睡眠・リラクゼーション

ボディクロック研究会、体内時計改善の重要性を啓発、子どものボディクロックの乱れによる学力や体力などへの影響を懸念

2014.12.22 19:52 更新

 ボディクロック研究会は、研究会の設立にあたり、12月19日に同研究会の設立の意義と、ボディクロックの改善による学力や体力向上の方法、ボディクロック改善のための寝具選びなどについて紹介した。

 「ボディクロック(体内時計)とは、人間の生体リズムを刻む時計を意味する。現代は生活の夜型化によって、ボディクロックが乱れやすい環境にある。ボディクロックの乱れは、睡眠のリズムに影響を与えるのみでなく、生活習慣病などの様々な問題を引き起こす。とくに近年、親の生活習慣の乱れによる子どものボディクロックの乱れと、学力や体力などへの影響が問題視されている」と、久留米大学 医学部 神経精神医学講座 主任教授の内村直尚先生が挨拶。「睡眠は心身の中枢である脳を育て、守り、修復する大切な役割を果たしている。適切な睡眠は子どもの成長過程において、最も重要な要素の一つともいえる」と、子どもの頃の睡眠がいかに大切であるかを解説。「そこで、ボディクロック改善の重要性を一般に啓発するべく、『ボディクロック研究会』を設立することとなった。同研究会では、専門家の深い見識に基づく情報発信を行い、睡眠教育を推進することで、子どもの睡眠を守り、日本の将来の成長につなげたい」と、同研究会の設立の意義と活動内容について発表した。

 「研究会のビジョンとして、不眠による経済損失3.5兆円の削減に貢献したいと考えている。つまり、不眠人口の減少、子どもの“体力損失”と“学力損失”の回復によって、将来の経済損失を回復させる」という。「まずは、ボディクロックが24時間周期に近いとされていることから、定期的にボディクロックを24時間周期のリズムに合わせることを意識してもらうため、毎月24日を『ボディクロックの日』として制定する」と、毎月24日にボディクロックを意識してもらうことからスタートさせたいと意気込んだ。

 では、そもそも睡眠のメカニズムはどのようになっているのだろうか。「疲れたから眠るしくみの“恒常性維持機構”と、夜だから眠る仕組みの“体内時計機構”の2種類が存在する」とのこと。「体内時計機構に深く関わっているメラトニンは、外が明るい昼間はほとんど分泌されず、夕方以降暗くなってくると分泌量が増えて、覚醒から睡眠へカラダの状態を切り替える」と、脳の物質であるメラトニンに言及。「光照度が高いと血中メラトニン分泌量の抑制率が高くなる」と、寝る前に光を受けるとメラトニンが抑制されるため、光を落とすようにしてほしいと話していた。「しかし、日本人の4人に1人は夜勤・交代勤務者でもある」と、夜働く人が全体の25%に達するだけに、夜に光を受けない生活の難しさを改めて示してくれた。

 


 「睡眠には、脳・身体の休養、疲労回復や、脳の過熱を防ぐための体温下降、エネルギーの保存、身体の成長(成長ホルモンの分泌)、免疫機能増加、記憶の固定がある。睡眠不足だと、昼間の眠気、倦怠感、頭重感、不安、イライラが起こり、身体疾患の誘因・憎悪、肥満の原因にもなる。また、うつ病や認知症の誘因・憎悪も懸念され、仕事上の能率や生産性の低下、交通事故の誘因も起こる」と、多くの悪影響を及ぼすのが睡眠不足であると訴える。「そこで、10年前から、明善高校で昼寝タイムを導入した。すると、大学入試センター試験の成績が向上し、保健室利用者の数も減った。クラブ活動の実績においても、県大会ベスト16以上の成績をおさめる回数が増えた」と、昼寝が高校生の学力および体力の向上に影響を及ぼすことが示唆された。

 


 「パフォーマンス向上のためにも、ボディクロックを改善する必要があると考えられる。その方法としては、勉強や仕事開始の3時間前に起床して、ボディクロックを朝型にすることが望まれる」と、朝方の生活が望ましいという。「起床時に朝日を浴びることでボディクロックをリセットし、朝食を毎日食べることでボディクロックをスタートさせることができる」と、朝日を浴びて朝食を食べることがよいという。「10分程度の昼寝を午後3時までに取ることで、ボディクロックを微調整してほしい」と、昼寝を有効に活用してほしいとのこと。「平日・休日の起床時間を一定にするとボディクロックのズレを防止できる」と、日本にいながら時差ボケにならないように、休日も規則正しい起床時間を心掛けてほしいと話していた。

 次に、山口大学 時間学研究所 教授の明石真先生がskypeによる講演を行った。「ヒト概日時計測定法というものを用いて、不眠の判定などができるようになる。この測定法は、数時間ごとに体毛を引き抜き、毛包細胞を保存する。その細胞から時計遺伝子の活動を測定する」と、測定方法の概要について紹介。「この測定遺伝子Period3の活動レベルと体のリズムの関係を見ると、現代型不眠の判定が可能になる」と、現代型不眠の診断基準としても活用できるのだと話していた。

 愛媛大学医学部附属病院 睡眠医療センター センター長の岡靖哲先生は、「日本の子どもの睡眠事情」について解説してくれた。「3歳以下の子どもの睡眠時間を他国と比較すると、日本の子どもは格段に睡眠時間が短いことが知られている」と、日本の子どもたちはあまり寝ていないのだと指摘する。「乳幼児期の睡眠不足は、小児行動性不眠症などの睡眠障害をもたらす」と、乳幼児の睡眠不足は危険であると警告する。「小児の睡眠改善法としては、抱っこでの再入眠は原則行わず、夜間に牛乳を飲ませるのをやめ、夕食を食べさせるようにする。冬季の睡眠中の室内環境を整えるため、暖房を弱めにかける」と、不眠改善の実例を紹介してくれた。

 


 「主な睡眠障害としては、不眠症(眠れない)、過眠症(眠気が強い)、概日リズム睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群(いびき)、レストレスレッグス症候群、睡眠関連運動障害がある」とのこと。「体内時計は約25時間のリズムで、光のない環境では24時間より長いサイクルとなる。朝の光を浴びて24時間にリセットされる。だが、塾や習い事で帰宅が遅い子どもは、夜遅くにコンビニなどで強い光を浴びる。ゲームやスマホの画面は明るく、刺激の強いゲームもある。夜間の光の刺激はメラトニン分泌を抑制し、睡眠リズムが遅れる原因になる」と、子どもやその保護者の睡眠教育が重要であると訴えていた。

 


 岡先生は、「睡眠障害が成長・発達に影響する。体内時計の乱れが、遅刻や不登校、集中力の低下や日中の眠気、慢性疲労の原因となっている場合もある」と指摘。「体内時計の乱れや睡眠不足が“学力損失”“体力損失”につながる可能性がある」と、睡眠は学力や体力に大きな影響を及ぼすのだという。「睡眠障害の治療、睡眠習慣を改善する試みが、こうした問題点を解消するために必要だ」と、睡眠障害がみられたら治療も視野に入れてほしいという。「自身の睡眠を記録する睡眠ワークブックによって、4割の生徒が体内時計の改善がみられた」と、睡眠ワークブックを活用して体内時計や睡眠習慣の改善を行ってほしいと述べていた。

 最後に、「親子の寝具選び」と題し、快眠セラピスト/睡眠環境プランナーの三橋美穂氏(スリーピース代表)が講演を行った。「寝返りは、睡眠中の血液やリンパ液の循環を促進する。また、寝床内の温湿度を調整する。筋肉のコリをほぐして疲れをとる。背骨のゆがみを整える。睡眠段階の切り替えをスムーズにしてくれる」と、寝返りの重要性を説明。「そのため、マットレスや敷布団を選ぶ際には、仰向けで腰・背中・踵を圧迫せず、横向きで肩を圧迫しないもの。さらに寝返りしやすく、夏涼しく、冬あたたかいものがよい」と話していた。「子どもには吸湿性のよい敷パッドを敷き、素材はウールを選んでほしい。汗を吸って、さらっとしている」と、ウールは繊維内部に水分を吸収してくれるのでよいのだと述べていた。

 「枕は、仰向け、横向き、どちらの姿勢でも楽にできて、寝返りがしやすいことが大切だ。枕の中央は仰向け用に低めで、両サイドは横向き用に高めに設計してある枕がよい」と、枕の選び方を教えてくれた。「ベストな枕は立っている姿勢をキープできる枕。本当にあっている枕は、体と一体感があるので、枕をしていることを意識しないくらい自然な感じでもある」と、自然な状態でいられる枕が最もよいのだと説明していた。「子どもの枕選びも大人と同じ。軽く押さえて1~3cmの高さで、体動が激しい子どもに合わせたワイド幅のものが好ましい。よい枕が見つからない場合は、バスタオルを四つ折り、三つ折りなどで代用してほしい」と、子どもにも正しい枕を選ぶように心掛けてほしいと話していた。

 久留米大学医学部 環境医学講座 助教の松本悠貴先生は、「若いうちは男性の方が、睡眠時間が遅くなりやすい。高齢になると逆に早く床に就いてしまうのは男性だ」と、男女の違いについて言及。「女性は、閉経後に睡眠が悪くなる傾向がある」と、女性はとくに注意が必要な時期があることも教えてくれた。

ボディクロック研究会(12月24日から)=http://nemgym.com/bodyclock/


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