医療最前線

サノフィ、「血友病治療」をテーマにしたメディアラウンドテーブルを開催、血液凝固因子製剤の定期補充療法で患者のQOLは大きく向上、世界的には医療格差が深刻な課題に

2019.06.04 16:38 更新

 サノフィのサノフィジェンザイムビジネスユニット希少血液疾患フランチャイズは、「血友病治療の現在とこれから」をテーマにしたメディアラウンドテーブルを5月31日に開催した。今回のラウンドテーブルでは、独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 感染症内科 医長の西田恭治先生を招き、血友病治療の歴史や血液凝固因子製剤が果たしてきた役割、および今後の展望について講演してもらった。

 「サノフィでは、今年5月に血友病を中心とした事業を展開するバイオベラティブ・ジャパンを統合し、スペシャルティケア事業部門であるサノフィジェンザイムビジネスユニットのひとつとして希少血液疾患フランチャイズを発足した」と、サノフィ サノフィジェンザイムビジネスユニット希少血液疾患フランチャイズの笠本浩ヘッドが挨拶。「希少血液疾患の重点領域としては、血友病、後天性血栓性血小板減少性紫斑病(aTTP)、寒冷凝集素症、異常ヘモグロビン症のβサラセミア、鎌状赤血球症などにフォーカスし、患者の生活を大幅に改善できるよう取り組んでいる」と、希少血液疾患領域における世界のリーダーになるべく尽力していると述べた。

 「その中でも血友病については、他社にはない治療薬のポートフォリオを持っており、5月29日には新製品として『血友病A治療薬イロクテイト静注用4000』を発売した。従来の3000IUを超える4000IUの剤型を発売することで、患者や家族の輸注における利便性の向上が期待できる」と、血友病治療薬の新製品について紹介。「また、Sobiと協働して、血友病に対する血液凝固因子製剤を最大10億国際単位、発展途上国に寄付する計画を実行している」と、血友病患者の出血イベントの完全抑制に向けてグローバルで取り組みを進めていると話していた。

 続いて、大阪医療センター 感染症内科 医長の西田恭治先生が「血友病治療の過去から未来へ -世界的視野から-」と題した講演を行った。「血友病は、男子5000人から1万人に1人の割合で出生するといわれている、X連鎖性劣性遺伝の遺伝形式による先天性の血液凝固障害で、血が止まりにくくなる病気である。紀元2世紀末にはその存在が知られており、近年では英国のヴィクトリア女王が保因者で、政略結婚によってドイツ、ロシア、スペインの各王室に血友病がもたらされたことから、『王家の病』とも呼ばれている」と、血友病とはどのような病気なのかを紹介。「先天的に血液凝固因子が不足していることが出血性の素因であり、第VIII因子が不足していると血友病A、第IX因子が不足していると血友病Bとなる。出血症状の特徴は、関節内や筋肉内の出血で関節障害を残す」と、血友病の症状についても解説してくれた。

 「血友病の治療は、1940年から50年代は、全血または新鮮凍結血漿を輸血する方法が行われていたが、1970年代には血漿由来濃縮製剤によって不足している血液凝固因子を補充する方法が主流となった。しかし、1980年代に、血漿由来濃縮製剤の中にHIVやHCVが混入し、病患者がエイズに感染する薬害エイズ問題が発生し、治療が停滞してしまう」と、血友病患者を襲った悲劇的な事件について言及。「その後、1990年代に血液を原料としない遺伝子組換え製剤が製造され、エイズ感染のリスクはなくなった。現在では、長時間作用の遺伝子組換え製剤を定期的に補充する定期補充療法が浸透したことで、血友病患者のQOLは大幅に向上している」と、薬害エイズ問題を乗り越え、血友病の治療環境は大きな進歩を遂げてきたのだと力を込める。

 「一方で、世界の医療格差は甚だしく、こうした治療を受けられるのは高所得の先進国が中心となっている。第VIII因子製剤の使用量は欧州と北米で6割以上を占め、低所得国では多くの血友病患者が診断さえされていないのが実状だ」と、世界が抱える血友病治療の課題を指摘する。「そこで、世界血友病連盟(WFH)では、製剤使用量が生存に必要な最低量に達していない国を支援する『WHF人道支援プログラム』を展開。2015年からは、サノフィとSobiによる10憶IU/10年間の継続寄付がスタートし、支援プログラムが拡大したことで、手術・急性出血の治療・定期補充などの実施が大きく増加している」と、発展途上国に凝固因子製剤を寄付する支援の輪をさらに広げていく必要があると訴えた。

 最後に、血友病治療の今後の展望について西田先生は、「現在主流となっている凝固因子補充療法とは異なる新しい治療法として、非補充療法の導入が進みつつある。その一つが、バイスペシフィック抗体で、第VIII因子の機能を代替することにより、血液凝固反応を促進させる。もう一つが、Rebalance療法で、抗凝固因子の力を低下させることで血液凝固反応のバランスを平衡化する。この他に、凝固因子の遺伝子を導入する遺伝子治療の治験が、今年から日本でも開始される予定となっている。また、従来の凝固因子製剤についても、さらなる開発が行われており、血友病治療の選択肢はますます広がっていくことが期待されている」と、治療法の進歩と多様化によって血友病患者の出血イベントをゼロにできる可能性があるとの考えを示した。

サノフィ=https://www.sanofi.co.jp/


このページの先頭へ