては、JTB総合研究所による緊急事態宣言解除直後の調査「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する調査(2021年10月実施)」によると、「今後1年間に国内旅行を予定・検討している人」は前回調査(2021年7月実施)から微増にとどまっており、不安や慎重な気持ちに大きな変化は見られないようだ。安全・安心に向けた様々な取り組みが旅行意欲の向上につながることが期待される。

 11月の政府の月例経済報告によると、景気は「厳しい状況が徐々に緩和されつつあるものの、引き続き持ち直しの動きに弱さがみられる」となっており、回復にはまだ時間がかかりそうだ。しかしながら、個人消費は10月から上方修正されており、今後の消費拡大が期待される。総務省の「家計調査」においては、4~6月は前年の反動が表れているものの、消費活動が行われている様子がうかがえる。

 日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」の「現在の暮らし向き(ゆとり)」をみると、9月調査では「ゆとりが出てきた」の割合が増加、「ゆとりがなくなってきた」の割合が減少しており、生活のゆとり意識は徐々にではあるものの改善傾向となっている。

 一方、懸念材料としては、様々な分野において商品・原材料の価格が軒並み上昇していることがあげられる。一例として、ガソリン価格は11月29日時点で給油所小売価格が168円を超えまた。この影響を抑えるため、日本やアメリカでは石油の国家備蓄の一部を放出する対策を施し、価格の低下および安定化を図っている。

 JTBが実施したアンケートで、自身の生活と年末年始の旅行について当てはまる状況を聞いたところ、自身の生活では「昨年に比べて収入が減った(14.4%)」が2020年度調査(19.1%)と比べるとやや減少した。一方で、「将来が不安なので、貯蓄や資産運用を増やしている(14.8%)」は同調査(11.7%)を上回っており、将来の不安に備えた対応も着実に行われている様子がうかがえる。年末年始の旅行については、「昨年より長く休みが取れそうだ(4.7%)」が2020年度調査(5.8%)よりやや減少しており、日並びの悪さもあり、長期間の休みがとりにくい状況が考えられる。さらに「来年は旅行できそうにないので、今年は旅行に行く(2.8%)」が同調査(1.9%)に比べて増加し、先行き不透明ながらも旅行への意欲が見られる。

 また、「昨年に比べてお金をかけて豪華に過ごす予定(3.4%)」は2020年度調査(2.3%)に比べて増加、逆に「昨年に比べてお金をかけずに質素に過ごす予定(13.8%)」は22.1%から8.3ポイント減少した。

 「今後1年間の旅行の支出に対する意向」について、「コロナ前(2019年以前)」と「コロナ禍(2020年以降)」とそれぞれ比較して聞いた。「コロナ前(2019年以前)に比べて支出を増やしたい」と回答した人は11.2%、「コロナ禍(2020年以降)に比べて旅行支出を増やしたい」は17.3%であり、感染拡大が始まった昨年よりは支出を増やしたいと考える人の割合が高い結果となった。

 今年の年末年始の一般的な休暇は、12月28日を仕事納めとすると、1月3日までの6連休になる。その前後は平日が続くため休みが取りにくく、例年に比べて長期休暇になりにくい日並びになる。

 前述の事前調査で、年末年始期間中(2021年12月23日~2022年1月3日)の帰省を含めた旅行意向を聞いた。期間中に旅行に行くかどうかについては、「行く(8.6%)」および「たぶん行く(8.3%)」と回答した人の合計は16.9%となり、前年に比べて2.1ポイント上昇した。2019年の調査では20.0%が「行く」と回答していることから、緊急事態宣言が解除になり、新規感染者は低水準が続いているが、旅行意欲がコロナ禍前の水準まで一気に高まった状態ではないことが分かる。

 性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高い結果だった。「行く(“行く”と“たぶん行く”の合計)」は男性29歳以下が最も高く29.8%、女性29歳以下(25.2%)、男性30代(23.1%)と続いた。一方、旅行意向が最も低かったのは男女60歳以上(男性9.4%、女性6.7%)だった。

 事前調査で「年末年始に国内旅行に行く/たぶん行く」と回答した人のうち1498人に旅行の目的や動機を聞いたところ、上位から「毎年恒例なので(36.6%)」「家族一緒に過ごすため(33.2%)」「実家で親族や友人と過ごすため(29.4%)」となった。それぞれの目的や動機の割合は前年と比較すると総じて減少しているが、これは今年の年末年始に旅行に行く人が増え、目的が多様化し、分散したことが考えられる。その一方で「自然や風景を楽しみたいので(12.6%)」だけは前年に比べて0.9ポイント上昇していた。また、性年代別にみると、「実家で親族や友人と過ごすため」は前年に比べ女性の上昇率が高く、特に女性50代は前年より5.2ポイント、女性40代は2.7ポイント上昇していた。これは、帰省しコロナ禍で自由に会えない高齢の親や友人と過ごしたい気持ちの表れといえそうだ。一方、男性20代は5.6ポイント減少した。今年の年末年始の旅行はこれまでコロナ禍で帰省を控えていた人たちにとって、親族や友人と過ごす大切な機会であるということがいえそうだ。

 年末年始期間(12月23日~2022年1月3日)の国内の旅行動向については、各種経済指標、交通機関各社の動き、宿泊施設の予約状況、各種定点意識調査などをもとに算出し、1800万人(19年比-38.5%、20年比+80.0%)と推計する。また、国内旅行平均費用は3万2000円(19年比 ±0%、20年比-3.0%)、総額5760億円と推計する。旅行費用については、カレンダーの日並びおよび新型コロナによる平均泊数の低下が影響している。帰省を含むアンケート調査では出発日のピークは30日とのこと。一方でJTBの宿泊を伴う企画旅行商品の予約状況ではピークは31日となっている。

 旅行の内容について詳細を聞いた。旅行日数では、「1泊2日」が36.3%と最も多く、前年に比べて5.5ポイント上昇した。次いで「2泊3日(26.3%、前年比+1.1ポイント)」「3泊4日(15.2%、前年比-2.2ポイント)」となった。3泊以上は昨年に比べて割合が減少し、日並びの影響による短期傾向を反映している。

 同行者では、「家族連れ」が56.7%と半数以上を占めているが、昨年からは4.9ポイント減少した。新型コロナの感染拡大が比較的落ち着き、旅行に行く人が増え、同行者が昨年の家族中心から友人・知人などにも広がったからと考えられる。家族の内訳では、「子ども連れ(中学生まで)」は前年と同じだが、「夫婦のみ(18.4%)」が昨年から4.5ポイント下がった。「ひとり(22.9%)」は昨年から2.2ポイント上昇しましたが、コロナ禍前の2019年(17.0%)からは5.9ポイント増加しており、感染防止や周囲への配慮などもあってか、帰省を含む、ひとりで旅行に行く人は増え続けている。

 旅行先では、最も割合が高かったのは「関東(22.2%、前年比+0.6ポイント)」、次が「近畿(17.6%、前年比+1.3ポイント)」と、いずれも前に比べて高い結果だった。今年の、短期間の旅行の増加を反映し、「北海道(5.5%、前年比-1.6ポイント)」および「沖縄(2.1%、前年比-1.7%)」は昨年に比べて低くなった。昨年に比べて高い旅行先は「甲信越」「東北」「北陸」「近畿」とのこと。その地域を選んだ理由としては「帰省先なので(42.7%)」「行きたい場所があるので(34.3%)」「泊まりたい宿泊施設があるので(19.0%)」の順になった。

 居住地別に旅行先を見ると、「東北」「近畿」「九州」においては居住地域内での旅行需要が高まっている。

 1人当たりの旅行費用では、「1万円~2万円未満(25.5%、前年比+2.2ポイント)」が最も多く、次いで「1万円未満(21.7%、前年比+0.2ポイント)」「2万円~3万円未満(18.2%、前年比-1.0ポイント)」となった。3万円未満が全体の65.4%を占めている。

 利用交通機関では、例年過半数を占める「乗用車」だが、今年は54.7%で前年から1.6ポイント減少した。2020年の年末年始は新型コロナの新規感染者数が増加していたこともあり、乗用車を選択する人がコロナ禍前の2019年(52.7%)から2.0ポイント上昇していた。今年はそれでもコロナ禍前に比べて高い状態となっている。現在、ガソリンの価格が上昇しているため、今後の自動車利用への影響は広がるかもしれない。また全体的には公共交通機関の利用が増え、「JR新幹線(24.2%、前年比+3.5ポイント)」「JR在来線・私鉄(22.6%、前年比+1.2ポイント)」「高速/長距離バス(7.7%、前年比+1.3ポイント)」となった。航空機では格安航空会社(LCC)は昨年に比べて増加したものの、従来の航空会社は短期の旅行が増えたこともあり減少する結果となった。

 利用宿泊施設では、「ホテル」が34.6%と最も多く、次いで「夫や妻の実家(23.9%)」「旅館(18.7%)」となった。「ホテル」は前年に比べて1.3ポイント減少したが、「旅館」は0.4ポイント上昇した。旅館は2020年にコロナ禍以前の2019年に比べて3.9ポイント上昇しているので、都市部のホテル滞在と比べ地方の旅館滞在を志向する人が増えていると考えられる。

 なお、JTBでは「エリアツーリズム」を地元(居住地域)にとどまらず、都道府県内および近隣県の広域にわたり、正しい感染防止対策を取ったうえで楽しむ旅行と定義している。

 9月末で緊急事態宣言が解除になり、低水準の感染状況で年末年始を迎えようとしているが、海外では感染再拡大が深刻な地域も多く、日本国内も先行きは不透明となっている。アンケートでは、新型コロナの現状を踏まえて「年末年始の旅行で特別に考慮したこと」について昨年と同様に聞いた。最も高かったのが「家族・親族や親しい友人以外には会わない(29.5%)」で、「公共交通機関を使わずに、自家用車やレンタカーを使う(27.8%)」、「少人数の旅行にとどめる(23.7%)」と続いた。全体ではほとんどの項目で昨年に比べてポイントを下げる結果となり、「家族・親族や親しい友人以外には会わない」は前年から4.7ポイント減少した。一方で「部屋食や個室で食事ができる施設を選ぶ(16.5%)」は前年から3.3ポイント上昇する結果となり、また「少人数での旅行にとどめる(23.7%、前年比-0.4ポイント)」および「旅行することを周囲に話さないようにする(11.5%、前年比-0.7ポイント)」に大きな減少は見られなかった。以上から、感染拡大がある程度落ち着き旅行しやすい雰囲気ではあるものの、感染防止に留意し、近しい関係の人と少人数で、居住地域および近隣エリアにて短期間という「エリアツーリズム」型が増えてきたといってよさそうだ。

 次に、今後、新型コロナの感染者数が増加し、国や自治体から移動の自粛要請や飲食店の営業時間短縮要請が出された場合、旅行の予定をどうするかを聞いた。結果は「予定通り出かける」が48.6%と最も多く、「その旅行は延期または中止する(24.8%)」が続いた。

 今年の年末年始に旅行や日帰りで出かける場所として、どのような所が気になっているか聞いてみた。「自然が楽しめる場所(国立公園や花畑など景観を楽しむ)」が17.0%と最も高く、「自然を楽しめる場所(自然やアウトドアなど体験を楽しむ)」も10.1%あり、自然に触れたいという意向が高くなった。「買い出しが楽しめる場所(13.0%)」「話題の商業施設やアウトレットモール(11.7%)」「東京ディズニーリゾート(11.3%)」も昨年に引き続き人気上位となった。

 JTBの宿泊・国内企画旅行商品の予約状況をみると、地域観光事業支援の県民割などが多くの自治体で発表されており、感染対策を実施しながらも旅行への期待感が高まり前年同期比8割程度(12月7日時点)となっている。

 旅行先としては、県民割などの実施地域が多いことから、居住地域内および近隣エリアへの旅行を選ぶ傾向が顕著だった。昨年同様、車でアクセスできる温泉地や自然・景勝地への関心が高く、部屋食や貸切風呂など感染防止対策とサービスを提供する高価格帯の小規模旅館や自然に近い海や山岳地域にあるリゾートホテルが好調となっている。一方、鉄道などの公共交通機関を利用し、近隣県へ足を延ばすケースや、首都圏を中心とする各種イベントの再開に伴い、ホテル需要も増加している。

[旅行動向アンケート調査方法]
調査実施期間:11月16日~11日22日
調査対象:全国15歳以上79歳までの男女個人
サンプル数:事前調査 1万名・本調査 1498名(事前調査で「年末年始に国内旅行に行く/たぶん行く」と回答した人を抽出し本調査を実施)
調査内容:12月23日~2022年1月3日に実施する1泊以上の国内旅行(帰省を含む。商用、業務等の出張旅行は除く)
調査方法:インターネットアンケート調査

JTB=https://www.jtbcorp.jp/jp/


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