医療最前線

「気づいて!涙液トラブル啓発委員会」が発足、涙の不具合で起こる目の不快症状のことを「涙液トラブル」と命名し広く啓発活動を

2020.08.18 19:33 更新

 現代社会では、PCやスマートフォンの普及なども背景に 目のトラブルが生じる環境に長時間さらされているにもかかわらず、目の健康状態を意識していない人が非常に多いといえる。そこで、東邦大学医療センター大森病院 眼科 堀裕一先生、順天堂大学医学部 附属順天堂医院 眼科 猪俣武範先生、ケイシン五反田アイクリニック 内野美樹先生、東京歯科大学市川総合病院 眼科 山口剛史先生をメンバーとする「気づいて!涙液トラブル啓発委員会」Supported by 参天製薬を8月17日に発足した。同委員会では、目の健康状態を意識していない人には「涙液層」に問題が発生しているケースが多く散見されるため、こうした目の健康に対する意識の低い人が自身の目のトラブルに気づき、具体的な対策をとってもらうためのきっかけづくりとして「目の疲れ、かすみ、不快感は、実は涙の不安定性や、涙液のトラブルが原因の可能性」があるという情報を発信していくという。合わせて、涙の不具合で起こる目の不快症状のことを「涙液トラブル」と命名し、より多くの人に興味を持ってもらえるよう啓発活動を行っていくとしている。

 同委員会の発足日である8月17日には、目を酷使することの多い現代社会や、さらにコロナ禍で増加傾向にあるアイケア意識の薄れ・目のトラブルに対し警鐘を鳴らすべく、オンラインによるカンファレンスを開催した。カンファレンスでは、「涙液トラブル」に関する説明を行った他、「コロナ禍における目の不調に関する実態調査結果」の発表も行った。

 「涙の量や成分が健康に保たれている状態を意識し、日常的に涙のケアが必要だと考えるきっかけづくりを行うべく、『気づいて!涙液トラブル啓発委員会』を発足した」と、東邦大学医療センター大森病院 眼科 堀裕一先生が挨拶。「そして、日常的な目のトラブルに気づいてもらうため、涙の不具合で起こる目の不快症状のことを“涙液トラブル”と命名した」と、目の疲れやかすみ、不快感などは涙の不安定性や涙液のトラブルが原因の可能性があるという。「当委員会は、公平な立場から、正しい知識やエビデンスを発信することで、より多くの人に自身の目の健康に興味を持ってもらえるように啓発活動を行っていく」と、同委員会の活動の主旨について発表した。

 次に、順天堂大学医学部 附属順天堂医院 眼科 猪俣武範先生が涙液トラブルについて説明した。「“涙液トラブル”とは、涙の不安定性が原因で起こる目の不快症状。“涙液トラブル”はドライアイのリスクファクターとされている」と、目の不快症状を感じる人や眼科でドライアイの診断を受けた患者も含まれるという。「涙液トラブルが重症化すると、角膜に傷ができたり、眼炎症、視力低下などが起こる」と、涙液トラブルを放置すると目の病気に罹患する可能性があると指摘する。「涙液トラブルを起こしやすい人は、乾燥やエアコン、花粉などの環境因子による影響を受けた人や、メイク、デジタル作業の増加、コンタクトレンズ、夜更かしなどの生活習慣に起因する人、加齢、薬、性別などの個人因子が関連する人に分けられる」と、様々な要因が関連して起こる症状なのだと力説する。「昨今、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけにデジタル作業はさらに増加傾向にあり、涙液トラブルも増加する可能性がある」と、オンラインによる仕事や授業などが増えている現状は、目にとってあまり良い環境ではないのだと述べていた。

 「また、スマホアプリを使ってドライアイ未診断者の特徴を分析した結果、多くの人がドライアイの症状があるのに、ドライアイの診断を受けず症状に苦しんでいることがわかった。特に、若年者かつ男性はドライアイ未診断のリスク因子となっている」と、涙液トラブルであっても放置してしまい、そのトラブルで苦しむ若年層や男性が多いのだと教えてくれた。「涙液トラブルの症状は様々であり、必ずしも“乾く”という自覚症状だけが涙液トラブルの自覚症状ではないので注意が必要」とのこと。「さらにこれらの自覚症状は単一ではなく、様々な症状を併発している」と、涙液トラブルの症状は多彩なのだと語っていた。「それだけに、涙液トラブルを放っておくと、目がゴロゴロするなどの症状が悪化。視機能の低下や生活の質の低下、労働生産性の低下などが起こる」と、私たちの生活の質を低下させてしまうのだと警告する。「コンタクトレンズの装用、デジタル作業の増加、花粉症、喫煙の累積による涙液トラブルの重症化に注意してほしい。また、ドライアイ症状の重症化は抑うつ症状と関連があることもわかっている」と、涙液トラブルからうつなどの他の疾患に罹患する可能性もあるのだと警鐘を鳴らしていた。

 涙液トラブルで起こる様々な障害について、東京歯科大学市川総合病院 眼科 山口剛史先生が解説した。「涙液トラブルによる目の障害としては、角膜の傷や充血などがある。これがひどくなっていくと、目がかすんだり、ものが見えにくくなるだけでなく、急に痛くなる痛覚過敏の症状も見られるようになる」と、涙液トラブルによる目の障害について説明。「涙にはビタミンなどの栄養やたんぱく質、酸素のほかに目を潤すムチンや脂質が含まれる。涙の成分の変化で涙液トラブルを引き起こしていると思われる」と、涙の成分が正常でなくなると涙液トラブルがみられるようになるのだと指摘する。「特に、パソコン作業が多いと、涙に影響が出ることがわかっている。研究の結果から、涙液の潤い成分ムチンはドライアイで減少することが明らかとなった」と、パソコン作業が長くなると、潤い成分のムチンが減って涙液トラブルになりやすくなると紹介した。「さらに、涙液トラブルで労働生産性が低下することもわかっている」と、研究では涙液トラブルによって、一人あたりの労働生産性が年間65万円も低下したことが明らかになったと教えてくれた。

 ケイシン五反田アイクリニック 内野美樹先生は、コロナ禍における目の不調に関する実態調査の結果について報告した。「調査は20~60歳の男女1000名を対象に6月23日~25日の3日間、インターネットで行った。その結果、新型コロナウイルス感染症における緊急事態宣言発令前後のリモートワークの状況は、7.3%から22.7%と約3倍の増加を示した。緊急事態宣言後もリモートワークを行っている人の作業時間が8時間以上となる割合が高い」と、リモートワークによって、労働時間が長くなってしまっているという。「そして、リモートワーク実施者の25%以上が目の不調の悪化を自覚していた」と、目に何らかのトラブルを抱えている人が4人に1人いたことがわかった。「ドライアイの認識の割合は、83%と非常に高いが、ドライアイは慢性の疾患であるにも関わらず、正しい認識は3割にとどまった」とのこと。

 では、リモート環境下で涙液トラブルから目を守るにはどうしたらよいのだろうか。「瞬きをして、目が乾かないようにしてほしい」という。「さらにエアコンの風に注意してほしい。特に、目に風が当たらないようにしてほしい」と、エアコンの風が目を乾燥させてしまうのだと述べていた。「そして、ディスプレイの位置を下げるようにしてほしい。下げることで瞼が下がり、目を乾燥から守ってくれる」と、目線が高いと目が見開いてしまい、乾燥しやすくなるため、視線が下がるようにディスプレイの角度を調整してほしいと語っていた。

 東邦大学医療センター大森病院 眼科 堀裕一先生は、涙液層別治療について説明した。「涙液トラブルの解消法としては、生活環境および生活習慣の見直しの他、点眼薬等を使った治療が挙げられる」と、生活に注意することの他、点眼薬による処方も効果的なのだと紹介する。「ドライアイの治療は2010年まで、水分の補充による涙の水分量を増やすということが行われてきた。しかし、2010年以降は涙液層別治療という、涙の足りない成分を補い、水分、ムチン、油層、目の表面の細胞を対象とした治療が一般的となった」と、この10年でアプローチ方法が大きく変わったのだという。「そして最も涙液量を増やす治療として、涙点プラグ治療も行われるようになった」と、重症の涙液減少型ドライアイへの治療法として涙点プラグで直接涙液を補充する治療も確立されているのだと教えてくれた。「涙液トラブルに対する治療法は進化しているものの、涙液トラブルにならないためには、日常的に涙をケアしてあげることが必要となる。涙液トラブルかもしれないと思ったら、病院できちんと診断を受けてほしい」と、涙液トラブルは放置せず眼科を受診するようにしてほしいと述べていた。

気づいて!涙液トラブル啓発委員会=https://ruieki-trouble.com/


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