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日本郵便、「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」Demo Dayを開催、ロボットを活用した荷物の取り降ろし・積み込みの自動化など取り組みの成果や今後の展望を発表

2019.02.06 19:06 更新

 日本郵便とサムライインキュベートは、昨年7月から進めている、日本郵便オープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」Demo Dayを、2月5日に開催した。昨年に続き第二回目となる今回は、応募の中から、2社を採択し、取り組みを開始以降、ロボットを活用した荷物の取り卸し・積み込みの自動化や量子コンピュータを活用した輸送ネットワークの最適化に向けて共創を進めてきた。そして、Demo Dayにおいて、取り組みの成果や今度の展望を発表した。当日は、採択企業2社と日本郵便のメンバーがプレゼンテーションを行った他、日本郵便がすでに共同で取り組みを進めている共創スタートアップ企業によるプレゼンテーションも行われた。

 「物流業界は、eコマースの拡大によって、物流量が増大し、人材不足など多くの課題がある。こうした状況に打ち勝っていくには、革新的で最新の技術を取り込んでいく必要があると考えた」と、日本郵便の横山邦男社長が挨拶。「時代を一変させる技術やアイデアは、自前主義では難しい」と、外部などから新しい発想を取り込むことで、難局を打破していく必要があると訴える。「当社は、全国に2万を超える郵便局を有し、全世界につながる物流ネットワークを構築してきた。このインフラをオープンプラットフォーム化して、世の中の英知を結集し、価値を引き上げることができると考えた」と、日本郵便が長い歴史の中で培ってきたインフラをオープン化することで、企業価値をワンステップ引き上げることができるのではないかと考えたという。「オープン化によって、スタートアップが持つ技術やパッションが当社に組み入れられ、化学反応を起こし、世の中をワクワクさせる共創が実現できると期待している」と、今回のプログラム開催の趣旨について説明する。「今回は、多種多様な企業が手を挙げてくれた」と、様々な技術やアイデアを持つスタートアップが名乗りを上げてくれたのだという。「オープンプラットフォームの物流インフラを通じて、消費者に喜んでもらうだけでなく、社会を豊かにしていくものに昇華できればと期待している」と、オープン化は、新たな価値創造につながると語っていた。

 次に、内閣府 科学技術・イノベーション担当 企画官の石井芳明氏が挨拶した。「内閣府では、政府の事業をイノベーションしていく取り組みを行っている。とくに、オープンイノベーションの推進を加速させていくことが大切であると感じている」と、オープン化がイノベーション推進のカギを握ると説明する。「オープンイノベーションについては、民間の成功事例が蓄積されていくことが重要と思われる」と、成功体験の積み重ねが、新たな成功を生み出すのだと指摘。「オープンイノベーションについてトップがしっかり認識し、現場が積極的に動く状況ができているかが大切となってくる」と、意思決定者と現場が、共通認識のもと取り組む必要があると訴える。「また、どの部分をオープンイノベーションで実行するかも重要だ。さらに、参加者がWin Winになることも必要となる。なおかつスピードをもって動き、評価はじっくり行うことも大切だ」と、オープン化の成功のポイント解説。「日本郵便のプログラムは、こうした要件を満たしていると感じている」とのこと。「ぜひ、このプログラムを継続し、拡大させていってほしい」と、オープンイノベーションの成功事例を蓄積していってほしいとまとめていた。

 日本郵便 事業開発推進室の地引功担当部長が、プログラムの概要について説明した。「郵便・物流のバリューチェーン全体をテクノロジーで変革するをテーマに、物流拠点におけるオペレーションの『自動化』『見える化』を行うべく、Rapyuta Roboticsを採択した。また、郵便局間における運送便のダイヤの『最適化』として、エー・スター・クォンタムを採択企業に選定した」と、採択企業について紹介。「まず、郵便・物流システムの活用による実証実験を推進し、出資検討、メンタリングを行う。また、外部メンターに協力してもらうだけでなく、社内メンターも配置することにした」と、内外双方から、多面的に評価する体制を構築したのだという。「プログラムのスケジュールについては、昨年7月5日に応募を開始し、8月19日に応募締め切り、10月16日に採択企業を決定し、今日2月5日にDemo Dayを開催するに至った」と、流れについて紹介。「プログラムのゴールは、事業化および本格導入となるが、Demo Dayでは、将来像を明確化し、第一歩の実行計画を示したい」と、Demo Dayの意義について言及。「これからの時代に応じた郵便・物流を提供し、社会をより豊かにしていきたい」と、同プログラムのビジョンについて語っていた。

 そして、共創企業によるプレゼンテーションが行われた。オプティマインドの松下健社長は、ラストワンマイルの配送ルートをAIで最適化するサービス「Logia」と日本郵便との取り組みについて紹介した。配送業務の効率化やドライバー不足の解決を目指すべく、現在も現場からフィードバックを吸収し、配送業務効率化を目指して、さらなるサービスの精度向上を図っていくという。

 Aquifi Bisiness DevelopmentのBin An氏と日本郵便の野邊卓也主任は、3Dビジョンセンサーによる荷物サイズの測定および、製品の識別などのソリューションについて説明した。

 荷物の取り扱い個数が増加する中、対象物を撮影することで縦横高さの合計サイズを瞬時に計測できるハンディタイプの機器について、ゆうパックのサイズ計測への活用可能性を検討していることを発表した。

 自動制御システム研究所の鷲谷聡之COOは、自ら考えて飛ぶ制御をコア技術とした、ドローンを活用した事業者向け無人化・IoTシステム構築の展開について紹介。日本郵便が福島県南相馬市、浪江町において行っている郵便局間におけるドローンでの荷物配送に機体および技術を提供。また、日本郵便とドローンを用いた顧客への配達に向けた実験および検討について発表した。

 Yperの内山智晴代表は、再配達率の削減を解決課題として、アプリ連動型の置き配バッグOKIPPAを開発。玄関前に手のひらサイズのバッグを吊り下げることで、再配達を削減するという。この再配達削減効果の検証のため、設置スペースが不要な新感覚の簡易宅配ボックス「置き配バッグOKIPPA」の実証実験を東京都杉並区1000世帯で実施した。その実験結果を発表した。

 採択企業では、Rapyuta RoboticsのGajan Mohanarajah CEOが複数ロボットの連携や開発を加速するプラットフォームの提供について紹介。

 今回、技術的に困難であったゆうパックの取扱工程の自動化を行い、多数・多種なロボット連携を可能とする独自技術を通じて、単一なロボットやメーカーとは異なるアプローチで、省力化・省人化を目指すべく、デモンストレーションを行いながら説明した。

 エー・スター・クォンタムの大浦清CMOは、量子コンピューティング技術を利用し、最適化ソリューションを提供するべく、トラックドライバー数が減少する中、量子コンピュータソフト開発技術を活かし、輸送ネットワークの最適化の実現について発表した。日本郵便の輸送ダイヤは、これまで経験値の積み重ねで運用されてきた。しかし、就労人口の減少にともない、これまでのノウハウだけでは超えられない課題が顕在化してくる。その課題を量子コンピューティング技術によって、解決へと導くすべを紹介した。

 各スタートアップのプレゼンテーションが終わった後、Rapyuta RoboticsのGajan Mohanarajah CEOと、エー・スター・クォンタムの大浦清CMO、日本郵便の三苫倫理郵便・物流業務統括部長によるトークセッションが行われた。なお、モデレーターはサムライインキュベートの成瀬功一執行役員が担当した。

 今回のプログラムでの課題について、成瀬執行役員が質問したところ、Mohanarajah CEOは、「時間との戦いだった」と、短い時間でこの日を迎えなければならなかったことだったという。大浦CMOは、「調査期間が長すぎて、本当にできるのかという空気が流れているような気がした」と、下準備に多大な時間を要するだけに、それを根気よく実践していくことに苦労したとのことだった。

 三苫部長は、「Yperとの共同事業を担当したのだが、参画者に対して、しっかりと実行させることが問題だと感じて取り組んだ」と、新しいことに対して保守的な意識を変えさせることが大変だったと語っていた。Mohanarajah CEOは、「当社では、ロボットアームを取り扱ったことがなかった。しかし、我々を信じて、日本郵便の担当者も親身になっていろいと教えてもらえたことが、今後のビジネスの財産になると感じた」と、日本郵便の前のめりな協力があったからこそ、デモンストレーションまで行うことができたと話していた。

 大浦CMOは、「昨年立ち上げたばかりで、実績はゼロにも関わらず、採択企業に選ばれたことに感謝しかない」と、これまでの実績ではなく、技術やアイデアを高く評価してくれたことに感謝していた。三苫部長は、「今回のプログラムを通じて、日常的にイノベーションを起こすような企業になっていかなければならないと感じた」と、革新的な技術やアイデアにアンテナを張り巡らせておくことの重要性を説いていた。

 この後、観客賞と最優秀賞が発表された。観客賞は、オプティマインドが受賞した。松下社長は、「今回のプログラムがなければ、自宅でシステムを開発しているような会社であったと思う。受賞できてよかった」と、コメントしていた。最優秀賞は、Rapyuta Roboticsが受賞した。Mohanarajah CEOは、「実績のない当社に声をかけてくれたことに感謝している。日本郵便のスケールを使って、今後も様々な実験を行っていきたい」と、受賞の喜びを語ってくれた。

 今回の総評について、サムライインキュベートの榊原健太郎代表は、「日本郵便には、収益性と公益性を維持するという社会的使命のもとビジネスを展開していかなければならない。こうした考えは、スタートアップにとっても学ぶべきものであると考える。日本の大企業はスピードが遅いというイメージだったが、日本郵便がそのイメージを塗り替えてくれた。世界を変えたい、世の中を豊かにしたいということを思えば、スピード感をもって達成できることが証明できた」と、まとめていた。

 最後に、日本郵便の諫山親副社長は、「郵便をテクノロジーで変革しようとする取り組みが紹介できた。多様なスタートアップの力を借りながら、時代の変化に対応した新しい価値を提供していきたいと思う」と、今後の日本郵便の取り組みを紹介した。

日本郵便=https://www.post.japanpost.jp/


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