データ・リポート

矢野経済研究所、流通小売市場に関する調査、店舗数増加で売上を伸ばすCVSやドラッグストア市場は拡大も2019年は伸びが鈍化

2021.01.30 13:38 更新

 矢野経済研究所は、国内流通小売市場を調査し、現況や動向、また業種別32市場の現状と展望を明らかにした。その結果、店舗数増加によって売上を伸ばすCVSやドラッグストア市場は拡大も、2019年は伸びが鈍化。「モノを売る」ビジネスに変わり、サブスクリプション型のビジネスモデルが注目される

 2019年の国内小売市場規模はほぼ横ばいで推移したとみられる。2019年は消費増税や自然災害が消費に影響し、市場が縮小した業種が増加した。業種別では食品スーパーやショッピングセンター、カー用品専門店などが縮小に転じた。また、ここ数年店舗数拡大によって売上を伸ばしてきたCVS(コンビニエンスストア)やドラッグストアといった市場は依然として拡大しつつも、伸びが鈍化してきている。

 インバウンド(訪日外国人客)需要も拡大したものの、訪日旅行者数の多い中国や韓国、台湾では一人当たりの旅行支出が前年を下回ってきている。また、好調な伸びを示していた韓国からの訪日客数が国交悪化の影響で減少したこと、さらに中国政府が2019年1月に施行した電子商取引法(EC法)によりいわゆる「爆買い」が減少したことによって、伸びが鈍化した。また、インバウンド需要もモノ消費からコト消費に移行しているとみられるため、体験を押し出した展開をする店舗は恩恵を受けている。

 近年は、サブスクリプション型のサービスが多く登場しているが、「所有」ではなく「利用」を共有するシェアリングエコノミーの拡大や、スマートデバイス、IoTの普及など、今後もサービスが広がり続ける要因が複数ある。また「モノを売る」というビジネスのかたちが変わりつつある中、小売業においても顧客価値の提供、向上という意味において検討すべきビジネスモデルの1つとして注目する必要があるだろう。

 ここ数年の急激な訪日外国人客の伸びに支えられ、国内のインバウンド需要も旺盛であった。2015年までは百貨店、家電量販店などの株価が大きく上昇していたが、2016年に中国が関税率を改正したことで、軒並み急落した。ただ、その後も外国人観光客が伸び続けたこと、化粧品や医薬品、食料品、衣料品などは日本製品の安全性への信頼が高いこと、また、外国人観光客が訪れる地域が関西や地方などに広がったことから、お土産として商品を購入する需要が増え、インバウンド需要も復活した。

 また、化粧品は百貨店というよりもドラッグストアで求める外国人観光客が多くなったこと、ドラッグストアでは医薬品も購入できることから、ここ数年、ドラッグストアの売上拡大にもインバウンド需要は寄与している。また、インバウンド需要もモノ消費からコト消費に移行しているとみられるため、GINZA SIXなど体験を押し出した展開をする複合商業施設は恩恵を受けている。

 日本政府観光局(JNTO)によると、2020年11月までの累計で訪日外国人数は累計約405万人となっている。また、日本百貨店協会の発表している「免税売上高・来店動向」によると、2020年1月までは百貨店での購買客数が毎月40万人前後で推移していたのに対し、2月には13.4万人に急減、さらに4月には2400人まで縮小した。10月からはビジネス関連の入国規制が緩和されたものの、依然として観光目的での入国規制が継続されていることで、購買客数、免税総売上高ともに低調にとどまっている。

 新型コロナウイルス感染症拡大によって、インバウンド需要が急速に縮小したことで、インバウンド向けに販売強化していた小売企業にとっては、海外顧客の需要をどう取り戻すかが課題となっており、Tmall(天猫)やJD.com(京東商城)など越境ECへの出店対応が検討された。ただ、TmallやJD.comといった主要な越境ECサイトは参入ハードルが高く、また運用コストも高いといわれている。それに対して、SNS「WeChat」が公式アカウントを有しているブランドに提供するECサービスであれば、比較的容易に展開をスタートできるため、ここにきて日本ブランドの参入も増えているようだ。

 2020年の国内小売市場規模は縮小すると予測する。コロナ禍で2020年4月からの緊急事態宣言を受け、営業時間の短縮や店舗休業を余儀なくされたことによって、店舗における売上高が急減した。5月に緊急事態宣言が解除された後も、外出自粛によって、来店客数は低調にとどまっているところが多い。中でも、在宅勤務が増加し人出が減少したことで、ソーシャルディスタンスが保ちにくく手狭な、都心部の駅前やビジネス街にある店舗の来店客数が大きく減少し、売上も縮小している。

 一方で、郊外では都心部に比べて比較的影響が少ないか、影響があったとしても客足の戻りが早かったとみられる。そのため、これまでの店舗戦略によっては、同一市場の中でも売上が拡大した企業と縮小した企業に分かれる。

 市場別にみると、食品やTV、ゲーム、書籍など巣ごもり消費の盛り上がりを受けて、需要が大幅に拡大した市場もある。また、ほとんどの市場においてECの売上比率は大きく高まっており、ここに注力していたかいなかったか、またWithコロナへの対応が早かったか遅かったかで、業績に違いが出てきているようだ。インバウンド需要はほぼ消えたが、ここでも越境ECに取り組んでいた企業は最大マーケットである中国の消費の回復が早かったため、その恩恵を受けるとみられる。また、セルフレジをはじめとする業務の効率化、DXに取り組んでいた企業、RaaS(Retail as a Service)などの新しい考え方を取り入れようとする企業などがさらに注目されている。

[調査要綱]
調査期間:2020年10月~12月
調査対象:日本国内の流通小売企業等
調査方法:同社専門研究員による文献調査
[発刊日]12月25日(金)
[体裁]A4 393ページ
[小売価格]15万円(税別)

矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp/


このページの先頭へ