医療最前線

食から認知機能について考える会が発足記者説明会を開催、日本認知症予防学会と共同で実施した「食と認知機能」に関する意識調査結果についても発表

2020.09.16 12:32 更新

 食から認知機能について考える会は9月14日、食と認知機能改善についての正しい理解増進を図るため、一般社団法人日本認知症予防学会と共同で実施した「食と認知機能」に関する意識調査の結果を発表した。これに合わせて、食から認知機能について考える会の発足記者説明会がオンラインで行われ、同会の発足経緯や認知機能改善につながる食品成分とエビデンスの重要性について説明した他、「食と認知機能」に関する共同調査の結果を解説した。

 「現在、認知症を有する高齢者の数は増加の一途をたどっている。最近の調査によると、認知症と軽度認知障害(MCI)を合わせた患者数は、すでに800万人を超えているというデータも出ている」と、国家公務員共済組合連合会虎の門病院顧問で、食から認知機能について考える会の大内尉義代表が挨拶。「認知症の原因となる重大な疾患としては、アルツハイマー病やび慢性レビー小体病などの神経変性疾患が挙げられる。認知症の治療では、総合的な医学的管理と原因疾患に応じた治療が行われるが、現時点でアルツハイマー病に対する根治薬の開発に成功した例は一つもない」と、アルツハイマー病の根治薬は未だに開発できていないと指摘する。

 「そうした中で、欧米の大規模疫学研究から、食事や運動、知的行動習慣、対人交流といった生活習慣が認知症の予防に関わっている可能性が明らかになってきた。特に食事の栄養調査で、緑黄色野菜や動物性食品、魚介類などに含まれるビタミンA、ビタミンB2、パントテン酸の摂取が不足すると、認知機能が低下することがわかった。実際に、アルツハイマー病に対する食事療法の効果を調べた研究では、治療群は、未治療群に比べて認知機能の低下を抑えることができていた」と、食生活が認知症に深く関与していることがわかってきたという。「こうした背景から、今まで以上に食や食生活に焦点をあて、生活習慣の改善による認知症予防法を普及させていく必要があると考えた。ここで重要になるのが食品成分に対する科学的エビデンスだが、現在は科学的エビデンスに乏しい不正確な情報も蔓延しており、一般国民に誤解を与えかねない状況にある。そこで今回、食や生活習慣から認知機能低下の抑制・予防につながる科学的エビデンスの最新情報を、一般国民に対してわかりやすく発信していくことを目的に、食から認知機能を考える会を発足した」と、食から認知機能を考える会の設立に至る背景と目的について説明した。

 続いて、順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学 教授の堀江重郎先生が、認知症の新たな予防策への期待を語った。「認知症の主な症状としては、認知機能障害や記憶障害に加え、失語・失行・失認、実行機能障害、精神症状・異常行動などが挙げられる。これらの症状は、発症から時間経過と共に進行していく。例えば、アルツハイマー病では、軽度の記憶障害から始まり、進行すると場所がわからなくなったり、徘徊などの問題行動を起こしたり、最終的には施設で寝たきりになってしまうケースもある」と、認知症の症状について解説。「世界保健機関(WHO)では、世界的に増加している認知症の予防のための新たなガイドラインを昨年5月14日に公表しており、その中で、特に効果的な予防策として、適度な身体活動、禁煙、適正飲酒やバランスの取れた栄養が重要だとしている。また、厚生労働省の認知症施策推進総合戦略でも、早期介入が進行を抑えることにつながるという考えのもと、認知症の防御因子として、運動や食生活、余暇活動、社会的参加、活発な精神活動などを挙げている。今後、日本においても、生活習慣を重点に置いた認知症予防策が広がっていくことに期待される」と、生活習慣の改善が認知症の予防にも効果的であることを広く知らしめていく必要があると訴えた。

 東京都健康長寿医療センターの鳥羽研二理事長は、認知機能改善につながる食品成分とエビデンスの重要性について説明した。「WHOのガイドラインでは、認知症の予防にはバランスの取れた栄養を摂取することが重要であるとしているが、それぞれの食品成分が認知症予防にどんな効果があるのかについてはまだ明確ではなく、エビデンスが足りていない状況となっている」と、認知症予防に効果がある食品成分を特定できるだけのエビデンスはまだ揃っていないのだという。「一つの可能性として、食生活による腸内細菌の影響が考えられている。最近の研究結果から、認知症患者の腸内には種類のわからない腸内細菌が多いのに対して、健常者ではバクテロイデスが多いことなどがわかってきた。また、食事で摂取した栄養成分が脳の神経細胞に直接働くことや、楽しく食べるという行動が認知機能の低下予防につながる可能性についても研究が進んでいる」と、食を取り巻く様々な要素が認知機能の改善に関与しているのでないかとの考えを示した。

 そして、日本認知症予防学会の浦上克哉理事長が、食から認知機能について考える会と共同で実施した「食と認知機能」に関する意識調査の結果について解説した。「今回の調査は、認知症予防に関する理解レベルの確認と認知症予防への関心の喚起を目的に実施したもの。30代、40代、50代、60代、70代のそれぞれ一般男女各103名、計1030名と日本認知症予防学会会員から医師102名、メディカルスタッフ278名の計380名を対象に意識調査を行った」と、調査概要を紹介。「調査の結果、食や食成分が認知機能改善に効果があると思うかという質問に対して、『思う』と答えた人は一般で54.6%、医師・メディカルスタッフで77.1%となり、医師・メディカルスタッフの方が効果があると答える割合が多かった。『どちらともいえない』と回答する人は一般で39.3%、医師・メディカルスタッフで21.6%となり、一般の人は食に対する懐疑的な意見が多いことがわかった」とのこと。「機能性表示食品等の食成分のエビデンス(科学的なデータ)は信頼できるかとの問いには、一般、医師・メディカルスタッフともに約7割が『どちらともいえない』と懐疑的に見ている回答が多い結果となった。信頼『できる』と回答したのは、一般、医師・メディカルスタッフともに約2割にとどまっていた」と、機能性表示食品等の食成分のエビデンスについては懐疑的な見方が大半を占めていたと説明した。

 「認知症(アルツハイマー含む)の理解度に関する質問では、一般の41.4%の人が認知症について『よく知っている』と答える一方で、医師・メディカルスタッフの調査では一般には『正しく理解されていない』と感じる人が82.4%を占め、医師・メディカルスタッフと一般との意識のギャップが浮き彫りとなった」と、一般の人が認識している認知症への理解度は、実は不十分である可能性があると指摘する。「自分自身が最もなりたくない病気を聞いたところ、一般では『認知症』が47.6%、『がん』が38.5%とほとんどの回答がこの2つの疾患に集中した。一方、医師・メディカルスタッフでは、『認知症』(35.0%)と『がん』(25.8%)の他に、『脳血管疾患』(18.9%)を挙げる回答者も多かった」と、一般と医師・メディカルスタッフで割合に差は出たが、自分が最もなりたくない病気は認知症であったと述べていた。

[「食と認知機能」に関する意識調査概要]
調査主体:日本認知症予防学会、食から認知機能について考える会
調査対象:
 日本認知症予防学会学会員 380名(医師:102名 メディカルスタッフ:278名)
 一般 30代、40代、50代、60代、70代以上の男女各103名ずつの1030名
調査方法:WEB調査
実施期間:
 一般調査 2020年3月5日~3月6日
 学会員調査 2020年3月18日~4月1日

食から認知機能について考える会=http://www.shoku-ninchi.org


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