美容・化粧品

ファンケルとキリンHD、美肌機能に関わる酵素の増加と皮膚老化兆候改善を確認、今後はエイジング世代に向けたファンケルの化粧品に配合も

2021.08.08 17:11 更新

 ファンケルとキリンホールディングスは、両社の間で、2019年の資本業務提携を契機にさまざまな共同開発を進めている。昨年1月に、キリンが保有する白麹菌(黒麹菌株から突然変異株として分離され、胞子の色が白黄色であることから白麹菌と呼ばれている。黒麹菌と同様に焼酎をつくる際に使用されている)の抽出物に含まれる成分「14-デヒドロエルゴステロール(以降「14-DHE」と表記)」が、美肌機能に関わる酵素「アルギナーゼ 1(タンパク質の一種で、シミの原因となる活性酸素の発生を抑え、メラニン産生が起こらないようにバランスを調整し、シミを防ぐ力がある酵素。肌表面に多く局在する。身体の炎症時に増加し、正常化させる機能を持つ。ファンケルでは、長年研究を行い、(1)紫外線による皮膚の赤み増加を抑制、(2)メラニン刺激因子やコラーゲン分解酵素を抑制、(3)酸化によるバリア機能の低下や炎症の拡大を抑制、(4)糖化物によるダメージや老化抑制、の4つの働きについて解明している)」量を増加することを発表している。さらに今回、「14-DHE」を含有する白麹菌抽出物を配合した美容液(以降、白麹菌抽出物と表記)の連用試験を実施したところ、角層中の「アルギナーゼ 1」量が増加するとともに、幅広い肌老化の兆候が改善したことを確認した。8月6日に行われたオンライン発表会では、新たな化粧品原料開発の成功について紹介した他、両社のシナジー創出についての現状を説明した。

 「キリンとファンケルのシナジー創出の取り組みは順調に進捗。早期に成果を出すチャネルシナジーから始まり、今期は化粧品でもシナジーを創出する」と、ファンケル シナジー戦略推進室 室長の藤田伸朗常務が挨拶。「発酵・バイオテクノロジーに基づくさまざまな素材や技術といった基礎研究に強みを持つキリンに対し、応用研究に強みを持つファンケルでは、R&Dで補完関係を構築し、R&Dによるシナジー創出を加速させている」と、両社で補完し合いながら、キリンは素材出口の拡大、ファンケルは素材探索の領域拡大という効果を見出している。「また、ファンケルは、30~40代の女性が中心顧客層で、化粧品・サプリメントを展開。協和発酵バイオは、60代以上の男性が中心顧客層で、サプリメントを展開しており、チャネル・事業展開で補完関係が構築されている」と、商品だけでなく販売チャネルなどにおいても相互連携がなされていると説く。「今後は、新しい商品やサービスだけでなく、相互連携によって既存商品の活性化などにも力を入れていく」と、2社によるシナジー効果を全方位で最大化していくと意気込んだ。産技術策定について教えてくれた。

 キリンホールディングス R&D本部 キリン中央研究所の杉原圭彦氏は、キリングループの独自素材14-DHE(14-デヒドロエルゴステロール)開発と肌質改善効果の発見について説明した。「キリンの技術力の原点は、ビールづくり。ビール醸造を極める中で、原料や発酵・培養の研究が進んだ」と、「発酵&バイオテクノロジー」は、キリングループの中核となる強みなのだと強調する。「日本人は世界的にみて長寿。それは、日本伝統の麹を使った発酵食品(味噌、甘酒など)に炎症をおさえ、老化を防ぐような成分があると考え、穀物に黒麹菌を生やして黒麹発酵物を作製し、炎症をおさえる成分を探索した」と、研究の着眼点について説明する。「14-DHEは、菌類にごく微量存在する報告はあるが機能に関する報告はなかった。しかし、キリンで制御性T細胞(Treg)を増加させるユニークな機能を発見(強力に炎症をおさえる力がある)した」とのこと。「14-DHEは超希少な成分(黒麹30kgから1gしか取れなかった)で、効率よく大量に作る技術が必要となった」と、高生産株のスクリーニングを行い、麹菌類40株を選出し、研究を行ったという。「その結果、白麹から最も多く取れることがわかった」と、「白麹ステロール」の由来で量産技術を策定したのだと説明する。「ラボレベルでは、固体培養ではなく、液体培養で行った。その結果、約100倍の生産能力が見られた。工場レベルでは、カビの一種のため、胞子を飛ばす恐れ(もちろん無毒)があり、製造できる場所が限定される。麦芽エキス原料によって効率が大きく変動する。そのため厳選する必要性があった」と、原料としての、量産技術策定について教えてくれた。

 「皮膚免疫にも着目し、炎症をおこすと肌荒れになる。そこで、麹菌にも着目。皮膚の炎症をおさえると美肌になることがわかった」と、麹のイメージの良さや機能性表示食品制度、食品と化粧品の親和性および美容業界の大きさから、乳酸菌などで免疫の研究を行ってきた免疫素材で、美容を目指すことにしたという。「14-DHEをサプリメントの形態として0.2mg/日摂取するヒト試験を実施。その結果、皮膚水分量の維持・向上を14-DHE摂取で確認した。また、メラニン量の減少効果を14-DHE摂取で確認。肌の血色を改善する効果を確認した。そして、40代女性でより肌の調子が良くなる体感向上を確認した」と、経口摂取における肌への効果機能の検証の結果を報告した。

 「14-DHEは、キリンの得意とする発酵技術から発見。植物ステロールに非常に類似したステロール骨格をもつ物質であるが、美肌酵素アルギナーゼ 1を増加する効果のある物質としてファンケルが独自の研究を進めていた植物ステロールに類似していた」と、14-DHEはファンケルの研究材料として合致したのだと説明する。「2019年8月にキリンHDとファンケルの資本業務提携を発表。14-DHEの活用に、すぐに意気投合し、昨年1月、14-DHEによる美肌酵素『アルギナーゼ 1』の活性化を、共同で発見した」と、ファンケルとの共同研究に至った経緯を紹介。「『白麹ステロール』価値の展開可能性について、キリングループで連携し、外側だけでなく内側からの両方のアプローチで消費者にアンチエイジングを提供していきたい」と、化粧品の開発の流れに乗って、食品用途としての開発も進めていきたいと話していた。

 14-DHEを含む“白麹ステロール”の開発および、美肌酵素「アルギナーゼ 1」に着目した化粧品原料開発とその有効性について、ファンケル 総合研究所 ビューティサイエンス研究センターの榎本有希子主幹研究員が説明した。「ファンケルのアンチエイジング研究とは、多様化するストレスを“与えない”“修復”“防御”と肌本来がもつ美肌力(美白力、アンチエイジング力)を高めることを主眼にしている」と、肌本来の機能を高め、ゆらぎない素肌美を目指す研究を行っているという。「ファンケルで10年以上蓄積した角層バイオマーカー研究から、糖化に立ち向かうタンパク質美肌酵素『アルギナーゼ 1』を発見した」と、美肌酵素「アルギナーゼ 1」について解説。「肌で糖化物ができると、糖化を促進するスイッチが押されて、くすみ、シワ、シミなど年齢による悩みのサインが顕在化する」と、糖化による肌への影響を紹介する。「肌で糖化が進むとシミや黄ぐすみが目立つエイジング肌になってしまう」と力説する。「『アルギナーゼ 1』は糖化スイッチを増やさず、押させない。つまり、糖化によるダメージから肌を守ってくれる」と、「アルギナーゼ 1」は、糖化ダメージを防ぐとのこと。「キリンとファンケルとの共同研究から、14-DHEの『アルギナーゼ 1』への有効性を検討した結果、14-DHEは皮膚細胞の『アルギナーゼ 1』量を増加し、糖化スイッチを減少する効果を確認した」と、14-DHEの「アルギナーゼ 1」増加と糖化スイッチ抑制が明らかになったと語っていた。

 「14-DHEは、高生産白麹菌を使用している。化粧品で安定かつ好感触な抽出油を使用し、化粧品用に14-DHE抽出効率の良い製造法を開発した。その結果、『アルギナーゼ 1』に着目した独自機能を持つ化粧品原料“白麹ステロール”が開発された」と、14-DHEを含む化粧品原料の開発に成功したのだという。「50歳以上の女性に、白麹ステロール配合美容液(モデル処方)を4週間連用してもらった結果、『アルギナーゼ 1』が増加した」と、白麹ステロール塗布によって美肌効果が期待できるとのこと。

 「エイジングサインの黄ぐすみやハリも改善した」と、美肌効果に有用な化粧品原料であることが明らかになったと力説する。「今後は、ファンケルの美と健康における『“不”の解消』の応用研究力と、キリングループの中核となる強み『発酵&バイオテクノロジー』を掛け合わせた研究を推し進めていく」と、さらなる共同研究を行っていくと話していた。

ファンケル=https://www.fancl.co.jp/
キリンホールディングス=https://www.kirinholdings.com/jp/


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